ヒトの性差とジェンダー論
この講義は登録不要無料視聴できます!
▶ 無料視聴する
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
ミミズ、アンコウ、植物…こんなに違う性決定の多様性
ヒトの性差とジェンダー論(2)卵子と精子と性決定
長谷川眞理子(総合研究大学院大学名誉教授/日本芸術文化振興会理事長)
多細胞生物の配偶子は卵子と精子の2種類に分かれている。卵子は大きく栄養があるが、動きにくい。精子は小さいが、よく動く。この両者が合体して次世代の多様性が保全されるのだが、卵子と精子の分断によって、その性には雌雄同体、性転換、矮雄、雌雄異体などさまざまな形が存在する。その具体的な違いについて具体例を挙げながら解説する。(2024年5月18日開催:早稲田大学Life Redesign College〈LRC〉講座より、全8話中第2話)
※司会者:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:8分19秒
収録日:2024年5月18日
追加日:2024年8月26日
カテゴリー:
≪全文≫

●なぜ多細胞生物の配偶子は卵子と精子になったか


―― 今のお話でいうと、もともと一つの受精卵がどんどん分裂をして、多細胞の生物になっていく。その中のいろいろな器官、胃や肺なども生殖器も元は同じ細胞からできてくるということですね。このうち、生殖器の分かれ方はどのようになりますか。

長谷川 まずは水の中にいた生物が配偶子を外に出し、それが合体して次の世代になろうとすると、配偶子は、2つのタイプになってしまうのですね。大きくて動かない卵(卵子)と、小さくてたくさんありよく動く精子の2種類しかつくれなかった、あるいは残らなかったのです。

 中途半端な組み合わせよりも、一番起こりやすく、一番長生きできるのが、なるべく早く相手を見つけて合体することのできる、よく動く精子です。ただ、よく動こうとすると、軽くないといけないし、軽いと栄養を持てないから死にやすい。でも、小さいからたくさんつくれる。卵(卵子)のほうはたくさん栄養を持っているので長生きできる。存続はできるのだけれど、重いからあまり動けない。そうすると、そのどちらかに分かれる分断が起こります。小さい精子にするか、大きな卵子にするかに特化するしかなかったわけです。

 だから、(スライドを見ながら)こういうことですね。卵は大きくて栄養があり、精子は何もないのですが、中に入っている遺伝子に親の半分があるという点は同じで、栄養があるかないかの違いだけです。この二つ、長生きするのとよく走り回るのは、1配偶子の中では両立しないので、分業する、分断するということになってしまった。現在では、多細胞生物には卵(卵子)と精子という配偶子しかありません。

―― 今日のテーマの一つである「性差」というところでいうと、ずっと保持される卵子は栄養があるが、それほど動きがない。精子はたくさんできて、非常に運動能力は高いけれど、すぐ死んでしまう。そのあたりが性差に影響しているところはあるのでしょうか。

長谷川 ええ。性差がどのようにできるかは、場合によっていろいろあります。大事なのは、1個体の中で精子をつくる機能つまり雄機能と、卵(卵子)をつくる雌機能をどう持つかについてはいろいろなことがあり得るということです。

 いずれにしろ、混ぜ返す方法として「性」ということ...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「科学と技術」でまず見るべき講義シリーズ
本当によくわかる「量子コンピュータ入門」(1)量子コンピュータとは何か
「量子コンピュータ」はどういうもので、何に使えるのか
武田俊太郎
断熱から考える一年中快適で健康な住環境(1)日本の住宅の実態と問題点
なぜ日本は夏暑く、冬寒いのか…断熱から考える住宅の問題
前真之
ChatGPT~AIと人間の未来(1)ChatGPTは何ができて、何ができないか
ChatGPTは考えてない?…「AIの回答」の本質とは
西垣通
ヒトの性差とジェンダー論(1)「性」とは何か
MLBのスーパースターも一代限り…生物学から迫る性の実態
長谷川眞理子
進化生物学から見た「宗教の起源」(1)宗教の起源とトランス状態
私たちにはなぜ宗教が必要だったのか…脳の働きから考える
長谷川眞理子
性はなぜあるのか~進化生物学から見たLGBT(1)有性生殖と無性生殖
なぜ雄と雌の2つの性別があるのか…「性」の謎とLGBT
長谷川眞理子

人気の講義ランキングTOP10
平和の追求~哲学者たちの構想(1)強力な世界政府?ホッブズの思想
平和の実現を哲学的に追求する…どんな平和でもいいのか?
川出良枝
葛飾北斎と応為~その生涯と作品(2)『富嶽三十六景』神奈川沖浪裏への道
『富嶽三十六景』神奈川沖浪裏のすごさ…波へのこだわり
堀口茉純
熟睡できる環境・習慣とは(3)睡眠にいい環境とお風呂の入り方
布団に入る何分前がいい?入眠しやすいお風呂の入り方
西野精治
中国共産党と人権問題(1)中国共産党の思惑と歴史的背景
深刻化する中国の人権問題…中国共産党の思惑と人権の本質
橋爪大三郎
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
「重要思考」で考え、伝え、聴き、議論する(1)「重要思考」のエッセンス
重要思考とは?「一瞬で大切なことを伝える技術」を学ぶ
三谷宏治
プロジェクトマネジメントの基本(1)国際標準とプロジェクトの定義
プロジェクトマネジメントとは?国際標準から考える特性
大塚有希子
定年後の人生を設計する(1)定年後の不安と「黄金の15年」
不安な定年後を人生の「黄金の15年」に変えるポイント
楠木新
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二
内側から見たアメリカと日本(6)日本企業の敗因は二つのオウンゴール
日本企業が世界のビジネスに乗り遅れた要因はオウンゴール
島田晴雄