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うつ病のものの捉え方が不眠を招く

睡眠:体、脳、こころの接点(6)うつ病と睡眠障害

尾崎紀夫
名古屋大学大学院医学系研究科精神医学・親と子どもの心療学分野教授/医学博士
情報・テキスト
認知症とともに、うつ病も増え続けている。とりわけ高齢者では「老年期うつ病」と認知症に伴う「うつ症状」の見分けが困難だ。シリーズ第6話では、うつ病と睡眠障害について、また、うつ病と間違えられることの多い睡眠時無呼吸について解説いただく。(全8話中第6話)
時間:11:16
収録日:2018/08/24
追加日:2019/01/23
ジャンル:
≪全文≫

●眠ってもすっきりしないうつ病の睡眠特性


 続いて、うつ病についてです。これも睡眠障害が必発で起こる病気です。その背景には、否定的なものの捉え方や、鑑別上非常に重要な睡眠中の無呼吸があります。それらについて、お話をしたいと思います。

 うつ病の方の睡眠ポリグラフィは、これまで何度か報告があります。一般の方に比べると、レム期の睡眠が非常に多い。「夢を見てばかりいた」とよく言われるのは、こういったことにも反映されています。それから、途中でよく目が覚めてしまう。睡眠の維持ができない。深い睡眠も少ない。脳を休めて記憶を定着させる働きが少なくなっている。したがって、朝起きたときにすっきりせずに、昼間のパフォーマンスが落ちてしまいます。

 睡眠障害はうつ病の始まりの頃からよく起こり、治療していてもなかなかよくならない症状です。そういう意味で、前回申し上げました精密医療上でも、睡眠を捉えることが極めて重要だろうとわれわれは考えています。


●うつ病のものの捉え方が不眠を招くメカニズム


 ここで一点、気を付けておかなければいけないことがあります。実際にうつ病の方の睡眠は良くないのですが、ご本人の主観とこういった機器で確認した睡眠との間に乖離があることです。

 例えば、主観と睡眠検査で寝付きの時間を比較した古典的な研究が、1962年に遠藤四郎先生により報告されています。うつ病の方は、「寝つくまでの時間が、私はなかなか眠れない」と言われますし、夜間の睡眠全体の時間も実際より短く訴える傾向があります。もちろん良くないのは確かですが、実際以上に寝付きが悪く夜の睡眠も悪いと捉えがちだということがあります。

 そういう意味では、その人たちの睡眠を、簡易機器でしっかり捉えることが、経過を見る上で極めて大事になります。

 睡眠に限らず、うつ病のポイントはいろいろなことを否定的に捉えるところです。例えば、業務の負荷を過大に捉えてしまい、あれもこれも大変だと感じるので、心の中のストレスがどんどん増えるばかりです。

 一方で、上司等のサポートについては、普段なら存在すると感じているのを過小評価してしまい、誰も助けてくれないと思って一人で抱え込むような否定的な捉え方もあります。

 このように否定的な捉え方が起こると、先々のことには当然不安が募る一方となり、「眠れない」システムが駆動し始めます。


●うつ病の「悪循環」と、その解消法


 われわれの研究結果でも分かっているのが、図のようなうつ病の悪循環です。ここには、いろいろな出来事が重なってきます。

 たまたまサポートがやや不足していて長時間労働になり、睡眠が取れずに脳機能の回復が不充分になることもあります。そうすると、脳機能の変化によって、ものの見方が否定的になり、取り越し苦労や悲観主義が起こります。そうなると、サポートは過小評価し、負荷を過大評価してしまい、それにより不安が起こるので、またまた眠れなくなります。

 このような悪循環が起きているのがうつ病だと、われわれのこれまでのさまざまな研究の成果から分かってきました。患者さんやご家族にもこのように説明をし、どう治療するかについては、この悪循環を一つずつ切っていくようにしています。

 脳機能が変化していることについては、体ではなく脳や心の休息を取るということで、これが実はなかなか難しいところです。周囲の方については後で申し上げますが、睡眠をいかに調節するかが問題ですから、「睡眠と生活習慣」でお話ししたようなことを申し上げます。

 また、患者さんは一人で抱え込む傾向があることをご本人に分かっていただき、周囲にも相談をしておく。あるいは周囲からお声を掛けていただいて、重なっている出来事の優先順位や重み付けをしていただく。

 時には脳に働く薬も使いますが、薬以外に、「ものの見方の整理をする認知行動療法をしてみましょう」というような形で、うつ病の治療についても、悪循環をもとに説明をさせていただいています。


●うつ病と間違われやすい「睡眠時無呼吸症候群」


 さて、うつ病とよく間違われているのが、「睡眠時無呼吸症候群」です。中年男性に多いのですが、女性の方もいらっしゃいます。

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