●江戸の中山道に潜んでいたとんでもないスタミナ食
小泉 今日はみなさんに、とてもいい話をします。今までもいい話でしたが、ここから、また、いい話になる。それは何かというと、私が2016年に出した『江戸の健康食』(河出書房新社)という本のなかで、書いたことです。この話には、みんなが驚きました。
江戸から京に出るためには、南回りと北回り、二つのコースがあります。南回りのコースは、日本橋から出て、品川、横浜、箱根を通る東海道五十三次。これが南回りのコースです。北回りというのもあります。日本橋から板橋の成増に出て、真っすぐ北に上って上州に出る。そこから西に行くと信州に入り、浅間山の下を通って軽井沢あたりを通り、塩尻というところから南に下りていく。
そうすると、木曽福島に出ますが、ここからが大変なアップダウンです。妻籠、中津川、恵那、落合宿のあたりがとくにすごいです。東海道五十三次といいますが、これは北回りの中山道です。
私の調べたところ、この中山道には和食でありながらとんでもないスタミナ食があったのです。しかも発酵食品をからめてです。
女子栄養大学という素晴らしい大学が『食品成分表』という正確な分析に基づく立派な本を出しています。そこを見ていると、和牛のタンパク質は17~18パーセント、大豆のタンパク質は16~17パーセントと、ほぼ同じなのです。
私が小さいとき、祖母は私を「ター坊」と呼んでいました。そして、「ター坊や、豆腐を食え、豆腐を。そうすると、肉、食っていると同じだぞ。豆腐は畑の牛肉なんだから。だから豆腐をつくる大豆は牛肉だよ」と言われていたのですが、その通りだということが分かります。
●味噌+豆腐+納豆+油揚げのパワー
小泉 さて、驚いたことに、中山道に行ったところ、すごいものを見つけたのです。中山道の旅籠(料理屋)には、旅人に食べさせるスタミナ食が共通してありました。何かというと、これです。味噌汁に豆腐を加えて、豆腐の味噌汁をつくり、納豆を叩いて挽き割りしたのを入れて、その上に油揚げを千切りして加えるわけです。
いいですか? 豆腐の味噌汁に納豆と油揚げを加えるわけです。そこで、これを見てください。大豆は肉と考えればいい。味噌は大豆でつくるのだから、味噌は肉でしょ...