最新の腰痛医療
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
高齢者だけじゃない! 若年層にも腰痛が増えている
最新の腰痛医療(1)導入された二つの医療と慢性腰痛
菊地臣一(福島県立医科大学 元・理事長兼学長)
「世界中で、3カ月以上続く慢性腰痛が増えています」と語るのは、福島県立医科大学理事長兼学長の菊地臣一氏だ。今、腰痛と腰痛治療の世界で何が起こっているのか。菊地氏が最新の情報や治療法、考え方を紹介する。(全2話中第1話目)
時間:13分58秒
収録日:2016年1月25日
追加日:2016年6月6日
≪全文≫

●腰痛治療に「EBM」と「NBM」が導入された


 福島県立医科大学整形外科医の菊地臣一です。今回は、誰もが一度は経験するという「腰痛」について、最近の知見を紹介したいと考えています。

 近年、腰痛に対する考え方や治療が大幅に変わってきています。まずはその背景についてご紹介します。スライドに示すように一番大きいのは、「EBM(evidence-based medicine、根拠に基づいた医療)」の導入です。これは、われわれの思い込みや偶然を排除する効果があり、従来の分子生物学、病態生理学などミクロの手法に代わり、患者さんのデータを定量化する臨床疫学というマクロの手法に基づいて結論を出していきます。具体的には、RCT(Randomized Controlled Trial、ランダム化比較試験)というものを用います。

 次のスライドが示すように、最近は、EBMだけでは不十分だということが分かってきました。人間は感情やさまざまな環境に左右されるからです。そこで、合わせて必要だと考えられてきたのが、「NBM(Narrative‐based Medicine)」という考え方です。つまり、対話を重視する医療です。EBMは科学的な手法で、誰にでも適用できますが、一方で個々の患者さんには、言葉でしか表せないこと、数値では必ずしも表現できないことがあります。これは、EBMを補うためのもので、わが国で古来いわれている「手当」という概念と一致していると、私は考えています。患者の個人的、社会的な背景を評価して、診療に生かそうとする手段なのです。

 事実、EBMが世界各国で導入され、広く用いられるとともに、医療はサイエンスだけでは不十分ではないかといわれています。次のスライドが示すように、われわれの先人たちが培ってきたアート、経験による知恵も大切であることが逆に裏付けられたのです。EBMは、結果的にNBMの重要性を証明したといえるでしょう。最近では、今まで気のせいだとされてきた「プラシーボ効果(偽薬効果)」が、実は現代医療で最も効果のある薬物療法の一つではないかとさえいわれ始めています。われわれは、こういった事実を十分に考慮して治療に当たる必要があります。


●腰痛は若い人にも多く、生活習慣病と密接な関係がある


 次に、「疫学」に移ります。先ほどご紹介したように、腰痛は、人間の...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「健康と医療」でまず見るべき講義シリーズ
ウイルスの話~その本質と特性(1)生物なのか、そうではないのか
きわめて特異的な「ウイルスと宿主の関係」
長谷川眞理子
アンチエイジングのための「5:2ダイエット」
「5:2ダイエット」活性酸素を減らしてアンチエイジング
堀江重郎
1分チャージ! 新・エクササイズ理論
たった1分で効果を上げる新運動理論と攻めのダイエット
堀江重郎
腸内細菌の可能性とマイクロバイオームのダイバーシティ
注目は納豆!腸内細菌が生成する若返り物質「ポリアミン」
堀江重郎
驚異の味噌パワー
味噌で免疫力向上、がん抑制、放射能除去…発酵食品の効果
小泉武夫
最強の臓器「皮膚」のふしぎと最新医療(1)かゆみのサイエンス
「かゆみ」の正体を科学する!最新研究で迫る皮膚の仕組み
椛島健治

人気の講義ランキングTOP10
インフレの行方…歴史から将来を予測する(1)インフレの具体像を探る
270年の物価の歴史に学べ…急激な物価上昇期の特徴と教訓
養田功一郎
高市政権の進むべき道…可能性と課題(2)財政戦略3つの問題点
高市政権の財政政策の課題は…ポピュリズム政策をどうする?
島田晴雄
平和の追求~哲学者たちの構想(7)いかに平和を実現するか
国際機関やEUは、あまり欲張らないほうがいいのでは?
川出良枝
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(4)全てをつなぐ密教の世界観
密教の世界観は全宇宙を分割せずに「つないでいく」
鎌田東二
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
AI時代と人間の再定義(1)AIは思考するのか
AIでは「思考の三位一体」が成立しない…考えるとは?
中島隆博
『タテ社会の人間関係』と文明論(8)タテ社会の構造改革を議論する
ヒントは幕末期の処士横議!?…タテ社会の構造改革に向けて
與那覇潤
ソニー流「人的資本経営と新規事業」成功論(1)人を真に活かす人事評価とは
ソニー流の「人材論」「新規ビジネス論」を具体的に語ろう
水野道訓
おもしろき『法華経』の世界(7)真の救済に向かう
イエスも法華経のアバター?「全世界救済」の具体像を示す
鎌田東二
危機のデモクラシー…公共哲学から考える(3)カントの公共性論
いま学ぶべきカントの挑戦~なぜ「公開性」が重要なのか
齋藤純一