ヒトの性差とジェンダー論
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死にやすい?おしゃべり?…生物学的にみた身体と脳の性差
ヒトの性差とジェンダー論(6)身体と脳の性差と生業変化による影響
長谷川眞理子(総合研究大学院大学名誉教授)
女性よりも男性のほうが大きい、毛深い、死にやすい――この3点はヒトだけでなく哺乳類全般にいえる身体的性差である。また、脳の性差として、空間・三次元認知は男性のほうが得意で、発話は女性のほうが優れているともいわれるが、これらも文化などの影響かどうか難しいところもある。狩猟採集から農耕への変化など、生業形態の変化によって男女の格差にも色々な影響が出てきたというが、それはどのようなことなのか。身体と脳の性差、その特徴とともに解説する。(2024年5月18日開催:早稲田大学Life Redesign College〈LRC〉講座より、全8話中第6話)
※司会者:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:14分08秒
収録日:2024年5月18日
追加日:2024年9月23日
カテゴリー:
≪全文≫

●生物学的にみた普遍的な身体の性差とは?


―― (性差の構造が)まことに難しい中で、あえていうとすると、身体的な性差なり、いわゆる生物学的な性差というのは、どの範囲までは間違いなくあるのでしょうか。ここは多分、生物学的な性差だというのは、どの範囲になりますか。

長谷川 そうですね。男性のほうが女性よりも平均値で体が大きいというのは、たぶん文化ではなくて、哺乳類のほとんどがそうです。いつも男性のほうが大きいのです。

 昔、1980年頃のフェミニストの誰かが「女の人のほうが体が小さいのは、どの文化でも女子にはまずいものしか食べさせないからだ」と言ったので、私たちはギョエーッと驚きました。「だったらシカもネズミも、みんなまずいものしか食べさせてもらっていないのですかね。そんなことないでしょう」という話をしたことがあります。

 本当にそんなことはなくて、哺乳類はだいたい雄-雄コンペティションが強いので、雄の体が大きいほうが有利だということが基本にあるので、大きいのです。ただ、人間の場合は、その性差はあまり大きくないのです。先ほどのアザラシやアシカなど、雄は雌の7倍も10倍も大きいのです。人間は1.1から1.2倍ぐらいなので、それほど差がない。それは、タヌキと同じように男の人も育児に関わらなければいけないし、みんなで共同作業で同じようなことをしないと生きていけない。だから、そんなに男だけが大きいということはない。でも、この差は多分あります。

 それから、男性のほうがヒゲやいろいろなところで毛深いのです。女性のほうがつるっとした滑らかな肌をしている。これも文化がつくっているのではなく、どの人種の、どの文化も、どの歴史でもそうです。ただし、男性が毛深いのをよしとするか嫌がるかは、文化によります。

 アラブではみんながヒゲを生やすでしょう。それで、紀元前何世紀かのローマの文書に、「昨今の若い男はヒゲを剃って、甘っちょろくて嫌だ」と書いてある。だから、中東ではずっと、たくさんヒゲを生やすのが男っぽいという文化があった。それが、ローマ・ギリシャのあたりで、剃ったほうがいいということになったらしい。それを、(歳)上のおじさんたちが「あれは女っぽくて嫌だね、最近の子は」と(いっている話が)書いてあるわけです。ですから、それをどう見るかは文化です...

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