感染症予防・がん治療に使えるmRNAワクチン
この講義は登録不要無料視聴できます!
▶ 無料視聴する
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
なぜmRNA医薬が最近、注目されるようになったのか
感染症予防・がん治療に使えるmRNAワクチン(2)タンパク質医薬とmRNA医薬
健康と医療
内田智士(東京科学大学 難治疾患研究所 教授 /京都府立医科大学 大学院医学研究科 特任教授 )
生命現象の中核を担っているタンパク質。それは医療の分野でも注目を集めており、現在では世界の医薬品売上の上位ほとんどをタンパク質医薬が占めている。しかし、優れた特徴をもつタンパク質医薬にも多くの課題がある。今まさに研究が進んでいるmRNA医薬はそうした課題を解決し、より安全で効果的な治療を実現する可能性を秘めている。(全5話中第2話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:9分15秒
収録日:2021年4月13日
追加日:2021年6月18日
カテゴリー:
≪全文≫

●タンパク質医薬の優れた特徴


―― 続きまして、タンパク質がどのように身体に働いていくのか、またその詳しいメカニズムについて教えていただきたいと思います。

内田 はい。こちらですね。


 このタンパク質は特定のタンパク質とだけ相互作用する特徴を持っています。ここで青、赤、黄、緑という4種類のタンパク質があったとします。この青のタンパク質は、赤や黄のタンパク質とはあまり形が合わないので、安定に結合していることはできません。しかし、この緑のタンパク質とはちょうど形が合っていて、フィットします。したがって、緑のタンパク質とだけ安定に相互作用します。このように、特定のタンパク質とだけ相互作用ができる点は、生命機能を維持する上でも重要であり、医薬品としても優れた特長です。

 例えば、こうして緑のタンパク質のような特定のタンパク質とだけ相互作用することによって、緑のタンパク質が実際に担っている生体内のプロセスにちゃんと介入することができます。また、他の意図しないタンパク質とは相互作用しないので、副反応も起きないと考えられます。

 では従来の医薬品はどうだったかというと、実は「低分子薬剤」といって、タンパク質よりもっと小さい分子が薬として用いられていました。こういった小さい分子を使うと、さまざまなタンパク質にくっついてしまうので、高度な機能を担うことはできず、副反応が起きてしまう懸念もあります。


●タンパク質医薬の歴史



内田 このタンパク質医薬の歴史について簡単に説明します。タンパク質医薬は1980年代初頭にインスリン製剤が実用化されたのを皮切りに、特に2000年以降、「抗体医薬」というのが、がんやリウマチなど、さまざまな病気に対して応用されるようになりました。今やこの抗体医薬は現在の医療になくてはならないものです。

 右上に実際の世界医薬品売上上位トップ10を示しています。そのうち、なんと7品目がこのようなタンパク質医薬という状態です。ただ、このタンパク質医薬にはまだまだ問題があります。

 製造や精製の過程が非常に煩雑で、そのために経済的コストがかかる他、そうして高いお金をかけて実際投与しても、ヒトに投与すると速やかに代謝されて、効果が消失することが挙げられます。

 さら...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「健康と医療」でまず見るべき講義シリーズ
和食の深い秘密~なぜ身体に良いのか(1)和食の特徴と日本人
日本人は地球上最もベジタリアンだった?和食の7つの基本
小泉武夫
今どきの若者たちのからだ、心、社会(1)ライフヒストリーからみた思春期
なぜ思春期は大事なのか?コホート研究10年の成果に迫る
長谷川眞理子
新しいアンチエイジングへの挑戦(1)患者と伴走する医者の存在
だべったら生存期間が倍に…ストレスマネジメントの重要性
堀江重郎
認知症とは何か(1)疾患の種類と対応
多くの認知症の原因は「脳のゴミ」の蓄積
遠藤英俊
感染症予防・がん治療に使えるmRNAワクチン(1)mRNAとは何か
コロナだけでなく個別化医療の可能性を秘めたmRNAワクチン
内田智士
健診結果から考える健康管理・新5カ条(1)血管をより長く守ることが重要な時代
健康診断の結果が悪い人が絶対にやってはいけないこと
野口緑

人気の講義ランキングTOP10
ヒトは共同保育~生物学から考える子育て(1)動物の配偶と子育てシステム
ヒトは共同保育の動物――生物学からみた子育ての基礎知識
長谷川眞理子
未来を知るための宇宙開発の歴史(7)米ソとは異なる日本の宇宙開発
日本の弾道ミサイル開発禁止!?米ソとは異なる宇宙開拓の道
川口淳一郎
「集権と分権」から考える日本の核心(3)中央集権と六国史の時代の終焉
天平期の天然痘で国民の3割が死亡?…大仏と崩れる律令制
片山杜秀
数学と音楽の不思議な関係(1)だれもがみんな数学者で音楽家
世界は数学と音楽でできている…歴史が物語る密接な関係
中島さち子
モンゴル帝国の世界史(2)チンギス・ハーンのカリスマ性
自由な多民族をモンゴルに統一したチンギス・ハーンの魅力
宮脇淳子
DEIの重要性と企業経営(4)人口統計的DEIと女性活躍推進の効果
日本的雇用慣行の課題…女性比率を高めても業績向上は難しい
山本勲
睡眠から考える健康リスクと社会的時差ボケ(5)シフトワークと健康問題
発がんリスク、心身の不調…シフトワークの悪影響に迫る
西多昌規
「アカデメイア」から考える学びの意義(1)学びを巡る3つの危機
「学びの危機」こそが現代社会と次世代への大きな危機
納富信留
知識創造戦略論~暗黙知から形式知へ(1)イノベーションと価値創造
価値創造において重要なのは未来から現在を見るという視点
遠山亮子
トランプ政権と「一寸先は闇」の国際秩序(3)これからの世界と底線思考の重要性
同盟国よもっと働け…急激に進んでいる「負担のシフト」
佐橋亮