睡眠:体、脳、こころの接点
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
うつ病が不眠を招くメカニズム…無呼吸症候群との違いは?
睡眠:体、脳、こころの接点(6)うつ病と睡眠障害
尾崎紀夫(名古屋大学大学院医学系研究科特任教授/医学博士)
認知症とともに、うつ病も増え続けている。とりわけ高齢者では「老年期うつ病」と認知症に伴う「うつ症状」の見分けが困難だ。シリーズ第6話では、うつ病と睡眠障害について、また、うつ病と間違えられることの多い睡眠時無呼吸について解説いただく。(全8話中第6話)
時間:11分16秒
収録日:2018年8月24日
追加日:2019年1月23日
カテゴリー:
≪全文≫

●眠ってもすっきりしないうつ病の睡眠特性


 続いて、うつ病についてです。これも睡眠障害が必発で起こる病気です。その背景には、否定的なものの捉え方や、鑑別上非常に重要な睡眠中の無呼吸があります。それらについて、お話をしたいと思います。

 うつ病の方の睡眠ポリグラフィは、これまで何度か報告があります。一般の方に比べると、レム期の睡眠が非常に多い。「夢を見てばかりいた」とよく言われるのは、こういったことにも反映されています。それから、途中でよく目が覚めてしまう。睡眠の維持ができない。深い睡眠も少ない。脳を休めて記憶を定着させる働きが少なくなっている。したがって、朝起きたときにすっきりせずに、昼間のパフォーマンスが落ちてしまいます。

 睡眠障害はうつ病の始まりの頃からよく起こり、治療していてもなかなかよくならない症状です。そういう意味で、前回申し上げました精密医療上でも、睡眠を捉えることが極めて重要だろうとわれわれは考えています。


●うつ病のものの捉え方が不眠を招くメカニズム


 ここで一点、気を付けておかなければいけないことがあります。実際にうつ病の方の睡眠は良くないのですが、ご本人の主観とこういった機器で確認した睡眠との間に乖離があることです。

 例えば、主観と睡眠検査で寝付きの時間を比較した古典的な研究が、1962年に遠藤四郎先生により報告されています。うつ病の方は、「寝つくまでの時間が、私はなかなか眠れない」と言われますし、夜間の睡眠全体の時間も実際より短く訴える傾向があります。もちろん良くないのは確かですが、実際以上に寝付きが悪く夜の睡眠も悪いと捉えがちだということがあります。

 そういう意味では、その人たちの睡眠を、簡易機器でしっかり捉えることが、経過を見る上で極めて大事になります。

 睡眠に限らず、うつ病のポイントはいろいろなことを否定的に捉えるところです。例えば、業務の負荷を過大に捉えてしまい、あれもこれも大変だと感じるので、心の中のストレスがどんどん増えるばかりです。

 一方で、上司等のサポートについては、普段なら存在すると感じているのを過小評価してしまい、誰も助けて...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「健康と医療」でまず見るべき講義シリーズ
「男性更年期」とは何か
うつやほてり…男性ホルモン・テストステロン減少のせい?
堀江重郎
熟睡できる環境・習慣とは(1)熟睡のための条件と認知行動療法
熟睡のために――自分にあった「理想的睡眠」の見つけ方
西野精治
男性医学とテストステロン(1)リーダーと男性ホルモン
チャレンジ精神、神経ニューロン、認知症にも影響!?
堀江重郎
オートファジー入門~細胞内のリサイクル~(1)細胞と細胞内の入れ替え
ノーベル賞受賞「オートファジー」とは?その仕組みに迫る
水島昇
最強の臓器「皮膚」のふしぎと最新医療(1)かゆみのサイエンス
「かゆみ」の正体を科学する!最新研究で迫る皮膚の仕組み
椛島健治
最新の腰痛医療(1)導入された二つの医療と慢性腰痛
高齢者だけじゃない! 若年層にも腰痛が増えている
菊地臣一

人気の講義ランキングTOP10
戦争とディール~米露外交とロシア・ウクライナ戦争の行方
「武器商人」となったアメリカ…ディール至上主義は失敗!?
東秀敏
平和の追求~哲学者たちの構想(5)カント『永遠平和のために』
カント『永遠平和のために』…国連やEUの起源とされる理由
川出良枝
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(1)史実としての豊臣兄弟と秀長の役割
豊臣兄弟の謎…明らかになった秀吉政権での秀長の役割
黒田基樹
逆境に対峙する哲学(1)日常性が「破れ」て思考が始まる
逆境に対峙する哲学カフェ…西洋哲学×東洋哲学で問う矛盾
津崎良典
生成AI「Round 2」への向き合い方(1)生成AI導入の現在地
生成AIの利活用に格差…世界の導入事情と日本の現状
渡辺宣彦
熟睡できる環境・習慣とは(4)起きているときを充実させるために
夜まとめて寝なくてもいい!?「分割睡眠」という方法とは
西野精治
渡部昇一の「わが体験的キリスト教論」(1)古き良きキリスト教社会
古き良きヨーロッパのキリスト教社会が克明にわかる名著
渡部玄一
健診結果から考える健康管理・新5カ条(1)血管をより長く守ることが重要な時代
健康診断の結果が悪い人が絶対にやってはいけないこと
野口緑
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
インテリジェンス・ヒストリー入門(1)情報収集と行動
日本の外交には「インテリジェンス」が足りない
中西輝政