●脳も神経の一部で、中枢神経系に分類される
では次に、脊椎動物の神経系の構造と機能について見ていきましょう。
皆さんもよく、脳神経外科とか脳神経内科というように、「脳と神経って何が違うのだろう」と疑問に思うこともあると思いますが、実は脳も神経の一部なのです。これらを統合して「神経系」といいます。
神経系は大きく二つに分けられて、末梢神経系と中枢神経系に分けられます。脳はこの中枢神経系に分離されます。一方、末梢神経は、例えば、神経痛とか、歯の神経を抜くとかというときの神経のことを指します。末梢神経系はさらに、体性神経系と自律神経系に分けられます。体性神経系は、さらに感覚神経と運動神経に分類されます。感覚神経は、例えば、暑いとか、痛いという情報を脳に運ぶ神経で、運動神経は、脳からの指令を筋肉に伝えて運動を引き起こすための神経です。
もう一つ、自律神経系は、交感神経系と副交感神経系に分けられますが、これらは、臓器や器官に指令を与えるための神経です。交感神経系は興奮しているときによく働いて、リラックスしているときには副交感神経が働くといわれています。
●ヒトの脳は大脳皮質が非常に大きいのが特徴
この図はいろいろな脊椎動物の脳を集めてきた画像ですが、どれがどれだか分かるでしょうか。
まず、右下に見えるのはヒトの脳で、左上にある小さいのがマウスの脳ですね。大きいのは、ゾウとかイルカの脳といわれています。これらをパッと見て、いろいろな動物で似ているところと違うところがあるのですが、何か気づくことはあるでしょうか。
まず、右脳と左脳があるということは気づくと思います。それから、「大脳」と呼ばれる部分と「小脳」と呼ばれる部分があります。この脳(画像)の後ろ側についているのが小脳です。ヒトの脳には小脳がないではないかと思われるかもしれませんが、ヒトの場合は、大脳が非常に発達しているために、小脳が下に隠れています。ちゃんと横から見ると、ヒトにも小脳があることが分かると思います。
一方(違うところとしては)、大脳の前側についているのは、「嗅球」と呼ばれる匂いを処理する部分です。他の動物では見えていますが、もちろんヒトにもちゃんと嗅球があります。なので、このように、ヒトは大脳が非常に発達しているということが、(他の動物と)違うところの大きな特徴になります。
もちろん(脳の)大きさも全然違うというのは、お分かりいただけるかと思います。
それから、(スライド上部の)左側にあるのはマウスの脳で、右側にあるのはヒトの脳ですが、マウスの脳とヒトの脳を比べてパッと気づくのは、脳にしわがあるかないかです。巷では「しわの多いほうが頭がいい」などといいますが、これは実は誤解だといわれています。ヒトの大脳は広げると大体新聞紙1枚程度といわれていますが、これをこの頭蓋骨の中に入れるためにはグシャッとしなければいけないので、その過程でしわができるといってもいいでしょう。動物の中では、例えば、イタチの仲間であるフェレットはしわがある脳を持っていますし、霊長類の仲間でも、コモンマーモセットと呼ばれる動物は、霊長類であるにもかかわらず、脳にしわがないと報告されています。
なので、別に脳にしわがあるとかないとかが頭の良さを決めているわけではないというのは、覚えておいてほしいと思います。ただ、ヒトの場合は、やはり体重に対して大脳皮質が非常に発達しており、非常に大きいというのが特徴になっています。
次に、脳を横から見てみると、脳の構造というのは大きく分けて、大脳と小脳、それから脳幹という部分からなっていることが分かります。
大脳には「大脳皮質」という脳の表面の部分と、「辺縁系」と呼ばれる、いわゆる古い脳という部分があります。さらに、運動機能などを支えている「基底核」と呼ばれる部分があります。
小脳は小さい脳という意味ではなくて、小脳は小脳で別の働きを持っており、特に、運動学習に重要な働きをしていると考えられています。また、脳の幹と書く「脳幹」部分ですが、生存に必須な働きをしており、呼吸とか心拍数の調節とかですが、ここに障害を負ってしまうと生きていけないといわれています。ヒトの場合は、「大脳新皮質」といったりすることもありますが、特に新皮質という部分があるわけではなくて、大脳皮質と同じ部分です。
●脳は外部環境と隔絶し、厳重に保護されている
脳という臓器が面白いのは、外部環境と隔絶していることです。外部...