●免疫には「自然免疫」と「獲得免疫」がある
ところで、先ほど免疫について言及しましたが、免疫とは大雑把に言って2通りあります。「自然免疫」と「獲得免疫」です。自然免疫とは、われわれの体に自ずから備わっているもので、外から外敵がやってくると、原始的な方法でこれを排除しようとします。マクロファージ、好中球、ナチュラルキラー細胞といった免疫細胞が、自然免疫を担っています。
そのあとよく聞くのが、獲得免疫です。これは、少し時間が経ってから、体の中にウイルス・細菌等が入った場合に、Tセル、Bセルという細胞が応答します。ウイルスがわれわれの体の細胞の中に入ってくると、細胞が「自分の細胞にはウイルスが入っているよ」ということを、旗柱のように示します。それをTセルという細胞が認識し、その細胞をアタックして、感染している細胞をやっつけていきます。あるいは、その中のタンパク質をBセルという細胞が認識して、抗体を作っていきます。ワクチンによる獲得免疫は、これに該当します。
●BCGは自然免疫を高める
先ほどお話ししたBCGは、実は、現在の色々な方法の中で最も自然免疫を高める方法だということが知られています。BCGをしていないのであれば、BCG接種を行うということも、コロナウイルスだけでなくウイルス全般に対して有効であると考えられます。
日本においても非常に興味深い臨床研究があります。東北大学の研究なのですが、まず、高齢者の老健施設にいる老人の方たちを対象に、ツベルクリン反応実験を行いました。この反応がなかった方(陰性だった方)のうち半分の方にBCGを打ち、もう半分の方に何もしないという実験を行い、その後、肺炎が起こるかどうかを調べました。
その結果、BCGを打ったグループは約3倍ほど、肺炎の発生率が少ないということが分かりました。そのことから、ツベクリン反応が少ない方、BCGを接種したことがないような高齢者の方は、全般的に免疫を高めるという意味では、BCGが注目されると思います。
●加齢に伴って免疫機能はどう弱っていくのか?
今お話ししたように、ウイルスに対する免疫は、非常に複雑です。大雑把に分けると、獲得性免疫は、抗体を作る体液性免疫と、直接T細胞が細胞をやっつける細胞性免疫の2つがあります。実は、ウイルスに対する免疫と、癌に対する免疫は非常に似ています。逆に言うと、癌に対する免疫療法の理解は、ウイルスの免疫療法から来たと言っても過言ではありません。私は毎日、腎臓癌・膀胱癌・前立腺癌など、さまざまな癌患者さんの治療にあたっていますが、そうした免疫療法の知見は、もともとはウイルスから得られたものが中心です。
皆さんもご存知だと思いますが、加齢に伴って免疫機能は弱ってきます。問題はどう弱っていくかです。このスライドでは、体の様々な部位で、免疫力が落ちてくる際に関係する細胞や、免疫力が落ちてくることで炎症が増えてくる状況が表されています。この中で特に注目していただきたいのは肺です。肺においては、免疫力が低下しがちだということが指摘されています。
●朝鮮人参はインターフェロンを増加させ、免疫力を上げる
これは、簡単なシェーマ(図式)で、細胞とウイルスの戦いを示しています。簡単に言えば、ウイルスが細胞の中に入ってくると、われわれの体の細胞はインターフェロンという物質を出して、ウイルスを排除する方向に持っていきます。あるいは、ウイルスがそこに感染することを免疫細胞が認識します。認識する場合、免疫細胞を増やすためにもインターフェロンが使われ、実際にウイルスが入った細胞を殺し、除去します。これによってわれわれは、風邪やインフルエンザに罹った場合でも、そこから治っていくわけです。そのため、インターフェロンを出すことが、非常に大事になってきます。
まず1つ、今すぐできることですが、医学的に証明された研究として、朝鮮人参がインターフェロンを増やすことが示されています。こちらの写真は、韓国で出している朝鮮人参です。これがインターフェロンを増やすということで、免疫力をアップするということを示しています。
また、漢方薬での「人参」は、われわれが食べている野菜としての人参ではなくて朝鮮人参ですが、たとえば、十全大補湯(じゅうぜんたいほとう)という漢方薬があります。これは体力低下や疲労倦怠、寝汗、冷え、貧血などに対して効能効果があります。今は主に癌の患者さん、抗癌化学療法を受けているような方、あるいは大きな手術...