最新の腰痛医療
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
腰痛でも安静より運動! 座りっぱなしは死亡リスクが増加
最新の腰痛医療(2)運動療法と認知行動療法
菊地臣一(福島県立医科大学 元・理事長兼学長)
「メタボリックシンドロームや生活習慣病は、腰痛と深く関係しています」と、福島県立医科大学理事長兼学長・菊地臣一氏は語る。しかも、単に太っているから腰が痛くなるというわけではないという。菊地氏が腰痛の最新治療法を紹介する。(全2話中第2話目)
時間:13分33秒
収録日:2016年1月25日
追加日:2016年6月13日
≪全文≫

●「インフォームド・ディシジョン」が重要である


 今回は、「腰痛治療」について簡単にご紹介します。腰痛の治療も、近年大幅に姿を変えてきています。スライドに示すように、治療方針決定の基本は、第1回で述べた「EBM(evidence-based medicine、根拠に基づいた医療)」に則った各種治療法の提示で、患者さんにそれぞれの治療法の利害や特質を説明します。当然、患者さんは個人的、社会的な事情や背景が異なりますから、「NBM(Narrative‐based Medicine、対話を重視する医療)」に基づき、EBMとNBMを統合させた治療法を選択します。つまり、医療提供側から見た理想的な医療とは、EBMというサイエンスと、NBMというアートの統合なのです。

 具体的にどういったことを考えなければならないかというと、次のスライドに示すように、一つは患者さんのQOL(生活の質)や満足度の重視です。痛みをとることは、目的ではなく、患者さんが日常的に不自由なく動けるようにするための手段です。ですから、患者さんによって異なる痛みの意味を探っていくことが必要なのです。

 次に、患者さんの価値観の尊重です。病態は同じでも、個人によって治療の選択肢は異なります。例えば、椎間板ヘルニアで動けないが、3週間ほど自然経過を見れば9割は良くなるというケースでは、多くの人は保存療法を選び、仕事などをせずに安静にします。しかし、4日後にどうしてもアメリカ出張に行かなくてはならない人にとっては、手術が第一選択です。このように、患者さんの事情に応じて治療法を相談しながら決めていくことが大切です。

 これは、インフォームド・コンセントより一歩進んだ「インフォームド・ディシジョン」といえるでしょう。患者さんに全ての情報を提供して、患者さんとお医者さんが一緒になって治療法を決めていく姿勢が大事です。また、腰痛の治療で最も大切なことは、仕事に復帰できるかどうかということですから、当然、治療のときは患者さんの職場環境や、仕事関連の環境を知っておく必要があります。


●病気から「病人」へと視点を変える必要がある


 具体的に治療法を組み立てていく際には、新たな視点が必要です。つまり、病気から「病人」へと視点を変え、どのような治療をするかではなく、誰を治療するかを重視することです。

 私の恩師...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「健康と医療」でまず見るべき講義シリーズ
熟睡できる環境・習慣とは(1)熟睡のための条件と認知行動療法
熟睡のために――認知行動療法とポジティブ・ルーティーン
西野精治
「最高の睡眠」へ~知っておくべき睡眠常識(1)健康な睡眠のための方法
どうすれば「最高の睡眠」は実現するか…健康な睡眠とは?
西野精治
最強の臓器「皮膚」のふしぎと最新医療(1)かゆみのサイエンス
「かゆみ」の正体を科学する!最新研究で迫る皮膚の仕組み
椛島健治
睡眠と健康~その驚きの影響(1)睡眠が担う5つのミッション
寝ないとよく食べる…睡眠不足が生活習慣病を招く理由
西野精治
飽食時代の「選食」のススメ(1)選食の提唱と「食の多様性」
20億人以上が肥満…飽食の時代に大事な「選食力」3カ条
堀江重郎
最新の腰痛医療(1)導入された二つの医療と慢性腰痛
高齢者だけじゃない! 若年層にも腰痛が増えている
菊地臣一

人気の講義ランキングTOP10
中国共産党と人権問題(1)中国共産党の思惑と歴史的背景
深刻化する中国の人権問題…中国共産党の思惑と人権の本質
橋爪大三郎
歴史の探り方、活かし方(7)史料の真贋を見極めるために
質疑編…司馬遼太郎の「史料読解」をどう評価する?
中村彰彦
内側から見たアメリカと日本(7)ジャパン・アズ・ナンバーワンの弊害
ジャパン・アズ・ナンバーワンで満足!?学ばない日本の弊害
島田晴雄
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
習近平―その政治の「核心」とは何か?(1)習近平政権の特徴
習近平への権力集中…習近平思想と中国の夢と強国強軍
小原雅博
熟睡できる環境・習慣とは(2)酒、コーヒー、ブルーライトは悪者か
ブルーライトは悪者か?近年分かった「第3の眼」との関係
西野精治
経験学習を促すリーダーシップ(3)成功の再現性と教え上手の指導法
教え上手の指導法に学ぶ!成功の再現性を高める4ステップ
松尾睦
危機のデモクラシー…公共哲学から考える(1)ポピュリズムの台頭と社会の分断化
デモクラシーは大丈夫か…ポピュリズムの「反多元性」問題
齋藤純一
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫