●重症化するメカニズムと、それを防ぐ治療薬の効果と問題点
そうは言いながら、新型コロナウイルス感染症は、やはり2020年の3月、4月に比べると、治療に関して格段に良くなっています。これは少し細かい資料ですが、感染当初と、少したってからを比べると、死亡率が非常に減ってきていることが分かります。
コロナウイルスの大きな問題点は、免疫応答による過剰な炎症が起こる場合に、致死的となることがいわれています。
ウイルスが侵入すると、われわれの免疫細胞が活性化します。通常はそこから治癒、あるいはウイルスの除去に進んでいきますが、何らかの原因で過剰な免疫応答が起こることによって、この免疫細胞が出すサイトカインという物質が逆にわれわれの身体を傷つけます。傷つけるというのは、基本的には血管の中で血液が固まりやすくなったり、急激に炎症が進むことによって、肺の中で酸素交換ができなくなってくることです。あるいは、出血しやすくなるといった過激な状態が起きてきます。
こういった中で現在いろいろな治療ができています。現状最も効果があって、重症化を防ぐ、あるいは重症者に対する治療として、ステロイドであるデキサメタゾンが有効な薬剤として推奨されています。
これは特に人工呼吸を装着するような方に大変効果があることが分かっています。特に今入院できない方の中には、パルスオキシメーターというご自身の血液中の酸素を計る器具を自治体から貸与されて計っている方がいるかもしれません。酸素投与が必要な段階は、私はほとんどの場合にはデキサメタゾン投与が必要なのではないかと思います。これは行われることがなかなか難しいかもしれませんが、多くの医療人はアグリーするのではないかと思います。
しかし問題点として、ステロイドは重症化である過激な炎症を防ぐものですが、ウイルスが増殖している段階でステロイドを投与すると、逆にウイルスが増えることを助長します。そのため、感染初期にステロイドを投与してしまうと、逆にウイルスがどんどん増えていって、肺炎が悪くなることもあり得ます。酸素濃度が低下した人の100パーセントにデキサメタゾンが適切かは難しいのですが、多くの方は本来、ステロイドであるこのデキサメタゾンが必...