知能と進化
この講義は登録不要無料視聴できます!
▶ 無料視聴する
次の動画も登録不要で無料視聴できます!
AIは「意味」を理解できるのか?
第2話へ進む
AI、ディープラーニングとは…知能と身体性は不可分か?
知能と進化(1)知性と身体性
科学と技術
進化生物学を専門とする総合研究大学院大学長・長谷川眞理子氏と、人工知能(AI)およびディープラーニングを専門とする東京大学大学院工学系研究科特任准教授・松尾豊氏による対談が行われた。長年、進化生物学を研究してきた長谷川氏にとって、AIはさまざまな点で腑に落ちない存在だが、ではそのAIにとって身体性とは何なのか。(全8話中第1話)
時間:9分08秒
収録日:2018年4月9日
追加日:2018年7月13日
カテゴリー:
≪全文≫

●感情や欲求が抜けた知性はないのだから、AIは腑に落ちない


長谷川 私は1990年代に、JST(科学技術振興機構)の異分野交流プログラムで、ロボットの専門家と生物学の専門家による議論の場を提案し、1年ほど行ったことがあります。28年ほど前になるのでかなり前になるのですが、その時にロボットの専門家たちは、感情や報酬を考えた際、そもそも何を報酬と感じるかといったことを、一切抜きで議論していました。私は「感情や欲求が全く抜けた知性はないのではないか。それを考えない議論は全て駄目な議論ではないか」といったことを話しました。それ以来、随分いろいろと進んできたことは分かるのですが、私は生物学者なので、どうしても人工知能(AI)というものが腑に落ちないというか、嫌なのです。それで、いろいろと話をするのですが、やはりどこか腑に落ちませんでした。

 今回、松尾さんから事前にいただいた資料を読みました。関連するテーマについての話の中で一番面白かったですね。それで、今日はお話しするのを楽しみに参りました。


●ディープラーニングは、生物の進化においての「眼の誕生」か


松尾 ありがとうございます。僕は長谷川先生の本などを読み、「知能とは何か」ということを考えているのですが、考えれば考えるほど、やはり知能ではない部分に目が向いてしまっています。素人ながらいろいろな所で感情の話をするのですが、こんな素人考えで話して良いのかと思っていたこともあり、一度よくお話を聞いてみたいなと思っていました。

 僕はよく、ディープラーニングを「眼の誕生」に例えるのですが、これも諸説あるそうです。これについては以前、長谷川先生と話した際、「そういう説もあるよね」と、あまり否定されなかったように思います。それで、僕も少しそのような形で話しても良いのだな、という気持ちになったということもありました。

 でも、やはり専門家から見てどう思われるのかということをきちんと確かめておかないといろいろな所で話せないということがありますので、今回はいろいろとぜひ議論したいと思います。


●生物は身体性と不可分にあるのではないか


長谷川 そうですか。ではどこから議論しましょう。松尾さんは人間の認知の仕組みが大きく分けて認知運動系と記号処理系に分かれるというお話をされています。これはその通りだと思います。その上で、体とは身体...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「科学と技術」でまず見るべき講義シリーズ
本当によくわかる「量子コンピュータ入門」(1)量子コンピュータとは何か
「量子コンピュータ」はどういうもので、何に使えるのか
武田俊太郎
知能と進化(1)知性と身体性
AI、ディープラーニングとは…知能と身体性は不可分か?
長谷川眞理子
「宇宙の創生」の仕組みと宇宙物理学の歴史(1)宇宙の階層構造
「宇宙の階層構造」誕生の謎に迫るのが宇宙物理学のテーマ
岡朋治
進化生物学から見た「宗教の起源」(1)宗教の起源とトランス状態
私たちにはなぜ宗教が必要だったのか…脳の働きから考える
長谷川眞理子
未来を知るための宇宙開発の歴史(1)宇宙開発の流れを概観する
宇宙開発の歴史、そして未来へ…6枚の写真で概観する
川口淳一郎
海底の仕組みと地球のメカニズム(1)海底の生まれるところ
地球上の火山活動の8割を占める「中央海嶺」とは何か
沖野郷子

人気の講義ランキングTOP10
数学と音楽の不思議な関係(4)STEAM教育でつくる喜びを全ての人に
世界で最もクリエイティブな国は? STEAM教育が広がる理由
中島さち子
続・日本人の「所得の謎」徹底分析(2)政府債務と預金残高の背景
なぜ日本の所得水準は低いのに預金残高は大きいのか
養田功一郎
経験学習を促すリーダーシップ(2)経験から学ぶ力
米長邦雄のアンラーニング、弟子の弟子になってV字成長
松尾睦
戦前日本の「未完のファシズム」と現代(8)満州事変と世界大恐慌
「100年戦争」と考えて戦争に突入した日本の現実
片山杜秀
「集権と分権」から考える日本の核心(5)島国という地理的条件と高い森林率
各々の地でそれぞれ勝手に…森林率が高い島国・日本の特徴
片山杜秀
海底の仕組みと地球のメカニズム(1)海底の生まれるところ
地球上の火山活動の8割を占める「中央海嶺」とは何か
沖野郷子
50代からの親の介護~その課題と準備(1)突然やってくる介護の問題
「親の介護」の問題…優しさだけでは続かない
太田差惠子
弥生人の実態~研究結果が明かす生活と文化(1)弥生時代はいつ始まったのか
なぜ弥生時代の始まりが600年も改まった?定説改訂の背景
藤尾慎一郎
編集部ラジオ2025(20)納富信留先生の「アカデメイア」講義
プラトンのアカデメイアからテンミニッツ・アカデミーへ
テンミニッツ・アカデミー編集部
第2の人生を明るくする労働市場改革(1)日本の労働市場が抱える問題
シニアの雇用、正規・非正規の格差…日本の労働市場の問題
宮本弘曉