●世界遺産になった和食の七つの特徴
―― 皆さま、こんにちは。
小泉 こんにちは。
―― 「テンミニッツTV」編集長の川上です。本日は小泉武夫先生に「和食の深い秘密~なぜ身体に良いのか」というテーマでお話をいただきます。小泉先生、どうぞよろしくお願いいたします。
小泉 よろしく、どうぞ、お願いします。
皆さん、こんにちは。小泉武夫です。今から8年ぐらい前(2013年)、和食がユネスコの無形文化遺産に登録されました。私はちょうどそのときの農林水産大臣(現・外務大臣)の林芳正さんと個人的な知り合いだったことから、和食をユネスコの世界遺産に登録するための委員になってくれと言われ、引き受けました。私は「食文化論」を専攻の一つにしていますので、いろいろな意味で和食のことも少しぐらいは知っていました。しかし、今度は世界遺産です。本当に和食の真髄まで世界に披露しようということで、引き受けたわけです。
和食は、われわれ日本人が有史以前から食べてきた食べ物ということになりますが、ひと言でいうと、最初は非常に質素な食べ物として始まりました。
和食の特徴を少し申し上げますと、まず日本は非常に水のいい国です。だから、ご飯を水で炊く。これは非常に重要なことで、だからご飯はおいしいのです。いい水だから、おいしい。今ひとつ、味噌汁もほとんど水ですので、水のいい国の食事ということになります。
さらに、心と身体にとてもいい、質素な食事だということがある。この講義を通して、なぜそうなのかということをお話ししていきます。
それから、なんといっても和食はおいしいです。昔から「五味」が、「甘い、塩からい、苦い、辛い、酸っぱい」を指す言葉とされていましたが、和食から世界に六つ目の味を提案して、認められることになりました。何かというと、「旨み」です。旨みの源は出汁(だし)によるもので、鰹節・昆布・椎茸などで出汁をとり、おいしく食べようということです。
今ひとつ、今日のテーマを陰で支える大きな存在として、極めて多種類の発酵食品があります。発酵食品とは何かについては、後でまたお話しします。
最後にもう一つ。和食というのは、なんとなく侘び・寂びのあるような食事であり、お茶の茶道などをはじめとしていろいろな「道(どう)」が感じられる。侘び・寂びが食...