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ノーベル賞受賞「オートファジー」とは?その仕組みに迫る

オートファジー入門~細胞内のリサイクル~(1)細胞と細胞内の入れ替え

水島昇
東京大学 大学院医学系研究科・医学部 教授
概要・テキスト
2016年ノーベル医学・生理学賞の受賞テーマである「オートファジー」とは何か。私たちの体は無数の細胞でできているが、それが日々、どのようなプロセスで新鮮な状態を保っているかを知る機会は少ない。今シリーズでは、細胞がその中身を入れ替える方法の1つである「オートファジー」について講義する。そこで今回は、まず細胞の構造や入れ替わりの仕組みを解説し、細胞に関する基礎的な理解を深めていく。(全5話中第1話)
時間:09:15
収録日:2023/12/15
追加日:2024/03/17
≪全文≫

●細胞の入れ替わり方には2通りある


 東京大学の水島と申します。今回は、細胞内のリサイクルとして、主にオートファジーについて説明をしていきたいと思っております。

 私たちの体がどのように入れ替わっているかということになりますが、それは2つの段階で考えることができます。1つは、私たちの体を構成している細胞そのものが入れ替わるということで、もう1つは、それぞれの細胞の中を見て、その細胞の中が入れ替わっているということであります。

 まず最初に、その細胞そのものがどうやって入れ替わっているかというところから説明してまいりたいと思います。

 私たちの体は、人間の場合ですけれど、数10兆個、例えば30兆から40兆個の細胞でできているといわれています。それらの細胞は、ここ(スライド)に書いていますように神経細胞であったり、赤血球であったり、筋肉の細胞であったり、おそらくこれも数100種類の細胞で体はできていると考えられています。

 これ(スライドの中のもの)は培養している細胞の1種類で、皮膚の細胞です。コラーゲンなどを作る線維芽細胞という細胞で、これをシャーレの中で培養しているものです。動画で細胞が分裂していく様子が分かりますが、ここに示している範囲では、この3つの細胞が今、分裂して増えていきました。これは3時間の動画を短くしているものですけれど、このように細胞は次々と分裂していきます。

 この細胞は、だいたい1日で倍に増えるという細胞です。私たちの体の中でこのように1日で倍になると、体も2倍になってしまいますけれど、そういうことはないわけです。なぜなら、体全体で考えると1日に約2パーセントの細胞が増えて、一方で、それと同じ約2パーセントの細胞がなくなったり、死んだりしているからです。

 このように、私たちの体の中の細胞はどんどん入れ替わっておりまして、いってみれば、今日の皆さまは昨日の皆さまと2パーセント違うということがいえます。これを繰り返していけば、1年後にはほとんど別人になっているといってもいいかと...
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