ナノテクノロジーでがんに挑む
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
核酸医薬が抱える課題解決へ、進む「ユニットPIC」研究開発
ナノテクノロジーでがんに挑む(5)脳腫瘍治療のためのDDS活用<後編>
片岡一則(ナノ医療イノベーションセンター センター長/東京大学名誉教授)
脳腫瘍治療のためドラッグデリバリーシステム(DDS)を用いた3つ目のアプローチはサイズチューニング、言い換えると「キャリアシステムの正確なナノサイズ制御」である。抗体サイズの「ユニットPIC」の開発によって、核酸医薬が抱える課題を解決できるという。マウスでの実験で効果を得ており、現在はヒトの臨床試験へと進んでいる。(全8話中第5話)
時間:10分09秒
収録日:2021年5月12日
追加日:2022年3月26日
≪全文≫

●キャリアシステムの正確なナノサイズ制御


 3番目の話です。ここで医薬品開発の歴史を眺めてみたいと思います。

 私たちが普段使っている薬は、いわゆる低分子の薬です。歴史上、人類が初めて行った有機合成は尿素です。そして、人類初の医薬品合成はアスピリンです。なんとその開発にほぼ70年かかっています。それから、今のオプジーボもそうですが、抗体医薬はモノクローナルの作成技術ができてから、世界初の抗体医薬ができるまで23年ほどかかっています。核酸医薬もいろいろなものがありますが、RNA干渉の発見から世界初のsiRNA医薬まで20年ほどかかっています。つまり、薬の開発にはすごく時間がかかるのです。

 ただ、ここで注目していただきたいのは、核酸医薬の分野はこれからどんどん伸びていくと予想されていることです。

 どうしてかというと、今はヒトのゲノムが全部読めるからです。そのうちタンパク質に翻訳されている部分を「エクソン」といいますが、これは全体のわずか1.5パーセントです。今私たちが使っている薬は全部このタンパク質を標的にしています。要するに、この全部のゲノム情報のわずか1.5パーセントのところを対象に薬が開発されているのです。

 ところが、このエクソン以外の領域にいろんな病気の原因があることが最近、明らかになってきました。これはタンパク質に翻訳されないので、低分子の薬ではなかなかこういうものをターゲットにはできません。ここは核酸ということで、やはり核酸に結合する核酸医薬が有望だろうとなります。

 ただ、核酸医薬にはいろんな課題があります。標的組織の制約が非常に大きいのです。特に血液・脳腫瘍関門を裸で通ることはほとんどできません。そこで、これを解決するのにドラッグデリバリーシステム(DDS)が必要なのです。

 一つは、今お話をしたリガンドを介したトランスサイトーシスです。実はもう一つあり、それはサイズチューニングです。

 言い換えると、キャリアシステムの正確なサイズ制御です。

 (スライドにあるように)この隙間はなかなか通れませんが、それでもサイ...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「健康と医療」でまず見るべき講義シリーズ
「最高の睡眠」へ~知っておくべき睡眠常識(1)健康な睡眠のための方法
どうすれば「最高の睡眠」は実現するか…健康な睡眠とは?
西野精治
熟睡できる環境・習慣とは(1)熟睡のための条件と認知行動療法
熟睡のために――認知行動療法とポジティブ・ルーティーン
西野精治
アンチエイジングのための「5:2ダイエット」
「5:2ダイエット」活性酸素を減らしてアンチエイジング
堀江重郎
和食の深い秘密~なぜ身体に良いのか(1)和食の特徴と日本人
日本人は地球上最もベジタリアンだった?和食の7つの基本
小泉武夫
飽食時代の「選食」のススメ(1)選食の提唱と「食の多様性」
20億人以上が肥満…飽食の時代に大事な「選食力」3カ条
堀江重郎
オートファジー入門~細胞内のリサイクル~(1)細胞と細胞内の入れ替え
ノーベル賞受賞「オートファジー」とは?その仕組みに迫る
水島昇

人気の講義ランキングTOP10
習近平―その政治の「核心」とは何か?(1)習近平政権の特徴
習近平への権力集中…習近平思想と中国の夢と強国強軍
小原雅博
歴史の探り方、活かし方(4)史実・史料分析:秀吉と秀次編〈上〉
史料読解法…豊臣秀吉による秀次粛清の本当の理由とは?
中村彰彦
「宇宙の創生」の仕組みと宇宙物理学の歴史(1)宇宙の階層構造
「宇宙の階層構造」誕生の謎に迫るのが宇宙物理学のテーマ
岡朋治
内側から見たアメリカと日本(4)アメリカ労働史とトランプ支持層
ギャングの代わりに弁護士!? 壮絶なアメリカ労働史の変遷
島田晴雄
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(4)全てをつなぐ密教の世界観
密教の世界観は全宇宙を分割せずに「つないでいく」
鎌田東二
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(2)言葉を理解するプロセスとスキーマ
なぜ子どもは教えられても理解できないのか?鍵はスキーマ
今井むつみ
編集部ラジオ2025(28)内側から見た日米社会の実状とは
島田晴雄先生の体験談から浮かびあがるアメリカと日本
テンミニッツ・アカデミー編集部
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫
徳と仏教の人生論(3)無分別知と全人格的思惟
般若とは何か――秋月龍珉からの命題を探求し到達した境地
田口佳史