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10分でわかる「ワクチンの歴史としくみ」

感染症予防・がん治療に使えるmRNAワクチン(3)感染症とワクチン開発

内田智士
東京科学大学 難治疾患研究所 教授 /京都府立医科大学 大学院医学研究科 特任教授
概要・テキスト
そもそもなぜワクチンによって感染症が予防できるのか。その基本的な作用と、天然痘に始まるワクチンの歴史を概観していく。現在ではウイルスを使わない新しいタイプのワクチンが開発されており、その一つであるmRNAワクチンは新型コロナウイルス対策にも使用されている。これまでの研究の蓄積があるからこそ、短期間でのワクチン開発が実現したのである。(全5話中第3話)
時間:13:06
収録日:2021/04/13
追加日:2021/06/25
≪全文≫

●ワクチンとは何か


内田 ここからは、新型コロナウイルスで脚光を浴びたmRNAワクチンを感染症予防に使う取り組みについて、主に新型コロナウイルスを例に紹介します。

 まずはそもそもワクチンとは何かという話です。皆さんご存じのように、新型コロナウイルスに1回感染すると、身体の中では抗体ができたり、ウイルスを攻撃する免疫細胞ができます。こういった免疫があることによって、新型コロナウイルスにかかりにくくなります。ワクチンが何をするかというと、新型コロナウイルスにかからずして、このような免疫をつけることができるというのがその機能です。


●ワクチンの歴史


内田 ワクチンの歴史を遡ってみると、天然痘に対する種痘が初めてのワクチンといわれています。天然痘は実は致死率が30パーセントで、今よりずっと人口が少なかった18世紀のヨーロッパで、なんと100年間に6000万人が死亡した大変な病気でした。

 実は経験的に、一度かかって治った人が再感染しないことが知られていました。そこで、弱く感染させてやれば、免疫だけがつくのではないかということがすでにこの時代から考えられていて、実は天然痘の患者さんから採った水疱の液を手の傷にすり込む方法で、ワクチンの試みが行われていました。実はこの方法は致死率が1割と、大変危険な方法でした。

 一方で、牛痘という、牛から人に感染して、天然痘と同様の症状を起こす病気がありました。ただ症状自体は軽くて、1~2週間で治る病気であることも知られていました。農村部の経験則から、この牛痘にかかった人が天然痘にならないということも分かっていました。

 それに対してジェンナーが思いついたのが、この牛痘の病巣から採った液をワクチンとして使ったら、より安全な方法で免疫をつけられるのではないかということです。当時8歳のフィリップスくんに対して、この牛痘の液を手の傷に接種して、その後その子に天然痘を何度も接種したのです。この子は結局それでも天然痘にはならず、これが初めてのワクチンとされています。

 これはその後、世界中に広まって、1980年にWHOが天然痘の根絶宣言をするに至っています。

 ただ、このような天然痘の場合は、牛痘という似て非なるウイルスがたまたまあったから良かったですが、ほとん...
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