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からだと脳にとっての睡眠の意味と必要性

睡眠:体、脳、こころの接点(1)睡眠とは?

尾崎紀夫
名古屋大学大学院医学系研究科精神医学・親と子どもの心療学分野教授/医学博士
情報・テキスト
毎日、眠っているのに、この睡眠に関して不明な点が多い。なぜ人間は眠らないと生きていけないのか。名古屋大学大学院医学系研究科教授の尾崎紀夫氏が、体、脳、こころの接点としての睡眠について、最新の研究成果を解説する。(全8話中第1回)
時間:07:38
収録日:2018/08/24
追加日:2019/01/14
ジャンル:
≪全文≫

●フロイトは睡眠の「生理・生化学的な分脈」に注目していた?


 本日は睡眠について、特にからだや脳、こころの接点としての睡眠のお話をしたいと思います。名古屋大学の尾崎紀夫です。

 内容としては、まず睡眠とは何か、睡眠の意味や調節機構、どれぐらいの時間が必要なのか、というお話から始めます(シリーズ第1話と第2話)。次に不十分な睡眠の場合、どのような病気のリスクがあるのか。糖尿病や心臓病、認知機能についてお話をいたします(シリーズ第3話)。続いて、睡眠を整えるための生活習慣。飲酒はどうなのだろうか。あるいは生活リズムとの関係はどうなのかについてです(シリーズ第4話)。その上で、認知症やうつ病と睡眠との問題についてお話しします(シリーズ第5話と第6話)。最後に少し話題が変わり、睡眠とともに私どもにとってとても大事な食についてお話しします(シリーズ第7話)。最近、日本の若い女性には過度に痩せ志向が進み、それが「神経性やせ症」といった生命の危険にも繋がり得る病気とも関係していることに触れます(シリーズ第7、8話)。以上の順番でお話をしたいと思っています。

 本題に入る前に、若干、自己紹介をしておきます。私は現在、医学に携わっていますが、もともとは文系の人間で、フロイトに強い関心を持っていました。

 フロイトは、「無意識がどのように働いているかを知る上で、夢は重要な手掛かりを与えてくれる。夢は無意識の活動を熟知する王道である」と言っています。私にとっては、小説など人文科学的な面からのフロイトへの関心が、夢や無意識に対する関心に繋がり、それがこころや精神疾患でした。またフロイトは当時、こんなことも言っています。

「精神現象に関して生理・生化学的な分脈で(すなわち脳科学によって)語ることが可能になれば、現時点では十分に記述し得ない事柄も、明確にすることが可能であろう」

 彼がこのような発言をしていたことは、案外知られていないことです。こんなことを踏まえながら、今日のお話を進めたいと思っています。


●睡眠が進化してきたのには何らかの意味がある


 まずは、睡眠がどのように進化してきたのかということからお話をします。

 実は下等な動物には「活動と休息」しかなく、睡眠はあまりはっきりしていません。それが、われわれ人間にいたると、レム睡眠とノンレム睡眠(深い睡眠)に分かれてきます。

 このような進化を遂げている睡眠ですが、もともとそれは生き物にとって極めて無防備な、生命の維持には不向きな状態です。どちらかというと、ない方がいいのではと思われるのに、どんどん進化している。それには、何らかの意味があるのではないかと考えられます。なぜ睡眠は必要なのか。その意味は何かというところからお話をしたいと思います。


●夜を迎えた脳は昼間の記憶をきちんと整理する


 身体にとって睡眠はとても重要です。睡眠期間中にだけ成長ホルモンが出て、われわれの成長を促します。また、睡眠は血液中の成分である血球をつくる働きを担い、全身の細胞において新陳代謝を促進します。

 睡眠は、体にとって重要であると同時に、脳にとって極めて重要だということが、最近ではよく分かってきました。昼間のわれわれの記憶をきちんと定着し、整理をします。

 われわれの脳は、昼のあいだに神経細胞のつながりをつくります。しかし、つながりはぐちゃぐちゃとした、極めて未整理な段階で夜を迎えます。夜を迎えた脳は、その昼間の記憶をきちんと整理していきます。

 パソコンの後ろのケーブルは、私のところは左写真(スライド内)のような未整備のままですが、年に一回ぐらいは右写真(スライド内)のように整理をするわけです。いってみれば、これが睡眠であるといえるでしょう。


●28時間眠らないと注意力や判断力、運転技能は低下する


 これをもう少し脳科学的に申し上げましょう。われわれの脳は、「海馬」というところで記憶をし、「皮質」というところで考えます。海馬と皮質の間の神経細胞は、昼間の覚醒中は非常に混雑したような状態になります。夜間睡眠中に海馬がいわば皮質のトレーナーとなって、ゆっくりと記憶を定着し、また整理をします。そのような作業をして、次の日を迎えます。これは、深い睡眠(ノンレム睡眠)である「徐波睡眠」のときに行われます。

 もう一つの「REM(レム)睡眠」は、まだ少し分からないところもありますが、この間は比較的脳が働くので、そのことによって、神経細胞の伝達がむしろ増すと考えられています。

 したがって、...
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