知られざる「脳」の仕組み~脳研究の最前線
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
脳の「やる気スイッチ」ドーパミンが大きな社会問題!?
知られざる「脳」の仕組み~脳研究の最前線(6)4つの情報伝達方式と広範囲調節系
毛内拡(お茶の水女子大学 基幹研究院自然科学系 助教)
脳の中には「一対一」だけではなく、「一対多」や「多対多」といった情報伝達の仕組みもある。大きく分けると、4つの情報伝達の方式があるという。その中でも特に注目したいのが「広範囲調節系」という伝達方式で、私たちの日々の気分や生理の制御に大きく関わっている。そこで今回は、広範囲調節系について、そこで働く化学物質のうち重要な役割を担うセロトニンやドーパミンの詳細とともに解説する。(全8話中第6話)
時間:9分18秒
収録日:2022年10月21日
追加日:2023年8月7日
≪全文≫

●脳の中には4つの情報伝達の方式がある


 これまで、ニューロンがシナプス伝達によって情報伝達している仕組みについて学んできましたが、これは、例えていうと、電話線のように「一対一のコミュニケーション」ということができます。ところが、脳の中には「一対一」だけではなくて、「一対多」や「多対多」のような情報伝達の仕組みもあります。

 大きく分けると、4つの情報伝達の方式があるといわれています。まず1つ目は、(a)のように、シナプスによって限定された標的ニューロンが活性化されることによって、信号を伝える方式です。この方式では、信号の持続は短期間である必要があります。次に、(b)の図に示すように、一つの細胞が血液中に特定の物質を放出することによって、下流にある多くの標的細胞を活性化する方法もあります。これは、例えばホルモンを使ったやり方があります。

 次に、(c)のように一つの細胞の活性化が多くの器官や臓器を同時多発的に活性化させる仕組みも知られており、これは自律神経系などが取っている方式です。最後に、(d)のように、一つの細胞が特定の標的を持たずに広い範囲を調節することができる広範囲調節系という仕組みがあります。


●広範囲調節系は脳のモードチェンジを司る


 ここでは、広範囲調節系について詳細に説明していきます。広範囲調節系は、ニューロンがシナプスを介した速い伝達とは異なり、ゆっくりとしたアナログ的な調節を行うといわれています。脳のモードチェンジを担っているといわれており、例えば、気分の調節であったり、今までうとうとしていたのが突然覚醒に転じるなどの状態変化を司っています。ここで働く化学物質は、神経伝達物質とは区別して、「神経修飾物質」と呼ばれています。

 神経修飾物質は、化学物質が細胞の外側に拡散することで、シナプス間隙に限定されないで持続時間が長く作用することが特徴的です。このような広範囲調節系のニューロン群は、他のニューロンとは区別して、「調節系ニューロン」と呼ばれていまして、脳の中心部や脳幹に集まって存在しています。これらのニューロンは、ニューロン一つで...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「健康と医療」でまず見るべき講義シリーズ
熟睡できる環境・習慣とは(1)熟睡のための条件と認知行動療法
熟睡のために――認知行動療法とポジティブ・ルーティーン
西野精治
和食の深い秘密~なぜ身体に良いのか(1)和食の特徴と日本人
日本人は地球上最もベジタリアンだった?和食の7つの基本
小泉武夫
ウイルスの話~その本質と特性(1)生物なのか、そうではないのか
きわめて特異的な「ウイルスと宿主の関係」
長谷川眞理子
認知症とは何か(1)疾患の種類と対応
多くの認知症の原因は「脳のゴミ」の蓄積
遠藤英俊
オートファジー入門~細胞内のリサイクル~(1)細胞と細胞内の入れ替え
ノーベル賞受賞「オートファジー」とは?その仕組みに迫る
水島昇
「最高の睡眠」へ~知っておくべき睡眠常識(1)健康な睡眠のための方法
どうすれば「最高の睡眠」は実現するか…健康な睡眠とは?
西野精治

人気の講義ランキングTOP10
内側から見たアメリカと日本(6)日本企業の敗因は二つのオウンゴール
日本企業が世界のビジネスに乗り遅れた要因はオウンゴール
島田晴雄
歴史の探り方、活かし方(1)歴史小説と史料探索の基本
日本は素晴らしい歴史史料の宝庫…よい史料の見つけ方とは
中村彰彦
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(5)『秘蔵宝鑰』が示す非二元論的世界
雄大で雄渾な生命の全体像…その中で点滅する個々の生命
鎌田東二
習近平―その政治の「核心」とは何か?(1)習近平政権の特徴
習近平への権力集中…習近平思想と中国の夢と強国強軍
小原雅博
熟睡できる環境・習慣とは(1)熟睡のための条件と認知行動療法
熟睡のために――認知行動療法とポジティブ・ルーティーン
西野精治
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(7)不動産暴落と企業倒産の内実
不動産暴落、大企業倒産危機…中国経済の苦境の実態とは?
垂秀夫
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
古代中国の「日常史」(1)日常史研究とは何か
『古代中国の24時間』英雄だけでなく無名の民に注目!
柿沼陽平
戦国武将の経済学(1)織田信長の経済政策
織田信長の経済政策…楽市楽座だけではない資金源とは?
小和田哲男