行動経済学とマーケティング
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直観型と熟慮型…2つの思考回路を使い分ける人間の特徴
行動経済学とマーケティング(2)行動経済学を構成する「3つの分野」
阿部誠(中央大学 大学院 戦略経営研究科 教授/東京大学名誉教授)
行動経済学は、3つの分野で構成されている。「現象の描写」「メカニズムの説明と理論」「実社会への適用」の3つだが、それぞれどのようなものなのか。詳しく解説し、従来の経済学との違いを明確にしていく。(全6話中第2話)
時間:8分48秒
収録日:2024年4月8日
追加日:2024年6月13日
≪全文≫

●行動経済学の「3つの分野」


 行動経済学には3つの分野があります。1つ目は「現象の描写」。2つ目は「メカニズムの説明と理論」。3つ目は「実社会への適用」。この3つの分野で成り立っています。

 まず「現象の描写」について。今日は特に事例として、「ヒューリスティックとバイアス」というお話をしたいと思います。人間とは先ほど(前回)言ったように、ほどほど合理的、ほどほど自制的、ほどほど利己的に行動するといった特徴があります。この「ほどほど」にはある程度パターンがあるのです。どのようなパターンが一貫的に見られるか、観察されるかを研究する分野が、この1つ目の「現象の描写」です。

 2つ目の「メカニズムの説明と理論」について。これは先ほどの「現象の描写」で、「人間はほどほど合理的、ほどほど自制的、ほどほど利己的」と言ったのだけれど、ではなぜそのように振る舞うのか。これを理論の観点から説明するのが、この2つ目のトピックになります。

 そして3つ目は、実社会に行動経済学から学んだ知見をどのように当てはめることによって、より良い社会が構築できるのかを研究する分野となっています。

 赤字で書いてあるのは、今日、実際のマーケティングの事例を使って紹介しようと考えています。


●バイアス――認知には癖がある


 それではここで、最初に「現象の描写」を説明したいと思います。まず、絵を見てどちらの線が長いかを3秒以内に答えてください。

 おそらく見たことのある方もいらっしゃるでしょう。パッと見れば、上のほうが長く見えます。しかし実際には、多くの方がご存じのように、上と下の長さは同じなのです。

 つまり人は、事実を必ずしも正確に認識しない。そして、矢印の向きなどによってどちらが長く見えるといったように、認知には癖があります。これは一定のパターンを示すので、「バイアス」と呼んだりします。


●二重課程理論――人間は2つの思考回路を使い分ける


 では、2番目の行動経済学の分野「メカニズムの説明と理論」にもつながりますが、なぜこのような一定のパターンが出るのか。そのキーワードが、「ヒューリスティック」といわれるものです。「ヒューリス...

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