驚くべき実験がある。餌に含まれる物質Xの有無によって、放射能被曝したネズミの細胞蘇生率が大きく違うというのだ。免疫力を高める物質Xの正体は、味噌。日本人なら誰もがなじんでいる食材だ。味噌に免疫力を高める効果をもたらすのは、発酵である。発酵食品の驚くべきパワーは無限の可能性を秘めている。(全7話中第3話:2023年1月24日開催ウェビナー〈和食の深い秘密~なぜ身体に良いのか〉より)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
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●マウスの被曝実験が教える「味噌」の力
小泉 さて、私は、2020年まで広島大学医学部の客員教授をしていて、渡邊敦光(ひろみつ)さんという先生と非常に親しくなりました。この先生は、広島大学原爆放射線医学研究所の免疫学の教授ですから、免疫を知るために放射能を使っています。何をしたかというと、非常に面白い実験です。
実験動物のネズミをAグループとBグループに分けて、それで、毎日、同じ餌を両方のネズミに食わせながら、ずうっと生きてきたときに、突然、放射線を被曝させるわけです。あんまり掛けると死んじゃいますから、弱~く、0.04ぐらいかな? 少~し、弱~く掛けるわけ、死ぬ手前ぐらいまで。すると、死なないから、まだ生きているわけですね。そのときにこの2つのグループのAグループのほうには餌と味噌を加えてやるんです。片方は味噌を加えない。塩を加える。そして放射線を掛ける前のネズミには、片方には味噌を食べさせておいて、片方には味噌を食べさせないということで、飼い続けます。これに放射線を照射してやるとどうなるかという実験です。これは、非常にはっきりしたデータが出てきます。
グラフの黒いほうは、味噌を食べさせなかったマウスで、すぐ死んでしまいます。ところが、もう片方は味噌を食べさせたマウスで、そうでないほうが20日ぐらいしか生きていないのに比べ、もっと長いあいだ生きるわけです。
赤が味噌を食べさせたほうです。こんなに違うということが分かったので、渡邊先生は次に細胞学的な検討を行いました。その結果、こういうことが分かりました。
左側は、味噌を食べさせなかったマウスの小腸の細胞の断面図です。右側は味噌を食べさせたほうです。ここに「みそエサを食べていなかった、食べていた」と書いてあります。
放射線を掛けられると、細胞は壊疽して死ぬわけですが、まだ少しは生きていて、免疫力があるから、三つだけは戻ってきた。ところが、味噌を食べさせたほうは全部戻ってきた。これほど味噌の免疫力は高いのだ、ということです。味噌は発酵食品ですからね。
そういうふうにして、今、発酵食品というのは非常に免疫力が高いということが分かってきたわけです。
●「生命体」として体内に入るのは発酵食品だけ
小泉 発酵食品はなぜ免疫力が...