生命科学の現状と課題~生物研究と再生医療
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
今後の生命科学と次世代へのメッセージ
生命科学の現状と課題~生物研究と再生医療(5)自然や生き物から学ぶ
浅島誠(東京大学名誉教授/帝京大学 先端総合研究機構 特任教授)
多くの生物はヒトよりも長い歴史を持ち、ヒトの限界を超えた能力を持つ。人為的なものがさまざまな問題を引き起こしている現状では、自然や生物から学ぶことが重要である。今回は、自然や生物の歴史と多様性について語る。(全6話中第5話)
時間:6分50秒
収録日:2018年7月30日
追加日:2019年1月27日
≪全文≫

●人間にはないさまざまな能力を生物は持っている


 今後の生命科学と次世代へのメッセージについてお話しします。

 ヒトは地球上では新種ですから、他の生物から学ぶことが必要であると、私は思っています。つまり、ヒトはもっと、自然や生き物の前で謙虚になるべきだということです。

 現在、環境汚染や資源の枯渇化、地球温暖化など、いろいろな変化が地球上に起こっています。地球上には1,000万種近くの生物がいるといわれていますが、今は生物が著しく減少しています。他の生物が減っているということは、生物としてのシステムが低下しているわけです。そのことは、われわれヒトも含めて、生物が危機的な状態にあることを意味します。そこで今、必要なことは、生物が持っているいろいろな適応能力に学ぶことだと思います。

 1つ例を挙げると、われわれは現在、7,000メートル~8,000メートルの深海まで、潜水艦を使って潜ることができます。それは、最新の英知によるものです。一方、魚は7,000メートル~8,000メートルの深海でも悠々と泳いでいます。その泳ぎ方を見れば、現在われわれが知っている知識では想像できないような能力を、彼らが持っていることが分かります。

 また、よくいわれるように、コウモリは、洞窟に入る前にキーンと鳴くことによって、その反射音で自分の耳の中に立体音を作って、洞穴の200メートルぐらい先までの状況を読み取ることができます。これはつまり、聴覚を使って洞窟の中を見ているわけです。このように生物には、われわれにはない、さまざまな能力があります。

 われわれが見ている可視光の世界とは全く違う、紫外線の世界や遠赤外線の世界を見ている生物もいます。そういうものを知ろうとしたときに、われわれヒトは本当に限られた範囲で生きているということを、もっと知るべきだと私は思っています。


●生物が持つ歴史と多様性から学ぶことが重要である


 さらに、人為的なものの歴史の短さを感じており、その意味でももっと他の生物の多様性を学ぶべきだと、私は思っています。物理学における原子力の発見は新しいエネルギーをもたらしましたが、例えば、東日本大震災の時、原発事故による放射能漏れの影響で非常に大きな被害を出しました。つまり、人間の技術を人間がコントロールできないところまで来ているわけで...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「科学と技術」でまず見るべき講義シリーズ
ChatGPT~AIと人間の未来(1)ChatGPTは何ができて、何ができないか
ChatGPTは考えてない?…「AIの回答」の本質とは
西垣通
ブラックホールとは何か(1)私たちが住む銀河系
太陽系は銀河系の中で塵のように小さな存在でしかない
岡朋治
「宇宙の創生」の仕組みと宇宙物理学の歴史(1)宇宙の階層構造
「宇宙の階層構造」誕生の謎に迫るのが宇宙物理学のテーマ
岡朋治
性はなぜあるのか~進化生物学から見たLGBT(1)有性生殖と無性生殖
なぜ雄と雌の2つの性別があるのか…「性」の謎とLGBT
長谷川眞理子
生成AI・大規模言語モデルのしくみ(1)生成AIとは何か
10年で劇的な進歩を遂げた生成AIと日本の開発事情
岡野原大輔
断熱から考える一年中快適で健康な住環境(1)日本の住宅の実態と問題点
なぜ日本は夏暑く、冬寒いのか…断熱から考える住宅の問題
前真之

人気の講義ランキングTOP10
折口信夫が語った日本文化の核心(1)「まれびと」と日本の「おもてなし」
「まれびと」とは何か?折口信夫が考えた日本文化の根源
上野誠
編集部ラジオ2025(33)2025年を振り返る
2025年のテンミニッツ・アカデミーを振り返る
テンミニッツ・アカデミー編集部
過激化した米国~MAGA内戦と民主党の逆襲(3)DSA化した民主党と今後の展望
DSAの民主党乗っ取り工作…世代交代で大躍進の可能性
東秀敏
逆境に対峙する哲学(1)日常性が「破れ」て思考が始まる
逆境にどう対峙するか…西洋哲学×東洋哲学で問う知的ライブ
津崎良典
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(4)信長の直臣、秀吉の与力としての秀長
最初は信長の直臣として活躍――武闘派・秀長の前半生は?
黒田基樹
平和の追求~哲学者たちの構想(1)強力な世界政府?ホッブズの思想
平和の実現を哲学的に追求する…どんな平和でもいいのか?
川出良枝
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
生成AI「Round 2」への向き合い方(1)生成AI導入の現在地
生成AIの利活用に格差…世界の導入事情と日本の現状
渡辺宣彦
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
世界哲学のすすめ(1)世界哲学プロジェクト
日本発!危機の時代に始動する世界哲学プロジェクトの意義
納富信留