●なぜ思春期を継続的に研究するのか
長谷川でございます。今回は「今どきの若者たちのからだ、心、社会」というお話です。私たちは10年前に10歳だった子どもたちを追跡する「コホート研究」を続けてきて、ちょうど10年たちました。そこで、その研究結果を踏まえつつ、世界中で行われている思春期に関する研究のいくつかの結果をお話ししたいと思います。
まず、「なぜ思春期に注目したか」ということです。昔にもお話ししたかと思いますが、動物が生まれてから死ぬまでの一生はどういうふうに進み、各段階でどのようにエネルギーが注がれるか、時間はどう配分されているかといったことの全体を「生活史戦略(ライフヒストリー戦略)」と呼びます。
そのパラメーターとしては、「からだが小さい・大きい」「寿命が短い・長い」「成長速度が速い・遅い」「1回に生まれる子どもの数が多い・少ない」など、いろいろあります。また、これらはみんな関連しています。
『ゾウの時間 ネズミの時間』(本川達夫著、中公新書)という本によって有名になりましたが、「からだの大きい動物では時間がゆっくり進んで、成長速度は遅く、寿命が長い」というように、みんな関連している。(逆にからだが)小さい場合、ネズミ(などの時間)は速く回るというようなことは、皆さんご存じかと思います。
そういうことが密接に関連している中、哺乳類である私たちヒトの生活史戦略においては、思春期がどうなっているのかがとても重要なのです。
●離乳と性成熟は哺乳類の成長における画期
哺乳類というのは必ず赤ちゃんが生まれて、ミルクを飲む生物です。出産前に胎児期があって、赤ん坊が生まれて授乳する。これぞ哺乳類の生活史の特徴です。そして、離乳した後は性成熟をして、今度は自分が子どもを作るおとなになる。こういう胎児期、赤ん坊期、子ども期、おとな期が哺乳類の生活史戦略であり成長のプログラムだというのは、その通りなのです。
例えば、これは先日15歳になる直前で亡くなった私の犬で、キクマルといいます。生後3カ月のときはこんなだった(左)、2歳のときはこんな(中)で、8歳ではこうなった(右)という写真です。
犬にも赤...