「逆・タイムマシン経営論」で見抜く思考の罠
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
100年前の「米騒動」に学ぶコロナ問題の捉え方
「逆・タイムマシン経営論」で見抜く思考の罠(4)「文脈思考」でトラップを回避せよ
楠木建(一橋大学大学院 経営管理研究科 国際企業戦略専攻 特任教授)
飛び道具トラップにはまりやすいのは、すぐに新たな技術に飛びつくものの、その本質を理解しようとしない専門家と構想を持たない経営者の組み合わせである。これを回避するためには、本質を抽象化し自社の文脈に位置づけて考える「文脈思考」が重要である。コロナ禍の事例を100年前の「米騒動」と結びつけることで、人がいかに不確かな情報に踊らされているかが見えてくる。(全6話中第4話)
時間:8分22秒
収録日:2020年12月7日
追加日:2021年5月15日
≪全文≫

●飛び道具トラップが生まれる最悪の組み合わせ


 どのような人がこのようなトラップにはまりやすいのか考えてみましょう。まず、情報感度が高い人ほど飛び道具トラップにはまりやすいと思います。また、せわしない(忙しい)人ですね。スマホを何度も見て、注目のキーワードやバズワードにしか目が向かず、その背後にある文脈や、その現象が含んでいるロジックに目が向かないのです。

 また、せっかちな人の場合は、すぐに効果が出るものを求めがちですが、これはよろしくありません。「すぐに役立つものほど、すぐに役立たなくなる」というのは、私は商売の鉄則だと考えています。また、行き詰まっている人ほど、一発逆転の手を探し、局面を打開できるものを探します。そのため、飛び道具が巧妙に見えて、トラップにはまる傾向があります。

 特にITやHR(ヒューマンリソース)など専門性が高い分野では、自分の担当領域のことで頭がいっぱいの方が多いように思います。商売全体で利潤をあげている文脈や戦略、ストーリーに目が向かない人ほど、先ほど指摘した手段の目的化に陥ってしまいがちです。

 一方で、ポンコツ経営者は、代表取締役担当者となっています。これを専門用語で「チーフエグゼクティブ担当者(CET)」と呼んでいます。このような人は、戦略構想も持たないまま社長の担当業務だけ粛々とこなしています。手段を目的化しがちな担当分野の専門家と、焦りはしても構想や戦略を持たない代表取締役担当者は、最悪の組み合わせです。この悪循環によって、飛び道具トラップが生まれるのではないかと思います。


●飛び道具トラップを回避するための「文脈思考」


 これを回避するためには、先ほどのメカニズムを逆転させることが必要です。そのことを、文脈剥離とは反対に、文脈に位置づけて考える、「文脈思考」と呼んでいます。

 まず、自分の商売がどのような戦略やストーリーで稼ごうとしているのかというビジョンが固まっていなければ、何をしても仕方がありません。これを固めた上で重要なのは、成功事例の本質を見ることです。成功事例からはもちろんさまざまな教訓を得られますが、その際にも、注目されている部分、例えばサブスクリプションという課金形態だけを見るのではなく、その部分が成功事例全体の文脈の中でどのような役割を果たしているのかを見るべきです。その上で、本質を抽象化し...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「経営ビジネス」でまず見るべき講義シリーズ
メンタルヘルスの現在地とこれから(1)「心を病む」とはどういうことか
なぜ「心の病」が増えている?メンタルヘルスの実態に迫る
斎藤環
野獣の経営、家畜の経営(1)経営センスが育つ土壌
ファーストリテイリングで経営者が育つ理由
楠木建
マザーテレサとの出会い
人生を変えたマザーテレサの言葉…あの人たちはキリストだ
上甲晃
バブル世代の現実とこれからの生き方
バブル世代は「バブル崩壊世代」、苦労の先に見えるものがある
江上剛
キャリア転換で人生を成功させる方法(1)2つの大きな潮流
なぜ40歳でキャリアについて一度考え直す必要があるのか
為末大
本質から考えるコンプライアンスと内部統制(1)「法令遵守」でリスクは管理できない
「コンプライアンス=法令遵守」ではない…実例が示す本質
國廣正

人気の講義ランキングTOP10
熟睡できる環境・習慣とは(3)睡眠にいい環境とお風呂の入り方
布団に入る何分前がいい?入眠しやすいお風呂の入り方
西野精治
平和の追求~哲学者たちの構想(1)強力な世界政府?ホッブズの思想
平和の実現を哲学的に追求する…どんな平和でもいいのか?
川出良枝
葛飾北斎と応為~その生涯と作品(2)『富嶽三十六景』神奈川沖浪裏への道
『富嶽三十六景』神奈川沖浪裏のすごさ…波へのこだわり
堀口茉純
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(1)数が理解できない子どもたち
なぜ算数が苦手な子どもが多いのか?学力喪失の真相に迫る
今井むつみ
生成AI「Round 2」への向き合い方(1)生成AI導入の現在地
生成AIの利活用に格差…世界の導入事情と日本の現状
渡辺宣彦
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
中国共産党と人権問題(5)そもそも人権思想と憲法とは?
中華人民共和国憲法は人権型ではない
橋爪大三郎
『貞観政要』を読む(1)長期政権を目指す者の必読書
北条政子も愛読した長期政権のバイブル『貞観政要』
田口佳史
プロジェクトマネジメントの基本(1)国際標準とプロジェクトの定義
プロジェクトマネジメントとは?国際標準から考える特性
大塚有希子