知られざる「脳」の仕組み~脳研究の最前線
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
長年の謎に光明…「脳の老廃物」排出の仕組みと睡眠の役割
知られざる「脳」の仕組み~脳研究の最前線(7)老廃物排出と睡眠の関係
健康と医療
毛内拡(お茶の水女子大学 基幹研究院自然科学系 助教)
脳の老廃物として有名な「アミロイドβ」というタンパク質がある。それが異常に蓄積することがアルツハイマー病の原因になるのではないかといわれているのだが、そうした脳の老廃物をどうやって排出しているのかということが長年の謎だった。近年、その謎を解く鍵として注目されているのが「脳脊髄液」と「アクアポリン4」である。そこでは睡眠が大きな役割を担っていた。いったいどういうことなのか。その仕組みと役割について解説する。(全8話中第7話)
時間:7分25秒
収録日:2022年10月21日
追加日:2023年8月14日
≪全文≫

●老廃物を排出する脳脊髄液は睡眠中に多く流れる


毛内 さて、「脳は外部環境と隔絶している」という話をしましたが、実は体には「リンパシステム」という、体の細胞で発生した老廃物を洗い流すシステムがあります。

 ところが、昔から脳にはリンパ管がないということが知られています。脳も細胞からできていますので、脳の老廃物をどうやって排出しているのかというのが長年の謎でした。

 脳で発生する老廃物として有名なのは、例えば、「アミロイドβ」というタンパク質が知られており、これが異常に蓄積してしまうと、アルツハイマー病の原因になるのではないかと考えられています。このような老廃物はどうやって排出しているのでしょうか。

 実はこの働きを担っているのは脳脊髄液であるということが最近、提案されています。 脳脊髄液は脳の中で作られている無色透明の液体ですが、これが脳の中に浸入して、脳で発生した老廃物を洗い流している、リンパのような働きをしているという提案があります。これは、「脳リンパ排泄機構」という名前がつけられています。

 脳脊髄液は常に流れて入れ替わっているという話をしましたが、実は常に同じ速さで流れているわけではなく、寝ているときと起きているときでは流れ方が変化しているということが知られています。特に、睡眠中にたくさん流れることが知られており、睡眠の意義というのはたくさんありますけれども、睡眠中に脳の老廃物を排出しているのではないかというのが最近、注目されていることです。


●「アクアポリン4」の働きが脳脊髄液の流れを左右する


 この脳の水の流れには、「アクアポリン」と呼ばれるタンパク質が重要な働きをしていることが提唱されています。このアクアポリンの中でも、「アクアポリン4」と呼ばれるものが脳で発現しており、アクアポリン4は、グリア細胞の一種であるアストロサイトの血管を取り巻いている突起のところに集まっています。この集まっている状態で、脳の中で水の流れを生み出すといわれています。事実、アクアポリン4のタンパク質を生まれつき持たないマウスでは、脳の中の水の流れ方が変化することを明らかにしました。


スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「健康と医療」でまず見るべき講義シリーズ
新しいアンチエイジングへの挑戦(1)患者と伴走する医者の存在
だべったら生存期間が倍に…ストレスマネジメントの重要性
堀江重郎
今どきの若者たちのからだ、心、社会(1)ライフヒストリーからみた思春期
なぜ思春期は大事なのか?コホート研究10年の成果に迫る
長谷川眞理子
和食の深い秘密~なぜ身体に良いのか(1)和食の特徴と日本人
日本人は地球上最もベジタリアンだった?和食の7つの基本
小泉武夫
健診結果から考える健康管理・新5カ条(1)血管をより長く守ることが重要な時代
健康診断の結果が悪い人が絶対にやってはいけないこと
野口緑
感染症予防・がん治療に使えるmRNAワクチン(1)mRNAとは何か
コロナだけでなく個別化医療の可能性を秘めたmRNAワクチン
内田智士
認知症とは何か(1)疾患の種類と対応
多くの認知症の原因は「脳のゴミ」の蓄積
遠藤英俊

人気の講義ランキングTOP10
ヒトは共同保育~生物学から考える子育て(1)動物の配偶と子育てシステム
ヒトは共同保育の動物――生物学からみた子育ての基礎知識
長谷川眞理子
未来を知るための宇宙開発の歴史(7)米ソとは異なる日本の宇宙開発
日本の弾道ミサイル開発禁止!?米ソとは異なる宇宙開拓の道
川口淳一郎
「集権と分権」から考える日本の核心(3)中央集権と六国史の時代の終焉
天平期の天然痘で国民の3割が死亡?…大仏と崩れる律令制
片山杜秀
数学と音楽の不思議な関係(1)だれもがみんな数学者で音楽家
世界は数学と音楽でできている…歴史が物語る密接な関係
中島さち子
モンゴル帝国の世界史(2)チンギス・ハーンのカリスマ性
自由な多民族をモンゴルに統一したチンギス・ハーンの魅力
宮脇淳子
DEIの重要性と企業経営(4)人口統計的DEIと女性活躍推進の効果
日本的雇用慣行の課題…女性比率を高めても業績向上は難しい
山本勲
睡眠から考える健康リスクと社会的時差ボケ(5)シフトワークと健康問題
発がんリスク、心身の不調…シフトワークの悪影響に迫る
西多昌規
「アカデメイア」から考える学びの意義(1)学びを巡る3つの危機
「学びの危機」こそが現代社会と次世代への大きな危機
納富信留
知識創造戦略論~暗黙知から形式知へ(1)イノベーションと価値創造
価値創造において重要なのは未来から現在を見るという視点
遠山亮子
トランプ政権と「一寸先は闇」の国際秩序(3)これからの世界と底線思考の重要性
同盟国よもっと働け…急激に進んでいる「負担のシフト」
佐橋亮