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肉と野菜を一緒に食べるわけ―免疫メカニズムと和食の関係性

和食の深い秘密~なぜ身体に良いのか(2)和食は免疫食事

小泉武夫
農学博士/食文化評論者/東京農業大学名誉教授
情報・テキスト
世界に「免疫食事としての和食」を提唱している小泉武夫氏。免疫を高めるのに必要なのは、繊維、発酵食品、菌体の摂取だということで、米・スタンフォード大学の研究者も同様の研究を進めている。今回は免疫のメカニズム、およびそれがウイルスだけでなくがんをもブロックする理由を見ていく。(全7話中第2話:2023年1月24日開催ウェビナー〈和食の深い秘密~なぜ身体に良いのか〉より)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:11:59
収録日:2023/01/24
追加日:2023/04/15
タグ:
≪全文≫

●免疫を高める食べ物とは?


小泉 ここからは、少し「免疫」ということを皆さんにお話ししようと思います。私は「免疫食事学」を世界に発信しています。これは、実は和食です。和食は免疫食事(学)であるということを、ここに書いてあります。「和食は免疫食事である」と、私は世界に提唱してきたのです。

 和食を食べることによって免疫が高くなる。では、免疫とはいったい何なのか。今からお話しします。

 アメリカのスタンフォード大学スクール・オブ・メディスン微生物学・免疫学部准教授にジャスティン・ソネンバーグ准教授と奥さまのエリカ・ソネンバーグ氏という非常に有名な研究者がいます。この二人が『腸科学』という本を出しています。日本では(2018年に)早川書房から翻訳出版されましたので、これを読みますと、まさしく「免疫を高めるのに重要な食べ物の一つは繊維である」つまり野菜であると書かれています。さらに今ひとつ(重要なもの)は、後でいう「発酵食」だということを言っている。そこで、自分の言ってきたことは間違いないと思い、『腸科学』日本版が出版されるときに、帯の推薦文を書きました。お読みになると、非常に面白いと思います。

 そういうことで、免疫を高めるのは繊維と発酵食品。発酵食品には菌体が入っていますから、菌体の摂取ですね。この三つが非常に重要なカギを握る。これが、和食は免疫食事だということにつながります。


●外部からの侵入者を許さない「免疫」ネットワーク


小泉 では、免疫ということを、ちょっとお話ししていきましょう。

 今、健康な皆さんの体内では正常細胞が動いています。これが突然変異を起こすと、癌細胞になっていきます。たとえばタバコを吸いすぎると肺がんになってしまうというのは、突然変異で起こることです。このように正常細胞が突然変異を起こすのは怖いことです。

 ところが、正常細胞が自然変異を起こすと免疫細胞になります。免疫というのはどういうことかというと、「免」はのがれる、「疫」は病気ですから、「病気から逃れる」細胞ということになります。だから、体の中に免疫細胞をたくさん蓄積しておけば病気から逃れられるということになります。

 そうすると、スタンフォード大学の研究者も私も言っているように、和食は繊維が非常に多いため、免疫が非常に高くなるということです。

 先日、非常に面白いことに、中外製薬が非常に分かりやすい免疫の解説をしているのを発見したので、メモを取りました。

 悪者のウイルスが体の中に入ってくると(たとえば今話題のコロナ。ほかにもはしかウイルスなどのウイルスはいっぱいあります)、まずマクロファージ細胞が入ってきたウイルスを目がけて、現場に駆けつけていく。マクロファージは、そのウイルスの情報を集めると、その情報を免疫「司令官」であるT細胞に伝える。この速度が非常に速いのです。

 情報を受け取った司令官のT細胞は、「殺し屋」のキラー細胞にウイルスに感染した細胞を探し出して破壊するように命令する。次に司令官のT細胞は、免疫細胞であるB細胞に抗体をつくるよう指令を出す。指令を受けたB細胞は、そのウイルスに対抗するように大量の抗体をつくりだす。この抗体が、ウイルスに感染した細胞を破壊するのです。

 以上が、中外製薬による分かりやすい解説です。これが免疫をつくるメカニズムですから、免疫細胞を増やすことは非常にいいことなのです。


●免疫細胞が多いと、がん化もブロックできる


小泉 一つ、免疫細胞のことでお話ししておきますと、赤ちゃんから小学生、中学生、高校生ぐらいまでは、あまり大病をしません。それはなぜかというと、免疫細胞を持っているからです。免疫細胞の一つは新生細胞で、新しく生まれる細胞には免疫力がたくさんあります。

 だから、母親から母乳をもらうと、そこに入っている免疫細胞による免疫と、自分が少しずつ成長するにしたがって起こる新生細胞による免疫細胞もできてくるということです。自分の体内でつくれる免疫細胞もあるので、私は食べ物で免疫細胞をつくろうということを言っているわけです。

 免疫細胞をつくることで得られる利点は、ウイルスだけの話ではありません。免疫は、がん細胞に対しても非常に効果的に働きます。

 正常細胞が突然変異してがん細胞になるときに、本人には分かりません。正常に生きている人の胃に突然がんができても、症状が出るまで本人には分かりません。ところが、突然変異でがん細胞が起こったということは、正常細胞から見れば違う細胞(異質細胞)なの...
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