知られざる「脳」の仕組み~脳研究の最前線
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脳の「やる気スイッチ」ドーパミンが大きな社会問題!?
知られざる「脳」の仕組み~脳研究の最前線(6)4つの情報伝達方式と広範囲調節系
毛内拡(お茶の水女子大学 基幹研究院自然科学系 助教)
脳の中には「一対一」だけではなく、「一対多」や「多対多」といった情報伝達の仕組みもある。大きく分けると、4つの情報伝達の方式があるという。その中でも特に注目したいのが「広範囲調節系」という伝達方式で、私たちの日々の気分や生理の制御に大きく関わっている。そこで今回は、広範囲調節系について、そこで働く化学物質のうち重要な役割を担うセロトニンやドーパミンの詳細とともに解説する。(全8話中第6話)
時間:9分18秒
収録日:2022年10月21日
追加日:2023年8月7日
≪全文≫

●脳の中には4つの情報伝達の方式がある


 これまで、ニューロンがシナプス伝達によって情報伝達している仕組みについて学んできましたが、これは、例えていうと、電話線のように「一対一のコミュニケーション」ということができます。ところが、脳の中には「一対一」だけではなくて、「一対多」や「多対多」のような情報伝達の仕組みもあります。

 大きく分けると、4つの情報伝達の方式があるといわれています。まず1つ目は、(a)のように、シナプスによって限定された標的ニューロンが活性化されることによって、信号を伝える方式です。この方式では、信号の持続は短期間である必要があります。次に、(b)の図に示すように、一つの細胞が血液中に特定の物質を放出することによって、下流にある多くの標的細胞を活性化する方法もあります。これは、例えばホルモンを使ったやり方があります。

 次に、(c)のように一つの細胞の活性化が多くの器官や臓器を同時多発的に活性化させる仕組みも知られており、これは自律神経系などが取っている方式です。最後に、(d)のように、一つの細胞が特定の標的を持たずに広い範囲を調節することができる広範囲調節系という仕組みがあります。


●広範囲調節系は脳のモードチェンジを司る


 ここでは、広範囲調節系について詳細に説明していきます。広範囲調節系は、ニューロンがシナプスを介した速い伝達とは異なり、ゆっくりとしたアナログ的な調節を行うといわれています。脳のモードチェンジを担っているといわれており、例えば、気分の調節であったり、今までうとうとしていたのが突然覚醒に転じるなどの状態変化を司っています。ここで働く化学物質は、神経伝達物質とは区別して、「神経修飾物質」と呼ばれています。

 神経修飾物質は、化学物質が細胞の外側に拡散することで、シナプス間隙に限定されないで持続時間が長く作用することが特徴的です。このような広範囲調節系のニューロン群は、他のニューロンとは区別して、「調節系ニューロン」と呼ばれていまして、脳の中心部や脳幹に集まって存在しています。これらのニューロンは、ニューロン一つで...

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