ヒトの性差とジェンダー論
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ヒトの性差とジェンダー論(3)動物たちの性差と配偶行動
長谷川眞理子(総合研究大学院大学名誉教授)
雄同士の競争が激しいアシカでは、勝ち残った雄は大勢の雌を取り込んで生殖するが、子が産まれる頃には姿を消す。一方、グッピーや鳥のように、雄が雌に自身の美しさなどをアピールし、選んでもらおうとする例も多い。また、ヒトに近い類人猿の場合、その性行動は逆にヒトとはかけ離れている。つがいを重視するペアボンドを持つのはヒトの特徴といえるが、いったいどのような違いがあるのか。動物たちそれぞれの性差と配偶行動について解説する。(2024年5月18日開催:早稲田大学Life Redesign College〈LRC〉講座より、全8話中第3話)
※司会者:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:11分12秒
収録日:2024年5月18日
追加日:2024年9月2日
カテゴリー:
≪全文≫

●雄同士の競争で雌を囲い込む――アシカの場合


―― (前回、多細胞生物の個体の性についての)お話がありました。ここから必然的に雄と雌というのが、雌雄異体の場合には生まれてくるということになります。その場合、どのようにしてお互いがお互いを選んでいくかというところです。ここは、どういうことになりますでしょうか。

長谷川 例えば、この写真はアシカという鰭脚類です。雄が非常に大きくて、雌が小さいでしょう。これは雄同士の競争が激しくて、競争つまりけんかで勝ち残った雄が、雌をたくさん囲い込むことができるという種類であるため、体の大きい雄が勝ち残るわけです。雌は雌と雌という、そういう闘争が少ないので、小さいままでいいのです。

 これらのエネルギー効率を全部計算すると、たいていの哺乳類は、雌の大きさが一番エネルギー効率がよくて、雄は無駄に大きいようです。でも、無駄に大きい理由は、競争しないと雌を取れない。競争して、勝って、たくさん雌を取ったほうが絶対残るというのがあるので、自分の体のエネルギー効率は度外視して、大きくなったほうが有利だったわけです。

 アシカのようなタイプの哺乳類は、勝ち残った雄が雌を囲い込むので、雌の好みというか、意思というものは全く通じません。(ただ)雌が嫌がることがあります。雌が「嫌だ」といっていくら逃げても、大きな雄が「行くな」とばかりに首の後ろに噛み付いてくるので、雌は自分の好みを発揮できません。

 たいてい雄が勝って、独り勝ちしているのが、哺乳類のほとんどの種類です。けれど、こういう大きい雄が雄-雄競争で勝ち残って(雌を)取るということになると、雌側の意思は反映されない。(しかし)雌としても、勝ち残った雄と一緒になるほうが一番楽ですよね。でも、勝ち残れなかった若くて小さめの雄が沖合でピョコンピョコンとやっていると、雌はそちらのほうに行きたい、行きたいというそぶりを見せるときがあります。勝ち残った雄は噛み付いて、行かせないようにするのです。ということで、好みというものはあまりありません。


●雌の選り好み――グッピーや七面鳥の場合


長谷川 ところが、グッピーのような種類になると、全然別のやり方をします。雄は一生懸命、自分がどんなにきれいか、どんなに元気かをアピール...

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