AI時代に甦る文芸評論~江藤淳と加藤典洋
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
第1話へ
▶ この講義を再生
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
(会員の方に広告は表示されません)
白樺派以降の孤独で空虚なリアリズム…言葉の力とは?
AI時代に甦る文芸評論~江藤淳と加藤典洋(3)正岡子規と高浜虚子の「リアリズム」
與那覇潤(評論家)
正岡子規の死後、高浜虚子が回想で述べた師・子規との論争。そこに「リアリズムとは何か」のヒントが隠されていると江藤淳氏は言う。子規と虚子、それぞれの「リアル」とは何か、そしてどちらが本当の「リアル」なのか。近代小説におけるリアリズムについて、『ポケモンGO』、コロナ禍の話を例に挙げて、また白樺派の作家として活躍した志賀直哉を取り上げながら解説する。(全7話中第3話)
時間:17分02秒
収録日:2025年4月10日
追加日:2025年7月9日
≪全文≫

●『ポケモンGO』で名所を観光するのはアリ?


 これを読んだとき――読んだといっても、私は江藤さんの引用で読んだのですが――なるほど、と思ったのです。それこそAI時代、IT時代というときに、1つエポックメイキングなものとして、『ポケモン GO』がすごく流行りましたね。2016年の夏にリリースされ、ものすごく流行って、私の周りも当時、皆が「始めました」「始めました」となっていました。あれが普及したときに、僕は少し異様な感覚を持ちました。

 それこそ東京であれば、例えば不忍池など、『ポケモン GO』が普及する前から名所的な場所があり、「ぶらぶら歩こうか」と歩く場所があったわけです。

 ところが、『ポケモン GO』が始まったとき、スマホを持っている全員が『ポケモン GO』をやっているのではないかというほどブームのときは、不忍池へ行っても誰も池を見ていないのです。その場所ではどのポケモンが出るのか、全員がばらばらにスマホを持って「ここではこのキャラがゲットできる」ということだけを見ている。その風景を見たときに、やや異様な感じがしました。これと同じことを、正岡子規と高浜虚子の論争を見たときに感じたわけです。

 虚子のほうは、要するに、「今、目の前の風景を見たら、『そこでかつて何があったのか』『この風景を先輩の作家あるいは歌詠みはどのように詠んできたか』ということを思い出すのが人間でしょう」と言っているのに対して、「そんなものは切り捨ててかまわない」と子規は言っている。

 これを今風に言い替えるのであれば、「日本には昔から多くの名所旧跡があるのに、そこへ行っても全員がスマホを出して、見て、このキャラ出たらレアなんだよねと『ポケモンGO』のことばかりを話していたら異常ではないですか」と聞くと、「全然いいじゃない。そのために観光客が増えるのだから。インバウンドなのだから」といった感性との対立、違いとそっくり似ているのだなと。

 つまり、「新しい感覚なのだから今までのことは忘れてもいいでしょう」と子規は言い張ったわけです。それは、「いやいや、『ポケモン GO』しか見ていないからこそ日本中を旅行したいという人が生まれたら、観光業が盛り上がるのだから全然いいでしょう」というような感覚に妙に近いと私は感じたわけです。


●高浜虚子の考える「リアル」に軍配


 さて、そうした問題とも重ねて捉えられる...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
(会員の方に広告は表示されません)
「芸術と文化」でまず見るべき講義シリーズ
石原慎太郎と三島由紀夫と近衛文麿(1)政治家・石原慎太郎の源流と核の問題
石原慎太郎と三島由紀夫と近衛文麿…対比で見えてくる現代的課題
片山杜秀
ルネサンス美術の見方(1)ルネサンス美術とは何か
ルネサンスはどうやって始まった?…美術の時代背景
池上英洋
ピアノでたどる西洋音楽史(1)ヴィヴァルディとバッハ
ピアノの歴史は江戸時代に始まった
野本由紀夫
『源氏物語』ともののあはれ(1)雅な『源氏物語』の再発見
『源氏物語』の謎…なぜ藤壺とのスキャンダルが話のコアに?
板東洋介
ショパンの音楽とポーランド(1)ショパンの生涯
ショパン…ピアノのことを知り尽くした作曲家の波乱の人生
江崎昌子
古関裕而・日本人を応援し続けた大作曲家(1)恩師との出会い
六甲おろし、栄冠は君に輝く、長崎の鐘…古関裕而の魅力
刑部芳則

人気の講義ランキングTOP10
昭和の名将・根本博…内蒙古・終戦後の戦い(1)軍人の本義を貫いた根本博中将
ソ連軍から在留日本人4万人を守れ…内蒙古での「戦後」の激闘
門田隆将
資本主義の再定義…哲学で考える(4)共感としての見えざる手
利とは、義の和である…なぜ道徳的なふるまいが企業活動に重要か
中島隆博
戦前派一日本人の憂鬱~太平洋戦争と敗戦後を顧みて…(1)
『きけわだつみのこえ』を読むと今でも涙が止まらない
野田一夫
死と宗教~教養としての「死の講義」(5)仏教の死:日本編
極楽往生、坐禅、法華経…日本人はいかに死を乗り越えるか
橋爪大三郎
編集部ラジオ2026(26)お盆とあの世を考える
【10min解説】特集で考える《お盆とあの世》の本質
テンミニッツ・アカデミー編集部
戦前日本の「未完のファシズム」と現代(1)シラス論と日本の政治
独裁ができない戦前日本…大日本帝国憲法とシラスの論理
片山杜秀
教養としての「ユダヤ人の歴史とユダヤ教」(1)ユダヤ人とは誰のことか
ユダヤ人とは?なぜ差別?お金持ち?…『ユダヤ人の歴史』に学ぶ
鶴見太郎
小澤開作と満洲事変・日中戦争(1)少年時代の苦労と五族協和の夢
満洲で「五族協和」に命を懸けた小澤征爾の父・小澤開作
小澤俊夫
昭和の名将・根本博…台湾での恩義の戦い(1)危機の台湾への密航
「国共内戦」危機の台湾…根本博の密航と涙で迎えた中国人将軍
門田隆将
日本の財政の真実を検証する(7)AIと長寿化&質疑応答
AI時代にこそ「熟達者の経験」が生きる&現状の日本経済の実情は
宮本弘曉