生命科学の現状と課題~生物研究と再生医療
この講義は登録不要無料視聴できます!
▶ 無料視聴する
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
カエルとヒトは同じ共通原理を持っている
生命科学の現状と課題~生物研究と再生医療(2)カエルとヒトの共通原理
浅島誠(東京大学名誉教授/帝京大学 先端総合研究機構 特任教授)
「カエルとヒトは共通の原理で動いている」と浅島誠氏は語る。浅島氏は生まれ育った佐渡の自然に触れる中で、カエルの卵の発生に興味を持った。カエルに起こることは人間にも起こり得るということで、カエルの研究が大きな意味を持つようになったという。(全6話中第2話)
時間:7分08秒
収録日:2018年7月30日
追加日:2019年1月6日
≪全文≫

●佐渡の自然に触れたことが研究の原点となった


 次に、再生科学というものを、私の研究を通して考えたいと思います。私がこのテーマに興味を持ったのは、最初に再生科学について知りたいと思ったからではありません。

 私は、佐渡という田舎で生まれ育ちました。そこは自然が非常に豊かなところで、生き物など自然がごく身近にありました。春になれば、カエルが池に来て卵を生み、その卵がうまく孵化していくわけです。それを見た時、どうしてこんなにうまく卵が親になっていくのか、あるいはオタマジャクシになっていくのか、非常に不思議に思ったのです。

 あるいは、佐渡にはトキという鳥がいます。トキは、日本からだんだん減っていき、最後には石川県能登半島と佐渡だけになりました。そして、トキが佐渡からいなくなってしまったら、こんなに美しい鳥が世界からいなくなってしまうのかと感じました。そして、トキを救いたいという思いがありました。当時は、今のように中国にトキがいることは分かりませんでしたので、その時、トキが何羽いれば種(species)として保存することができるのか、あるいは種として残るためにはどのくらいの数が必要になるのか、といったことを考えていたのです。

 このように、私は佐渡で過ごしたわけですが、興味があったのは卵がどのように親になるのかということです。卵から親への形作りという点で見た場合、マウスやヒトの研究に興味を持つ人も多いと思いますが、私はカエルの卵から親への形作りについて興味を持ったのです。


●カエルとヒトは同じ共通原理を持っている


 よく調べてみると、ヒトやマウスも、イモリやカエルも、基本的には同じ共通原理を持っています。もともとは1個の卵から、オタマジャクシになったり、胎児になったりします。胎児とオタマジャクシを比べると、形は違うかもしれませんが、横に引っ張ってみるとほとんど同じ形になってしまいます。さらには、成体になると、カエルにあってヒトにないものはほとんどありません。逆に、ヒトにあってカエルにないものは、例えば乳腺などです。ですから、人間を「哺乳動物(mammal)」と呼ぶのは、まさに乳腺などを持っているからです。

 この観点からカエルを使った研究を世界的に見たとき、それは歴史的に非常に重要なものだということが分かりました。...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「科学と技術」でまず見るべき講義シリーズ
五島列島沖合の海没処分潜水艦群調査(1)目的と潜水艦史
海底に突き刺さる旧日本海軍の潜水艦「伊58」を特定!
浦環
断熱から考える一年中快適で健康な住環境(1)日本の住宅の実態と問題点
なぜ日本は夏暑く、冬寒いのか…断熱から考える住宅の問題
前真之
都市木造の可能性~木造ビルへの挑戦(1)木造建築の歴史と現在
伝統木造建築はいま都市で必要な建物ではない
腰原幹雄
巨大地震予知の現在地と私たちにできること(1)地震予知研究と前兆すべり
地震予知に挑む!確かな前兆現象を捉える画期的手法とは
梅野健
「宇宙の創生」の仕組みと宇宙物理学の歴史(1)宇宙の階層構造
「宇宙の階層構造」誕生の謎に迫るのが宇宙物理学のテーマ
岡朋治
ブラックホールとは何か(1)私たちが住む銀河系
太陽系は銀河系の中で塵のように小さな存在でしかない
岡朋治

人気の講義ランキングTOP10
中国共産党と人権問題(1)中国共産党の思惑と歴史的背景
深刻化する中国の人権問題…中国共産党の思惑と人権の本質
橋爪大三郎
プロジェクトマネジメントの基本(1)国際標準とプロジェクトの定義
プロジェクトマネジメントとは?国際標準から考える特性
大塚有希子
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
内側から見たアメリカと日本(7)ジャパン・アズ・ナンバーワンの弊害
ジャパン・アズ・ナンバーワンで満足!?学ばない日本の弊害
島田晴雄
歴史の探り方、活かし方(7)史料の真贋を見極めるために
質疑編…司馬遼太郎の「史料読解」をどう評価する?
中村彰彦
熟睡できる環境・習慣とは(2)酒、コーヒー、ブルーライトは悪者か
ブルーライトは悪者か?近年分かった「第3の眼」との関係
西野精治
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二
戦争と暗殺~米国内戦の予兆と構造転換(1)内戦と組織動乱の構造
カーク暗殺事件、戦争省、ユダヤ問題…米国内戦構造が逆転
東秀敏
「重要思考」で考え、伝え、聴き、議論する(1)「重要思考」のエッセンス
重要思考とは?「一瞬で大切なことを伝える技術」を学ぶ
三谷宏治
エンタテインメントビジネスと人的資本経営(1)ソニー流の多角化経営の真髄
ソニー流「多角化経営」と「人的資本経営」の成功法とは?
水野道訓