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骨トレのためなら中程度の負荷のかかる運動がオススメ

老いない骨のつくり方(4)健康常識の誤り

鄭雄一
東京大学大学院工学系研究科 バイオエンジニアリング専攻教授
情報・テキスト
ダイエットのために痩せる思いをしたり、高価なサプリメントに大枚をはたいたり…。私たちの健康への情熱は、間違った常識に振り回され、逆に骨を損なっている場合も多い。東京大学工学系研究科・医学系研究科教授の鄭雄一氏が伝える「老いない骨のつくり方」レクチャー。第4回目のテーマは「健康常識の誤り」だ。(全5話中第4話)
時間:07:05
収録日:2016/09/14
追加日:2016/11/10
≪全文≫

●注意したいダイエットとサプリメントの常識


 骨と軟骨の老化、生理的な老化と病的な老化が分かったところで、「健康常識の誤り」、今の健康常識はどうですかという話をさせていただきます。スライドに「間違いだらけの健康常識」と書きましたが、二つを取り上げます。一つはダイエット、一つはサプリメントです。

 まず、ダイエット自体は悪くないということです。だけど、ダイエットするのであれば、栄養素のバランスをとりながらカロリーの総量を制限するのがいいです。長期間にわたって、卵だけやバナナだけのような1種類の食物を限定して取る、まして断食したりするのは厳禁です。栄養不足になると骨が溶けるからです。

 それからサプリメントですが、これもそれ自体が悪いということではありません。通常の食事を摂取した上で、不足する栄養素を補うのに使用するのは、まったく問題ありません。でも、サプリメントだけで健康に必要な栄養素を構成することはできません。食べ物というのはとても複雑なもので、過剰摂取や他の栄養素との相互作用など、注意しなければいけないことがいろいろあるのです。

 例えば、過激なダイエットをするとどうなるのか。まず、栄養不足になります。もし、カルシウムが不足していれば、骨はどんどんと溶けてしまいます。そして、たんぱくを取らなければ筋力は低下します。こういうことが重なると月経異常が起こり、女性ホルモンが出なくなります。そうなると、骨と軟骨の両方で病的老化を促進してしまうということになります。


●間違った健康常識に振り回されていませんか?


 私の周りにもたくさんいるのが、「自分はたばこをのまないと太ってしまう。だから、たばこはダイエットのためなんだ」という人です。たばこ自体が骨の病的老化を促進するファクターですので、良くありません。

 痩せるために食事はお酒だけという人がいます。「自分は、カロリーは酒で取ってるんだ」と言うのですが、アルコールはエンプティーカロリー(エンプティーは空の意)と呼ばれていて、カロリーはあるものの、カルシウムもたんぱく質も入っていません。だから、お酒だけで食事をしていると、骨はどんどん溶けていくし、筋肉もなくなっていってしまいます。

 サプリメントですが、これは「不足がある」という前提があって飲むものです。また、一般にとても高価なものがあり、それは勧められません。そんなに高いわけがないからです。

 「なぜ効くの?」と首をひねるものもあります。あまり言ってはいけないのかもしれませんが、サメの軟骨やコラーゲンを服用するものがあります。あれらは全て消化されて、細かいアミノ酸や糖になってしまいます。そんなものは体の中にいくらでもあります。注射する場合はまた別ですが、飲んだからといって効かないだろうと思います。逆に非常に高濃度に入っていて、副作用も起こしやすいものもあります。

 よくダイエットとサプリメントを併用する人がいます。断食して、サプリメントを何錠かだけ飲むという人もいますが、サプリメントだけで健康に必要な栄養素は取れないので、絶対に栄養失調になってしまいます。ですから、こういうことは絶対にしないでください。


●過度の安静も過激な運動も骨と軟骨の健康には望ましくない


 「骨や軟骨は、筋肉のように鍛えられるか?」と、よく聞かれます。骨や軟骨がQOL(クオリティ・オブ・ライフ)に大事であれば、ぜひ鍛えたいというのです。

 まず、動かないで安静にしていれば骨は吸収され軟骨は萎縮します。体は使わない部分には資源を回しませんから、やはり運動することは絶対大事で、マストと言えます。しかし、過度のメカニカルストレスは軟骨の病的老化を促進します。衝撃の強い運動ほど、骨は増える一方で、骨の端にある軟骨にとってはリスクもあります。例えば、重量挙げ、あるいは踏み込みの動作が多いバスケットボールでは、骨量は増えますが、軟骨にとってはリスクです。さらに、過激な運動にはアスリート女性の月経を止める「運動性無月経」を引き起こすリスクもあります。

 これらのことから、やはり過激な運動は控えた方がいいでしょう。過度の安静も過激な運動も骨と軟骨の健康には望ましくなく、中程度の負荷の運動がいいということになります。これについてはまた後で、説明いたします。


●夢を煽るマスコミ報道は、三つの点に注意する


 もう一つ指摘したいのは、過大な夢を煽るマスコミ報道に注意ということです。よく「××の病気の遺伝子発見、××の治療に道」などと書いてあります。確かに長い道のりの一歩かもしれませんが、すぐに画期的な治療法につながることは、残念ながらまずありません。ですので、マスコミ報道は、以下の3点を常にチェックした方がいいと思います。

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