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ナノマシン技術の進化に必要な「核酸医薬とDDS技術」の進歩

ナノテクノロジーでがんに挑む(8)核酸医薬とDDS技術の進歩の共進

片岡一則
ナノ医療イノベーションセンター センター長/東京大学名誉教授
情報・テキスト
世界的に研究が盛んなナノ医療の分野だが、国際競争における日本の立場はどうなっているのか。また、ドラッグデリバリーシステム(DDS)の発展にはどのような背景があるのか。核酸医薬とDDS技術の進歩の共進による、医療のさらなる発展が期待されている。(全8話中第8話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:07:01
収録日:2021/05/12
追加日:2022/04/16
キーワード:
≪全文≫

●ナノ医療分野の研究が最も行われているのは日本


―― ナノマシンとは別の例ですが、今回のコロナワクチンでも非常に国際的な競争がなされました。ナノマシンの世界的な研究の状況や医薬化・製薬化の競争の状況はどうなっているのでしょうか。

片岡 世界的にもこの分野の研究は盛んです。例えば、いろいろなデータベースに“nanomedicine(ナノメディシン)“という項目を入れて論文の数を検索すると、1990年代の後半ぐらいから増え続けています。ということは、世界中でいろいろなところがこういう分野の研究をしているということだと思います。非常に関心は高まっていて、研究開発もずいぶん進んできています。

―― これも素人の質問になりますが、その中でも特に進んでいる国はどこですか。

片岡 私たち自身(日本)はかなり進んでいると思っています。というのは、たぶん臨床試験に入っているこういうナノ医療の数は、私たちが一番多いと思います。

―― そうなると、今後がますます楽しみですね。

片岡 そういう点で競争は激しいですが、できるだけ早く実用化したいと思っています。ですから、いわゆる論文を書くこととは少し違っています。論文だといろいろなデコレーションをして、すごく複雑なものを作りたがります。しかし、実際やってみると分かりますが、本当にヒトの患者さんに使っていただくうえでは、まずより多くの量を、再現性よく、
「GMP(Good Manufacturing Practice)」といって完全にクリーンな環境で作らなければいけません。そして、保管できないといけません。だから、結局シンプルなほうがいいのですが、シンプルにすると機能が限定されます。そのあたりのバランスが難しいのです。


●重要なのは核酸医薬とDDS技術の進歩の合致


片岡 今回のシリーズ講義でも「ユニットPIC」という話が出てきましたが、あれを見てもシンプルです。混ぜるだけでいいので、製剤技術は何も要りません。なぜ最初からそういうことをやらなかったのかというと、実は核酸医薬の進歩があります。初期の頃の核酸医薬は天然の核酸で作っていたので、酵素ですぐ壊れてしまいました。そして、細胞膜を通れませんでした。それが、核酸の化学修飾がどんどん進んでくると、核酸自体の酵素耐性が上がってきて、場合によっては細胞膜をそのまま通過できる機能が出てきます。

 ところが、逆にそういう機能を入れると核酸の異物性が高くなり、今度は体の肝臓などで取られやすくなってしまうのです。つまり、核酸のほうの矛盾が出てきたということです。一方、ドラッグデリバリーシステム(DDS)のほうは複雑化すると作りにくくなります。

 だから、この二つをドッキングすること、すなわち核酸自身の進化と、DDS技術の進化が両方合致することによって、より簡単で、使いやすいものができていているのです。そういう点でこういう分野は、その入れ物であるナノマシンの進化だけではなく、中に入れる薬の進化とうまくシンクロナイズしながら進めていかないといけません。

―― 「簡単で、使いやすい」というのは非常に大切なキーワードですね。

片岡 そうです。今、臨床試験に入っているミセルのうちの大部分は、クラシックな抗がん剤を内包したミセルですが、これはしょうがありません。そこからスタートしていき、それがようやく今、臨床試験にまでいっているということです。

 今後は、お話ししたような核酸医薬や分子標的薬、あるいはペプチド医薬といった新しい薬の種類に対応して、そういう薬の進化と同期した形で、こういうシステムを設計していきます。それが何年か後にまた臨床試験に出ていき、実用化されていきます。そうした直線的な進化ではなく、曲線的にわっと進化していくのではないでしょうか。

―― なるほど。患者側の立場からいうと、ナノマシンで治療してもらうことで、薬が効きやすくなったり、副作用が減ったり、あるいは脳腫瘍の事例も今日は詳しくお伺いしましたが、今までは効かなかったものが効くようになったりしていくことにつながるのでしょうか。

片岡 はい。特効薬を作っているわけではありません。いってみれば、薬が本来持っている性質を体の中でも最大限に発揮できるようにアシストするのが一番大きいと思います。 薬が本来持っているポテンシャルが、いろいろな理由があって体の中で発揮できないのに対して、こういうナノマシン技術と組み合わせることで最大限に発揮できるようにしてあげることではないかと思います。
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