この講義シリーズは第2話まで
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生命科学の現状と課題~生物研究と再生医療
研究者にとって大事な5つのこと
生命科学の現状と課題~生物研究と再生医療(6)自然から学び、ヒトを知る
科学と技術
浅島誠(東京大学名誉教授/帝京大学 先端総合研究機構 特任教授)
40年間イモリを採取し研究してきた浅島誠氏だが、研究を進めるたびにイモリがすごい能力を持っていることに驚かされてきたという。シリーズ最終話では、自然や生物から学ぶことの重要性を伝えるため、研究者にとって大事な5つの心構えを説く。(全6話中第6話)
時間:7分25秒
収録日:2018年7月30日
追加日:2019年2月3日
収録日:2018年7月30日
追加日:2019年2月3日
≪全文≫
●イモリからいろいろなことを学ぶことができる
私は毎年春と秋、年2回イモリを採りにいきます。そうして、40年間イモリを採っていると、いろいろなことを学びます。
まず、イモリの卵は大きくて美しいものですが、実験に使うのでもちろん手術がしやすいというのもあります。また、これまでお話ししたように、ヒトは20万年しか歴史を持っていませんが、イモリは3億年の歴史を持っています。つまり、ナチュラルヒストリーとしては、彼らの方が長いのです。では、彼らはなぜそこまで長く生きることができたのか。それを知ることが非常に重要です。
イモリは、がんができたとしても、冬眠している間に自分でがんを治してしまいます。これは、最近の新しい学問でいえば、「低温療法」というがんの治療方法に当たります。温熱療法や低温療法は、がんを治すための1つの仕組みですが、イモリは冬眠している間に自分で自分の体を治してしまうのです。そういう能力を持っていたり、あるいは手足を切ってしまったときに、それをまた元に再生したりする能力もあります。
それからイモリは、都会ではなかなか住むことができず、生活水が入ると非常に弱いのです。つまり、イモリの最大の敵はヒトなのです。そのイモリがいるのは自然が本当に豊かなところなので、一種の環境指標にもなっています。
また、イモリは進化の過程において、脊椎動物が水中から陸上に上がる時期に位置し、その意味でも重要な存在です。さらに、われわれヒトが感じないさまざまな能力を持っていると私は思います。そういうものについても、これから彼らから学んでいきたいと思います。ですから、そういったものを学ぶたびに、イモリのすごさというものを感じます。
●研究者にとって大事な5つのこと
私は研究室で学生たちとともに研究を進めてきましたが、そこには研究室の哲学ないし考え方があります。1番目は、自然のこと、例えばイモリやカエルのことを、彼らから学ぶということです。私自身は皆さんと一緒に学ぶ仲間ですが、本当の先生は生き物自身であると言っています。
2番目は、パッションを持つことです。これは情熱のことですが、本当に研究をしようとする場合には、うなされるぐらいの情熱を持つことが必要です。これを「熱情」と呼んでいます。これはパスツールがよく使った言葉ですが、自分の研究として熱情を持って取り組...
●イモリからいろいろなことを学ぶことができる
私は毎年春と秋、年2回イモリを採りにいきます。そうして、40年間イモリを採っていると、いろいろなことを学びます。
まず、イモリの卵は大きくて美しいものですが、実験に使うのでもちろん手術がしやすいというのもあります。また、これまでお話ししたように、ヒトは20万年しか歴史を持っていませんが、イモリは3億年の歴史を持っています。つまり、ナチュラルヒストリーとしては、彼らの方が長いのです。では、彼らはなぜそこまで長く生きることができたのか。それを知ることが非常に重要です。
イモリは、がんができたとしても、冬眠している間に自分でがんを治してしまいます。これは、最近の新しい学問でいえば、「低温療法」というがんの治療方法に当たります。温熱療法や低温療法は、がんを治すための1つの仕組みですが、イモリは冬眠している間に自分で自分の体を治してしまうのです。そういう能力を持っていたり、あるいは手足を切ってしまったときに、それをまた元に再生したりする能力もあります。
それからイモリは、都会ではなかなか住むことができず、生活水が入ると非常に弱いのです。つまり、イモリの最大の敵はヒトなのです。そのイモリがいるのは自然が本当に豊かなところなので、一種の環境指標にもなっています。
また、イモリは進化の過程において、脊椎動物が水中から陸上に上がる時期に位置し、その意味でも重要な存在です。さらに、われわれヒトが感じないさまざまな能力を持っていると私は思います。そういうものについても、これから彼らから学んでいきたいと思います。ですから、そういったものを学ぶたびに、イモリのすごさというものを感じます。
●研究者にとって大事な5つのこと
私は研究室で学生たちとともに研究を進めてきましたが、そこには研究室の哲学ないし考え方があります。1番目は、自然のこと、例えばイモリやカエルのことを、彼らから学ぶということです。私自身は皆さんと一緒に学ぶ仲間ですが、本当の先生は生き物自身であると言っています。
2番目は、パッションを持つことです。これは情熱のことですが、本当に研究をしようとする場合には、うなされるぐらいの情熱を持つことが必要です。これを「熱情」と呼んでいます。これはパスツールがよく使った言葉ですが、自分の研究として熱情を持って取り組...
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