●要介護者の15~20パーセントは骨・関節が原因
はじめまして。順天堂大学医学部の黒澤です。専門は整形外科で、関節の患者さんを主に治療しています。
ご存知のように、現代は高齢社会になっており、日本人の平均寿命(2012年)は男性が79歳、女性が86歳と、たいへん長寿の国になっています。それは大変喜ばしいことですが、一方では、長寿のために体のあちこちの具合が悪くなって、せっかくの長寿の人生を享受できないという人が、実は大勢いるのです。厚生労働省の調べでは、男性で約7年、女性で約8年~9年、人生の終末期に思うように動けなくなり、せっかくの人生を享受できない人がいるとされています。
そのように長寿になって体の調子が悪くなり、思うように生活ができなくなる原因にはいろいろありますが、そうした場合の一番の典型は「介護」になります。介護を必要とする人は非常に大勢いて、統計によると約400万人となっています。
介護の原因となる疾患は、厚労省の調べによると、まず、皆さんよくご存知の認知症があります。次に、脳出血や脳梗塞など、いわゆる脳卒中の後遺症で動けなくなるケース、そしてその次に挙げられているのが、骨や関節の具合が悪くなって思うような生活ができなくなるケースです。そういう人が約15~20パーセント前後だと、統計ではなっています。
●全国2800万人が変形性膝関節症
私が日々診療でお見受けするのは、そういう加齢のために背骨などの骨が弱くなって骨折した人や、あるいは60年、70年、80年と生きてきたため、関節にだんだん自然に故障が起きてきて、痛くて思うように動けなくなった、そういう人を見ています。
その典型的なものが、関節に関して言えば、「変形性膝関節症」です。少し専門的になりますが、人間の膝関節の上の骨と下の骨のすり合わせ面には、軟骨があります。これが上下の骨のクッション役となり、また、表面が非常に滑らかで摩擦なく動けるようにしてくれています。こうした動物の軟骨同士の摩擦係数は、非常に低いです。氷の上を滑るスケートエッジの工学者が非常に工夫して、研究して、まねをしようと思ってもできないような、非常に低い摩擦係数になっています。軟骨はそういう大事なものです。
軟骨のもう一つの特徴は、加齢とともにだんだんすり減ってきてしまうことです。なぜかという...