●過去にもコロナウイルスによるパンデミックが起こっていた
皆さんこんにちは。順天堂大学の堀江重郎です。今日は「ウィズ・コロナ、ポスト・コロナの医学展望」ということでお話しします。私自身は泌尿器科医で、専門家ではないですが、以前国立感染症研究所の主任研究官をしていたこともあって、今感じていることについて、少しお話させていただければと思います。どうぞよろしくお願いします。
最初のスライドですが、これは2020年のダイアモンドオンラインに出ていた記事です。「波乱を暗示する『庚子』の2020年、新型肺炎が世界を覆う可能性」と見出しがありますが、2020年1月の段階で、今現在を想定できた方はどれぐらいいるでしょうか。そういう意味で、この記事は今思うと本当にびっくりするといいますか、その着眼が素晴らしかったと思います。
さて、この新型コロナウイルスについてもいろいろなことが分かってきました。過去にも恐らくコロナウイルスのパンデミックがあったことも分かってきました。これはいわゆる「ロシアかぜ」といって、1889~1895年にかけて、世界で100万人の方が亡くなったと言われている、大流行したパンデミックのウイルス感染症です。
このロシアかぜは、現在のウズベキスタンである旧ロシア帝国から広まって、わずか4か月という、当時としては非常に速い速度で、北半球全域に拡大したことが知られています。興味深いことに、当時ヨーロッパの致死率は、最初の感染のときがだいたい4パーセントで、2回目のときも3パーセントに近く、これは最初のコロナのときの、いわゆる武漢株がだいたい2~3パーセントだったので、それと一致しています。
興味深いのは、この流行の中で、やはり人類が部分的に免疫を獲得して、今に至るまで、成人の9割はこのロシアかぜのOC43といわれるコロナウイルスに対する抗体を持っていると言われています。
●いかにして免疫力をキープするか
そして、今お話しした、いわゆる抗体あるいは免疫は、今はワクチンを打つことによって、B細胞が獲得免疫の抗体をつくります。しかし、後ほど少しお話しますが、免疫においては、抗体だけではなくて、T細胞が担う細胞性免疫も重要な役割を果たしています。そもそも最初にこのウイルスが口や鼻腔に入ったときにその場で撃退できるかどうかというところでは、自然免疫という力が働いています。
そういうことから、前回2020年4月の段階で、このテンミニッツTVでお話しさせていただいたときには、やはり体調の管理が大事であるとお伝えしました。これはすなわち免疫力をキープするということです。当たり前ですが、疲労・運動・睡眠・便通・食事に気を配ります。また、入ってきた瞬間にウイルスを殺せるかどうかという自然免疫においては、ウイルスに対する抵抗力のある因子であるインターフェロンを増やすために、朝鮮人参や、漢方であれば十全大補湯をお勧めさせていただきました。
また、重症化予防として、ビタミンDが免疫を抑制する細胞を抑えるので、勧められるのではないかとお話させていただきました。
実はその後のコロナウイルスの研究で、この免疫抑制細胞も重要な役割を果たしていること、また、ビタミンDを摂取していた方は重症化が少ないことも示されてきました。
2021年の7月に厚生省が新型コロナウイルス感染症の“いま”に関する11の知識をホームページで公開しています(スライドは最新の9月版)。これは、感染症の病原性、感染性、検査・治療、変異株ごとに、非常に良くまとまっています。ぜひ、コロナウイルスに関する知識を大まかに得たいという方はこの厚労省のホームページをご覧になっていただければと思います。
●これまでの日本のコロナ対策とその問題点
そこで、これまでの日本のコロナ対策を振り返ってみたいと思います。根拠となる法制度となっている感染症法に基づいて行われています。その46条には、現在のコロナの分類では、陽性者は全員入院します。そして、濃厚接触者などはいわゆる積極的疫学調査の対象となりますが、そうでない場合、検査費用は自己負担になります。逆にいうと、積極的疫学調査の対象であれば検査費用は公費ですが、それ以外は自己負担です。
2020年1月17日という非常に早い段階で、厚生労働省は国立感染症研究所に積極的疫学調査を指示していて、予算措置も行っています。その中で、感染者が出た場合には、濃厚接触者を探し出して、検査をし、感染が確認された場合には強制入院をさせます。また、そ...