ナノテクノロジーでがんに挑む
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がん治療になぜナノマシンを活用したDDSが有効なのか
ナノテクノロジーでがんに挑む(3)ナノマシンを使ったがん治療
片岡一則(ナノ医療イノベーションセンター センター長/東京大学名誉教授)
ナノマシンを使ったドラッグデリバリーシステム(DDS)によるがん治療は現在、有効性と安全性を調べる第2相まで臨床試験が進んでいる。この仕組みを使えば、がん細胞に直接薬を届けることが可能になる。そこで、特に研究開発が進められているのは、がんの中でも世界的に治療が大変困難とされている脳腫瘍への活用である。(全8話中第3話)
時間:9分04秒
収録日:2021年5月12日
追加日:2022年3月12日
≪全文≫

●ナノマシンによるがん治療の仕組み


 では、こういうナノマシンがどうやって血中からがんの組織の中に移行できるのか、次のアニメーションで示したいと思います。

※以下、動画より
《血管と細胞の間には酸素や栄養素が通る小さな隙間があります。抗がん剤だけだとこの隙間を通れるので正常な細胞にも入ってしまいます。一方、抗がん剤を包んだミセルのナノカプセルは直径50ナノメートル、正常な細胞には入りません。ところが、がん細胞の場合は血管との間に100ナノメートルという大きな隙間があります。ナノカプセルはがん細胞にだけ取り込まれていきます》

 がんの組織の血管は、正常な組織に比べると隙間が多いのです。そのため、ステルス機能が高くてぐるぐる回るナノマシンは、がんの組織の血管に来ると、その隙間からがんの中に入っていきます。

 こんな話をしても、「これは漫画ではないか」「本当にそんなこと起きるのか」と思いますよね。ですから、それを実際に観察しました。

 そこで使ったのは、高速走査型共焦点顕微鏡です。まずマウスにがんを移植します。そして、蛍光で標識したミセルを尾っぽの静脈から投与します。がんのところに本当に集まると、蛍光なので光ります。この顕微鏡を使うとどのぐらいきれいに見えるのかというと、スライド(右部分)に示したようにきれいに見えます。

 これは直系が数ミリのがんです。緑ががん細胞の核で、黄色が毛細血管です。これぐらいきちんと見えます。

 このシステムを使って実際に観察したのは膵臓がんです。膵臓がんは、血管の密度が低いうえに厚い間質で覆われています。(左下の画像の)濃い青の部分はがん細胞のクラスター、赤は間質、緑は血管です。血管は間質の中にしかなく、がん細胞の集まるところにはありません。そのため、ここ(血管)から出ていっても、この厚い間質の中を通っていかないと目的地まで到達することが難しくなります。

 では、ミセルを投与したらどうなるのかというと、これが実際の観察画像なので、(動画内で)赤い矢印を追っていってください。赤い矢印のところがフワッと光り、また閉じます。ランダムにこういうベ...

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