●おしっこの時間が21~22秒を超えると高齢者である
皆さん、こんにちは。順天堂大学の堀江です。今日は、夜中にトイレに起きる、あるいはおしっこが急に間に合わなくなってしまうといった、おしっこが近いという問題について考えてみたいと思います。
数年前に、非常に愉快な研究に対して与えられるイグノーベル賞を受賞した、おしっこに関する研究がありました。その研究は、いろいろな動物のおしっこの時間を調べてみたというもので、例えば象や牛、馬、犬など、いろいろな動物のおしっこの時間を計ってみると、驚くべきことにその時間はだいたい21秒だということが分かってきました。
もちろん、象など体の大きい動物であれば膀胱も大きいのですが、象の膀胱のおしっこを流す尿道の太さも比例して太くなってくるということで、哺乳動物はだいたい21秒でおしっこするということが分かりました。
人の場合はどれくらいでおしっこをしているのかご存じでしょうか。面白いのは、TOTOに「音姫」というトイレの時の音を消すような機械がありますが、これがだいたい25秒で設定されています。おそらくTOTOの社内で研究されたと思いますが、日本人がどれくらい排尿に時間がかかっているかということで、以前私はNHKの「ためしてガッテン」という番組に出る時、NHKに頼んで、約3000人にアンケートを取りました。それぞれ日本中の方に、ストップウォッチでおしっこの時間を計っていただきました。
分かったのは、21歳から94歳の男性を調べた平均値でいうと29秒でしたけれども、20歳から50歳だけで見ると、21.98秒ということで、先ほどの哺乳類とほぼ同じだったということです。
女性の場合はだいたい18秒ほどでおしっこするということで、男性より短いということが分かったのですが、そうすると21秒から22秒でおしっこが済んでいる方は、動物と一緒でかなり元気だということが分かります。逆の言い方をすると、22秒を超えてきた場合、高齢者のカテゴリーに入れてもいいといえるかもしれません。
●膀胱の収縮力が弱まると頻尿になる
なぜおしっこの時間が変わってくるかというと、1つの原因は、少しずつ膀胱が収縮する力が弱くなってくるということが挙げられます。膀胱の筋肉は平滑筋なので、自分が腹圧をかけたり、いろいろな形でスピードを速くすることはできます。
そこの筋肉に行く血液の流れが悪くなると、だんだん筋肉は硬くなってきます。例えば、手や腕に傷ができた場合、傷が治ると硬くなるということがあります。これは治る過程で、そこの部分の血液の流れが悪くなってくると、体は柔軟性を失って硬くなってくるということです。例えば、肝臓に行く血液が少なくなると肝硬変という形になってきますし、膀胱の場合も、膀胱に行く血液の流れが減ってくると膀胱の収縮力が弱くなってきますので、例えるとゴム風船が紙風船になってしまうということです。ゴム風船はブーっと膨らむし、シューっと空気が出ていきますが、紙風船はパリパリとしてすぐいっぱいになってしまうし、空気がなかなか出ていきません。
●夜間頻尿とその原因
日本人は夜中に何回ほどおしっこするか、これも気になる点ですが、40歳以上の方はまずほとんどの方が夜中に1回はトイレに行きます。40代から50代だと半数の方が夜中に1回トイレに行きますし、70歳以上はおそらく7割以上の方が少なくとも1回は夜中にトイレに行くことになっています。私たち泌尿器科の医師は、夜中に3回以上トイレに行く方を「夜間頻尿」といっています。
ですから、40歳以上の方で夜中に1回トイレに行くことはあまり問題ないと思いますが、2~3回になったとき、その段階で少し注意をするということが大事になります。
夜中トイレに行く大きな原因は、先ほど申し上げたように、膀胱の筋肉が硬くなってきてキャパシティが減ってくるためということと、もう1つは膀胱の筋肉の柔らかさで、十分にためられるかどうかも関係してきます。
これ以外には眠りの深さも関係があり、眠りが深い方は尿意を感じにくいということもあります。もう1つ、血管あるいは膀胱の筋肉に行く神経にも関係があります。この機能を果たしますと、血管や筋肉から一酸化窒素というガスが出てきます。このガスが充分に出ると、しっかりとおしっこをためることができますし、また出るときもスーッと出るということになります。
ですから、夜中にトイレに1回行くようになった、2回行くようになった、3回行くようになったというのは、それぞれ何らかの理由があるということで、注意していただくことが大事に...