知能と進化
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AIは「意味」を理解できるのか?
知能と進化(2)AIにとって意味とは何か
科学と技術
総合研究大学院大学長・長谷川眞理子氏と、東京大学大学院工学系研究科特任准教授・松尾豊氏の対談において、次に問題となったのは、人々が何かを認知する際に把捉される「意味」についてであった。人工知能(AI)は「意味」を理解できているのだろうか。(全8話中第2話)
時間:9分28秒
収録日:2018年4月9日
追加日:2018年7月14日
≪全文≫

●AIは「意味」を理解できるのか


長谷川 まだよく分かりません。身体性についてと、もう1つ私がいつも引っ掛かり、よく分からないのは、「意味」についてです。意味というものを、今のAIやコンピューターは、分かっていないのではないでしょう?

松尾 ええ、分かっていません。

長谷川 AIがどんなに学習し因果関係を推定したとしても、意味は分かっていないとすれば、ではどうするのか、ということが知りたいのです。

松尾 意味については、少し大胆な仮説があり、記号処理系RNNというものと、認知運動系RNNというものがあり、その相互作用だということです。つまり意味は、記号処理系RNNが何らかの記号をもとに認知運動系RNNを発動させた際、何かの情報が返ってきて、その返ってきた情報のことを指しているのではないかと考えています。例えば、「リンゴ」という言葉を使ったときに、「リンゴ」を記号処理系RNNが発動すると、認知運動系RNNが「リンゴ」というものから想起される像を描きます。像を描いたものを、また記号処理系RNNが受け取って、「こういうものが返ってきた」の「こういうもの」が意味なのではないか、ということです。

長谷川 記号処理系RNNによって想起されることは想起されても、それがその場である特定の意味になるためには、その想起されたものの中から何かを摘み取って、別のものは選択せず、それを現在のコンテクストと結び付けなければなりませんよね。

松尾 そうですね。例えば、「リンゴが穴に落ちました」という文を解釈しようとすると、「リンゴ」と、「穴」を両方とも想起し、何か絵を描き、「リンゴが穴に落ちる」というのは、「このリンゴがコロコロとなって、こうなることなのね」ということを見つけ出すことです。記号処理系RNNの仕事はそのことを「そうなんだ」と解釈することなのではないかと思うのです。

 仮説なのですが、この図を見てください。認知運動系RNNがあり、そこにセンサーの入力が入ってきてアクチュエータの情報を出します。その上部にあるのが記号処理系RNNです。赤の矢印のように入ってきて出るのが、あまり長いプランを立てない動物のケースです。より上位の動物になると、黄色の矢印のように記号処理系RNNを介します。こうすると、少し遠くまで行けると...

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