「逆・タイムマシン経営論」で見抜く思考の罠
この講義は登録不要無料視聴できます!
▶ 無料視聴する
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
「400万台クラブ」―負の歴史に学ぶ本質の見極め方
「逆・タイムマシン経営論」で見抜く思考の罠(2)「400万台クラブ」という幻
楠木建(一橋大学大学院 経営管理研究科 国際企業戦略専攻 特任教授)
過去を見ることで「同時代性の罠」をよく理解できる。その例として、1990年代に自動車業界で流行した「400万台クラブ」という言説に着目する。当時の自動車産業の大企業は、生産台数を400万台に届かせるために躍起になって買収や統合を繰り返したが、その結果は芳しくなかった。生産台数は競争力によるものではない結果であることを見誤っていたことが、その原因である。過去を振り返ることで、同時代の熱狂を少しひいた位置から客観的に見る姿勢を身につける必要がある。(全6話中第2話)
時間:8分33秒
収録日:2020年12月7日
追加日:2021年3月29日
≪全文≫

●「400万台クラブ」と自動車業界の混乱


 実際に過去の記事を見ていくと、しばしば痺れるような記事に出会うことがあります。例えば、一時期は多くの人が冗談ではなく「エンロンに学べ!」といっていました。これは『Fortune』の記事ですが、6年連続で『Fortune』は「エンロン」がアメリカで最もイノベーティブな会社だと主張していました。今から振り返ると、相当トンチンカンな話です。

 その一つの典型例としてご紹介したいのが、1990年代の終わりの自動車産業です。当時大変当時盛り上がった議論として、「400万台クラブ」というバズワードがありました。つまり、自動車産業では国際競争がますます激しくなり、これから先は400万台以上の生産規模のない会社は生き残れないといわれていたのです。この400万台の法則が当時注目を集め、この400万台クラブに入れるかどうかが生死の分かれ目だと、まことしやかにささやかれていたのです。

 例として1999年の『日経ビジネス』の記事を見てみましょう。この時代には、自動車産業は何度も大型の合併やM&Aを繰り返していました。当時の雑誌の記事を見てみると、「ホンダも危ない。規模の大小が競争力の決め手、フィアット、プジョー・シトロエンどころか、BMW、フォルクスワーゲンも安泰ではない。なぜなら400万台にまだ到達していないからだ」などと真剣に議論されていたのです。

 実際にこの同時代の空気の中で、経営者が大胆な意思決定をしました。きっかけはダイムラークライスラーという会社の誕生ですね。大西洋を越えて、アメリカのクライスラーとドイツのダイムラーは合併しました(参考文献:『合併―ダイムラー・クライスラーの21世紀戦略』トラベルジャーナル)。ここまでの手を打たなければ、これから先は生き残れないと思われていたのです。

 こうした流れを受けて、当時フォードのCEOを務めていたジャック・ナッサーという非常にアグレッシブな経営者がPAGという戦略を打ち出しました。ボルボやアストンマーティン、ジャガーなどを次々と買収しました。もともと傘下にあったリンカーンと合わせて、プレミアム・オートモーティブ・グループ(PAG)という事業ユニットをつくったのです。この事例でも、買収に積極的に乗り出していることが分かります。

 ライバルのGMは、日本企業に触手を伸ばしまして、産業サイドでいすゞ、小型自動車でスズキに対して資本...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「経営ビジネス」でまず見るべき講義シリーズ
バブル世代の現実とこれからの生き方
バブル世代は「バブル崩壊世代」、苦労の先に見えるものがある
江上剛
野獣の経営、家畜の経営(1)経営センスが育つ土壌
ファーストリテイリングで経営者が育つ理由
楠木建
本質から考えるコンプライアンスと内部統制(1)「法令遵守」でリスクは管理できない
「コンプライアンス=法令遵守」ではない…実例が示す本質
國廣正
運と歴史~人は運で決まるか(1)ソクラテスが見舞われた「運」
歴史における「運」とは?ソクラテスの「運」から考える
山内昌之
プロティアン~最先端の自律的キャリア形成(1)変幻自在のキャリア論
なぜ第二の人生のためにキャリアの棚卸しが必要か~組織から自律へ
田中研之輔
ストーリーとしての競争戦略(1)当たり前の重要さ
柳井正氏の年度方針「儲ける」は商売の本筋
楠木建

人気の講義ランキングTOP10
「次世代地熱発電」の可能性~地熱革命が拓く未来
地熱革命が世界を変える――次世代地熱の可能性に迫る
片瀬裕文
戦略的資本主義と日本~アメリカの復活に学ぶ5つの提言
戦略的資本主義とは?日本再生へアメリカに学ぶ5つの提言
片瀬裕文
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(序)時代考証が語る『豊臣兄弟!』の魅力
2026年大河ドラマ『豊臣兄弟!』秀吉と秀長の実像に迫る
黒田基樹
逆境に対峙する哲学(7)試練と祟りと弱さの力
モンテーニュの告白「学が邪魔をすることがある」と百姓の力
津崎良典
定年後の人生を設計する(1)定年後の不安と「黄金の15年」
不安な定年後を人生の「黄金の15年」に変えるポイント
楠木新
「進化」への誤解…本当は何か?(1)進化の意味と生物学としての歴史
実は生物の「進化」とは「物事が良くなる」ことではない
長谷川眞理子
百姓からみた戦国大名~国家の本質(1)戦国時代の過酷な生存環境
戦国時代、民衆にとっての課題は生き延びること
黒田基樹
新しい循環文明への道(1)採掘文明から循環文明へ
2026年頭所感~循環文明の「三つの柱」…いよいよ実現へ
小宮山宏
エンタテインメントビジネスと人的資本経営(1)ソニー流の多角化経営の真髄
ソニー流「多角化経営」と「人的資本経営」の成功法とは?
水野道訓
第2次トランプ政権の危険性と本質(1)実は「経済重視」ではない?
ブレーキなき極右ポピュリズム…文化戦争を重視し経済軽視
柿埜真吾