知能と進化
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AIや生物にとって自己はいかに定義できるのか
知能と進化(6)自己概念の複雑さ
科学と技術
人工知能(AI)や生物にとって、「自己」とはいかに定義できるのだろうか。総合研究大学院大学長・長谷川眞理子氏と東京大学大学院工学系研究科特任准教授・松尾豊氏が、シンギュラリティ以後の生命の在り方を含め、多彩な議論を展開する。(全8話中第6話)
時間:17分24秒
収録日:2018年4月9日
追加日:2018年7月27日
≪全文≫

●人工知能は生き物とは違う、ということが出発点である


長谷川 私は昔、ロボット研究の人といろいろな話をしていた時に、すごく違和感を覚えました。その1番大きい理由は、「生き物を作ろうというつもりなら、それは無理だ」と思ったからです。ロボット研究者が生き物を再現しようと思ってそれを作ろうと思っているのなら、おこがましいにも程があるということです。あの頃、「生き物を分かるためには、作ってみなければならないだろう」とロボット研究者は言っていたので、「作ってみなきゃ分かんないなんていう種類のものじゃないんですよ、生き物は」と私は反論していたのですが、あまり話が通じませんでした。

 松尾さんの資料などを読んでいると、そうしたことを言っているのではないことが分かります。「命と人工知能(AI)は違う」と言っていらっしゃるので、生き物を再生しようとしているわけではないということです。ですから、知性や知能、いろいろな情報処理を、人間とは別のものを使って行うとすれば、何ができるかということを考えているのですよね。


●人間の認知の仕組みがいかに一面的であるかを知りたい


松尾 そうです。僕の根本的な動機は、小さい頃から思っていた次のようなことです。つまり、例えば「ここにテーブルがあり、ここにコップがある」というのは、本当なのだろうか、ということです。これは人間の脳がつくり出している認知現象で、その仕組みがいまだに分かっていないと知った時、すごく驚異的なことだと思いました。

 逆に人間の見え方というのは、数ある見え方の中のごく一部にしかすぎないのではないかとも思っています。人間はどうしても、オブジェクトとそのリレーションという形でしか物事を捉えられません。ですから、「テーブルの上にコップがある」というのも、テーブルとコップという2つのオブジェクトのリレーションで記述しますし、AIで研究されている知識表現でも、大体そうです。

 また数学もXやYなどいろいろな記号を使って式を書きますが、それも結局オブジェクトとリレーションを書いているだけで、人間が持っている認知的な仕組みに滅茶苦茶制約された見え方をしているということでしょう。そのことがいかに一面的であるかを知りたいと思うのですが、多分知っても分からないと思います。ですが、一面的であることを知りたいということが、僕の研究の動機なので...

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