ナノテクノロジーでがんに挑む
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
がん治療になぜナノマシンを活用したDDSが有効なのか
ナノテクノロジーでがんに挑む(3)ナノマシンを使ったがん治療
片岡一則(ナノ医療イノベーションセンター センター長/東京大学名誉教授)
ナノマシンを使ったドラッグデリバリーシステム(DDS)によるがん治療は現在、有効性と安全性を調べる第2相まで臨床試験が進んでいる。この仕組みを使えば、がん細胞に直接薬を届けることが可能になる。そこで、特に研究開発が進められているのは、がんの中でも世界的に治療が大変困難とされている脳腫瘍への活用である。(全8話中第3話)
時間:9分04秒
収録日:2021年5月12日
追加日:2022年3月12日
≪全文≫

●ナノマシンによるがん治療の仕組み


 では、こういうナノマシンがどうやって血中からがんの組織の中に移行できるのか、次のアニメーションで示したいと思います。

※以下、動画より
《血管と細胞の間には酸素や栄養素が通る小さな隙間があります。抗がん剤だけだとこの隙間を通れるので正常な細胞にも入ってしまいます。一方、抗がん剤を包んだミセルのナノカプセルは直径50ナノメートル、正常な細胞には入りません。ところが、がん細胞の場合は血管との間に100ナノメートルという大きな隙間があります。ナノカプセルはがん細胞にだけ取り込まれていきます》

 がんの組織の血管は、正常な組織に比べると隙間が多いのです。そのため、ステルス機能が高くてぐるぐる回るナノマシンは、がんの組織の血管に来ると、その隙間からがんの中に入っていきます。

 こんな話をしても、「これは漫画ではないか」「本当にそんなこと起きるのか」と思いますよね。ですから、それを実際に観察しました。

 そこで使ったのは、高速走査型共焦点顕微鏡です。まずマウスにがんを移植します。そして、蛍光で標識したミセルを尾っぽの静脈から投与します。がんのところに本当に集まると、蛍光なので光ります。この顕微鏡を使うとどのぐらいきれいに見えるのかというと、スライド(右部分)に示したようにきれいに見えます。

 これは直系が数ミリのがんです。緑ががん細胞の核で、黄色が毛細血管です。これぐらいきちんと見えます。

 このシステムを使って実際に観察したのは膵臓がんです。膵臓がんは、血管の密度が低いうえに厚い間質で覆われています。(左下の画像の)濃い青の部分はがん細胞のクラスター、赤は間質、緑は血管です。血管は間質の中にしかなく、がん細胞の集まるところにはありません。そのため、ここ(血管)から出ていっても、この厚い間質の中を通っていかないと目的地まで到達することが難しくなります。

 では、ミセルを投与したらどうなるのかというと、これが実際の観察画像なので、(動画内で)赤い矢印を追っていってください。赤い矢印のところがフワッと光り、また閉じます。ランダムにこういうベ...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「健康と医療」でまず見るべき講義シリーズ
老いない骨のつくり方(1)高齢化と骨の病気
健康寿命に大きく影響する骨粗鬆症・歯周病・変形性関節症
鄭雄一
アンチエイジングのための「5:2ダイエット」
「5:2ダイエット」活性酸素を減らしてアンチエイジング
堀江重郎
熟睡できる環境・習慣とは(1)熟睡のための条件と認知行動療法
熟睡のために――認知行動療法とポジティブ・ルーティーン
西野精治
オートファジー入門~細胞内のリサイクル~(1)細胞と細胞内の入れ替え
ノーベル賞受賞「オートファジー」とは?その仕組みに迫る
水島昇
和食の深い秘密~なぜ身体に良いのか(1)和食の特徴と日本人
日本人は地球上最もベジタリアンだった?和食の7つの基本
小泉武夫
認知症とは何か(1)疾患の種類と対応
多くの認知症の原因は「脳のゴミ」の蓄積
遠藤英俊

人気の講義ランキングTOP10
習近平―その政治の「核心」とは何か?(1)習近平政権の特徴
習近平への権力集中…習近平思想と中国の夢と強国強軍
小原雅博
熟睡できる環境・習慣とは(1)熟睡のための条件と認知行動療法
熟睡のために――認知行動療法とポジティブ・ルーティーン
西野精治
歴史の探り方、活かし方(4)史実・史料分析:秀吉と秀次編〈上〉
史料読解法…豊臣秀吉による秀次粛清の本当の理由とは?
中村彰彦
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(4)全てをつなぐ密教の世界観
密教の世界観は全宇宙を分割せずに「つないでいく」
鎌田東二
内側から見たアメリカと日本(4)アメリカ労働史とトランプ支持層
ギャングの代わりに弁護士!? 壮絶なアメリカ労働史の変遷
島田晴雄
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(7)不動産暴落と企業倒産の内実
不動産暴落、大企業倒産危機…中国経済の苦境の実態とは?
垂秀夫
徳と仏教の人生論(1)経営者の条件と50年間悩み続けた命題
宇宙の理法――松下幸之助からの命題が50年後に解けた理由
田口佳史
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
人生100年時代の「ライフシフト概論」(3)キャリアの危機〈下〉
40代前半に訪れる「中年の危機」、鍵は「人生の成長戦略」
徳岡晃一郎