知られざる「脳」の仕組み~脳研究の最前線
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人間の脳の中はホムンクルス…再発見の「機能局在」とは
知られざる「脳」の仕組み~脳研究の最前線(2)脳科学研究の歴史
毛内拡(お茶の水女子大学 基幹研究院自然科学系 助教)
古代エジプト時代から行われてきた脳研究だが、長い間、脳は単に血液を冷やす場所だと考えられて重要視されない時代が続く。しかし19世紀、フィニアス・ゲージの事故によって脳への認識が一変する。脳はその場所によって働きが異なる、いわゆる「機能局在」であることが判明するのだが、その後、「光遺伝学」と呼ばれる分野において脳研究に革命的な進展をもたらす技術が誕生する。今回は脳研究の歴史をその端緒から振り返り、最新の研究動向を紹介する。(全8話中第2話)
時間:11分19秒
収録日:2022年10月21日
追加日:2023年7月10日
≪全文≫

●脳は大事だが、血液を冷やす場所だと長い間考えられてきた


 まず、脳の詳しい働きを見ていく前に、脳研究の歴史をふり返っていきたいと思います。脳研究というのは大きく分けて三つの柱で支えられていると私は考えていまして、一つ目は脳障害の記述、二つ目は電気的な測定法です。三つ目が顕微鏡技術になります。これらを一つずつ見ていきたいと思います。

 まず、私は脳を「ブラックボックス」と呼んでいます。ブラックボックスというのは、要は、中に何が入っているかよく分からない箱のことです。これに対して、人類はどういうアプローチをとってきたかというと、何か入力して、その出力を見るということをやってきました。

 例えば、皆さんも手元に何が入っているかよく分からない箱があったら、とりあえず持ち上げてみて、振ってみて、その音を聞いたりしますよね。チャリンチャリンという音がしたら、そこには何か金属が入っているのではないかというように類推していくわけですけれども、実はそれは、そのブラックボックスの問題を解いていることになります。

 脳も実は、頭蓋骨を開けて中を見てみても、そこには何があるかよく分からないので、とりあえず、脳に何か入力をして、その出力を調べるということがされてきました。

 ここでいう入力とは、例えば、音が聞こえるとか目が見えるとかそういうことなのですが、一番よくやられてきたのは脳障害です。実は古代エジプト時代から、脳障害がある人の行動がどのように変化するかというようなことが観察されています。特に戦争で負傷した兵士がどのように行動を変化させるか、精神がどのように病んでいくかというようなことを詳細に記録した記述が残っています。これは、「エドウィン・スミス・パピルス」と呼ばれていまして、当時から脳は大事だということは知られていたようです。

 ところが、時代は進んでギリシャ時代になると、「こころの座」というのはどこにあるかというと、心臓とか、それから子宮とか、そういう臓器にあるのではないかと考えられるようになりました。確かに脳は解剖してみても、何をしている臓器かというのは全然分からないわけです。

 例えば、心臓だったら動いているので、これはポン...

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