ヒトの性差とジェンダー論
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
父親の育児…世話をするタヌキ、いないほうがいいアザラシ
ヒトの性差とジェンダー論(3)動物たちの性差と配偶行動
長谷川眞理子(総合研究大学院大学名誉教授/日本芸術文化振興会理事長)
雄同士の競争が激しいアシカでは、勝ち残った雄は大勢の雌を取り込んで生殖するが、子が産まれる頃には姿を消す。一方、グッピーや鳥のように、雄が雌に自身の美しさなどをアピールし、選んでもらおうとする例も多い。また、ヒトに近い類人猿の場合、その性行動は逆にヒトとはかけ離れている。つがいを重視するペアボンドを持つのはヒトの特徴といえるが、いったいどのような違いがあるのか。動物たちそれぞれの性差と配偶行動について解説する。(2024年5月18日開催:早稲田大学Life Redesign College〈LRC〉講座より、全8話中第3話)
※司会者:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:11分12秒
収録日:2024年5月18日
追加日:2024年9月2日
カテゴリー:
≪全文≫

●雄同士の競争で雌を囲い込む――アシカの場合


―― (前回、多細胞生物の個体の性についての)お話がありました。ここから必然的に雄と雌というのが、雌雄異体の場合には生まれてくるということになります。その場合、どのようにしてお互いがお互いを選んでいくかというところです。ここは、どういうことになりますでしょうか。

長谷川 例えば、この写真はアシカという鰭脚類です。雄が非常に大きくて、雌が小さいでしょう。これは雄同士の競争が激しくて、競争つまりけんかで勝ち残った雄が、雌をたくさん囲い込むことができるという種類であるため、体の大きい雄が勝ち残るわけです。雌は雌と雌という、そういう闘争が少ないので、小さいままでいいのです。

 これらのエネルギー効率を全部計算すると、たいていの哺乳類は、雌の大きさが一番エネルギー効率がよくて、雄は無駄に大きいようです。でも、無駄に大きい理由は、競争しないと雌を取れない。競争して、勝って、たくさん雌を取ったほうが絶対残るというのがあるので、自分の体のエネルギー効率は度外視して、大きくなったほうが有利だったわけです。

 アシカのようなタイプの哺乳類は、勝ち残った雄が雌を囲い込むので、雌の好みというか、意思というものは全く通じません。(ただ)雌が嫌がることがあります。雌が「嫌だ」といっていくら逃げても、大きな雄が「行くな」とばかりに首の後ろに噛み付いてくるので、雌は自分の好みを発揮できません。

 たいてい雄が勝って、独り勝ちしているのが、哺乳類のほとんどの種類です。けれど、こういう大きい雄が雄-雄競争で勝ち残って(雌を)取るということになると、雌側の意思は反映されない。(しかし)雌としても、勝ち残った雄と一緒になるほうが一番楽ですよね。でも、勝ち残れなかった若くて小さめの雄が沖合でピョコンピョコンとやっていると、雌はそちらのほうに行きたい、行きたいというそぶりを見せるときがあります。勝ち残った雄は噛み付いて、行かせないようにするのです。ということで、好みというものはあまりありません。


●雌の選り好み――グッピーや七面鳥の場合


長谷川 ところが、グッピーのような種類になると、全然別のやり方をします。雄は一生懸命、自分がどんなにきれいか、どんなに元気かをアピール...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「科学と技術」でまず見るべき講義シリーズ
本当によくわかる「量子コンピュータ入門」(1)量子コンピュータとは何か
「量子コンピュータ」はどういうもので、何に使えるのか
武田俊太郎
進化生物学から見た「宗教の起源」(1)宗教の起源とトランス状態
私たちにはなぜ宗教が必要だったのか…脳の働きから考える
長谷川眞理子
断熱から考える一年中快適で健康な住環境(1)日本の住宅の実態と問題点
なぜ日本は夏暑く、冬寒いのか…断熱から考える住宅の問題
前真之
培養肉研究の現在地と未来図(1)フェイクミート市場とリアルミート研究
食肉3.0時代に突入、「培養肉」研究の今に迫る
竹内昌治
水から考える「持続可能」な未来(1)気候変動の現在地
最悪10メートル以上海面上昇…将来に禍根残す温暖化の影響
沖大幹
「宇宙の創生」の仕組みと宇宙物理学の歴史(1)宇宙の階層構造
「宇宙の階層構造」誕生の謎に迫るのが宇宙物理学のテーマ
岡朋治

人気の講義ランキングTOP10
「宇宙の創生」の仕組みと宇宙物理学の歴史(1)宇宙の階層構造
「宇宙の階層構造」誕生の謎に迫るのが宇宙物理学のテーマ
岡朋治
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(3)認知バイアスとの正しい向き合い方
知ってるつもり、過大評価…バイアス解決の鍵は「謙虚さ」
今井むつみ
歴史の探り方、活かし方(2)図書館「レファレンス」の活用
図書館の便利な活用法…全国の図書館からの「お取り寄せ」
中村彰彦
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(2)量子論と空海密教の本質
脳内の量子的効果――ペンローズ=ハメロフ仮説とは
鎌田東二
内側から見たアメリカと日本(2)アメリカの大転換とトランプの誤解
偉大だったアメリカを全否定…世界が驚いたトランプの言動
島田晴雄
デカルトの感情論に学ぶ(2)感情をコントロールするには
恐怖をなくす方法と感情のコントロール…デカルトの考え方
津崎良典
編集部ラジオ2025(27)なぜ何回説明しても伝わらない?
なぜ伝わらない?理解の壁の正体を今井むつみ先生に学ぶ
テンミニッツ・アカデミー編集部
東洋の叡智に学ぶ経営の真髄(5)徳は孤ならず
敬天愛人…一人ひとりを大切にしながら宇宙を相手に生きる
田口佳史
徳と仏教の人生論(1)経営者の条件と50年間悩み続けた命題
宇宙の理法――松下幸之助からの命題が50年後に解けた理由
田口佳史
ChatGPT~AIと人間の未来(1)ChatGPTは何ができて、何ができないか
ChatGPTは考えてない?…「AIの回答」の本質とは
西垣通