ウィズ・コロナ時代の医学展望
この講義シリーズの第1話
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
病床数世界一の日本がコロナ禍で露呈した医療体制の問題点
ウィズ・コロナ時代の医学展望(2)日本の医療の脆弱性
堀江重郎(順天堂大学医学部・大学院医学研究科 教授)
新型コロナウイルス感染症の拡大により、保健所や病院の役割が改めて注目されている一方、日本の医療の脆弱性が浮き彫りになっている。戦前、強化された保健所だが、戦後の行政改革によってその数は減少。そこには今回の新型コロナによるパンデミックのような有事を想定しなかったということも要因として指摘されている。なぜそうなってしまったのか。日本の医療体制の問題点を欧米諸国と比較しながら解説する。(全4話中第2話)
時間:11分13秒
収録日:2021年9月1日
追加日:2021年10月7日
≪全文≫

●有事を想定しなかった戦後の行政改革、結果として保健所数が減少


 ここで少し保健所について考えてみたいと思います。そもそも保健所は第二次大戦前の戦争準備として、内務省が健兵健民政策を推進するために都道府県に作らせました。実は当時はこうした感染症に対しては、同じ内務省にあった警察が管掌していました。その後、第二次世界大戦の直前に厚生省ができて、そういった中で保健所が強化されてきました。

 終戦時、GHQは内務省を解体し、その中で(現在の)保健所法が制定されました。それまでは、保健所は警察と似ていて、国、都道府県、地方自治体ごとに指揮系統がありました。しかし、GHQの参画した保健所法においては、地方自治ということで、それぞれの市、だいたい人口10万人あたりに一つの保健所を作ることになりました。地域の医療関係者、あるいは住民、有識者等を中心に衛生を高めていく発想で、それぞれの独立がかなり高い機能になっています。このことが現在でも、東京都あるいは23区の間の保健所機能がなかなかスムーズではないことや、あるいは都道府県と中核市の間や、市と市の間でも、保健所の相互の提携が十分でない大きな原因となっています。

 当然のことながら、戦後の混乱期においては、海外から帰国した兵士による伝染病や感染症の輸入や、貿易なども含め、さまざまな問題がありました。また、国民の病気としては、戦前からの結核に対する検診活動が非常に進んでいました。そういった中で、国民皆保険が登場します。それと同時に、医療の主体が予防より医療サービスのほうに変わっていくことによって、保健所の力が徐々に弱くなってきたという実情があります。特に、地方財政の悪化、そして1980年代以降のいわゆる臨調(臨時行政調査会)の行革から、社会保障制度が全面的に再編されます。さらに、保健所法が地域保健法に改正されることによって、従来の予防医学や公衆衛生だけではなく、老人保健や精神保健にも機能分化として人員の配置が進み、本来の目的であった感染に対する資源が非常に乏しくなってきたという状況があります。

 保健所の数を見ていただくと、1960年代がだいたい800か所で、ピークの1992年には852か所ありましたが、現在は469か所しかなく、当然人員も減少しています。有資格者である医師や保...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「健康と医療」でまず見るべき講義シリーズ
「男性更年期」とは何か
うつやほてり…男性ホルモン・テストステロン減少のせい?
堀江重郎
“膝の痛みの名医”が語る(1)変形性膝関節症とは
膝の痛み…変形性膝関節症に有効なのは「運動療法」
黒澤尚
和食の深い秘密~なぜ身体に良いのか(1)和食の特徴と日本人
日本人は地球上最もベジタリアンだった?和食の7つの基本
小泉武夫
熟睡できる環境・習慣とは(1)熟睡のための条件と認知行動療法
熟睡のために――認知行動療法とポジティブ・ルーティーン
西野精治
睡眠:体、脳、こころの接点(1)睡眠とは?
なぜ睡眠は生きるために必要?脳にある覚醒中枢と睡眠中枢
尾崎紀夫
老いない骨のつくり方(1)高齢化と骨の病気
健康寿命に大きく影響する骨粗鬆症・歯周病・変形性関節症
鄭雄一

人気の講義ランキングTOP10
中国共産党と人権問題(1)中国共産党の思惑と歴史的背景
深刻化する中国の人権問題…中国共産党の思惑と人権の本質
橋爪大三郎
プロジェクトマネジメントの基本(2)プロジェクトの複雑性とマネジメント
コスパが鍵!? 顧客満足につながる品質マネジメントとは
大塚有希子
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二
「重要思考」で考え、伝え、聴き、議論する(1)「重要思考」のエッセンス
重要思考とは?「一瞬で大切なことを伝える技術」を学ぶ
三谷宏治
歴史の探り方、活かし方(1)歴史小説と史料探索の基本
日本は素晴らしい歴史史料の宝庫…よい史料の見つけ方とは
中村彰彦
内側から見たアメリカと日本(7)ジャパン・アズ・ナンバーワンの弊害
ジャパン・アズ・ナンバーワンで満足!?学ばない日本の弊害
島田晴雄
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫
戦争と暗殺~米国内戦の予兆と構造転換(1)内戦と組織動乱の構造
カーク暗殺事件、戦争省、ユダヤ問題…米国内戦構造が逆転
東秀敏
徳と仏教の人生論(1)経営者の条件と50年間悩み続けた命題
宇宙の理法――松下幸之助からの命題が50年後に解けた理由
田口佳史