生命科学の現状と課題~生物研究と再生医療
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再生医療の基盤…アクチビンは中胚葉誘導物質の重要な候補
生命科学の現状と課題~生物研究と再生医療(3)発生の研究とアクチビン
浅島誠(東京大学名誉教授/帝京大学 先端総合研究機構 機構長)
浅島誠氏は、「アクチビン」というタンパク質が発生過程の誘導因子であると突き止め、未分化細胞からのさまざまな器官や臓器の形成に成功した。これは、現在の再生医療の基盤となっている。今回は、発生における臓器や器官の形成に関するメカニズムについて解説する。(全6話中第3話)
時間:9分31秒
収録日:2018年7月30日
追加日:2019年1月13日
≪全文≫

●発生による形作りは中胚葉誘導と神経誘導によって行われる


 発生と再生科学について、1つの例を出します。日本語でいえば、私たちはよく、「氏か育ちか」ということを言います。発生に関しても、卵の中などにもともと情報が入っていて、発生とはただ単にそれが出てくるだけだという考え方がありました。形というものはそのようにしてできる、もともと決まっている、そういう考え方です。

 ところが、1924年にドイツのハンス・シュペーマンとヒルデ・マンゴールドが、「形というものは最初から決まっているのではなく、発生過程における原腸胚の頃の原口上唇部の一部に形作りのセンターができて、その誘導作用によって形というものができてくる」ということを証明しました。そうなると、世界中でそうした形を作るような誘導物質を探そうとする研究が行われました。ちなみに1935年に、シュペーマンはこの研究成果によって、ノーベル医学・生理学賞を受賞しています。

 ここで、形とは一体どういうことかということを説明します。私たちの体は、頭と足の軸つまり「頭足の軸」と、背中と腹側の軸つまり「背腹軸」、それから「左右軸」という、3つの軸による三次元でできています。そうした中、丸い卵から形ができるまでには、2つの因子が必要です。

 1つ目は「中胚葉誘導」で、筋肉や脊索など、先ほど述べたシュペーマンたちが唱えたオーガナイザーの部分です。つまり、形作りのセンターができることが必要だということです。2つ目は「神経誘導」というもので、オーガナイザーの働きかけを感受していくことによって中枢神経を作っていくことです。つまり、中胚葉誘導と神経誘導を通して、私たちの形作りがなされていくわけです。


●誘導因子を探す研究の末、アクチビンにたどり着く


 そして、そういう現象が確認されたことで、その本体はどういう現象であるかという、誘導因に関する研究が世界中で一斉に始まりました。私自身も誘導因子を探すことに興味があったのですが、そうした研究は実は、世界中で50年間なされたものの、誰もうまくいきませんでした。私は学位を取った後、その研究をやりたくて日本中を探したのですが、誘導因子の研究をしている人は日本にはいなくなっており、指導教官からもやめた方がいいと言...

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