AI時代に甦る文芸評論~江藤淳と加藤典洋
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
第1話へ
▶ この講義を再生
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
(会員の方に広告は表示されません)
高浜虚子の小説『丸の内』に学ぶAI時代に大事なリアリズム
AI時代に甦る文芸評論~江藤淳と加藤典洋(7)AI時代の人文学のあり方
與那覇潤(評論家)
AI時代の今、学問の中でも特に人文学の世界でAIに妥協する姿が見られる。また、オープンAI創業者がやってしまった“事件”は、「生の人間の感覚」が忘れられがちな現代人にとって象徴的な出来事ともいえる。そこで最終話では、高浜虚子が書いた数少ない小説『丸の内』から、あらためてAI時代に求められる「リアリズム」とはどういうものかを考えてみよう。(全7話中第7話)
時間:18分59秒
収録日:2025年4月10日
追加日:2025年8月6日
≪全文≫

●今、学問全体が、AI時代に妥協してしまっている


 という形でAIという時代、AIがどんどん普及していく。かつては人間が行ったことも次々とAIが行っていくようになり、今は文章の処理、言語の処理をAIが代わりにできるようになったというのが、生成AIの衝撃です。

 そういった時代においてこそ文芸評論のような、一見するとアナログの極致――こんなものはAIに淘汰されるに決まっていると思えるような古臭い仕事が、AIには委ねられない、代理することができないということを教えてくれるのではないか、とお話をさせていただきました。

 しかしながら残念なことに、私は思っているのですが、どうも今、評論に限らず学問を含めて、広い意味でいう人文学というものが、AI時代に対抗していく、あるいはAI時代にも消えない価値を担っていくのではなくて、逆に中途半端にAI時代に妥協して、どんどんダメになっていっているような実感を私は持っているわけです。

 例えば1つあるのが、ポリティカルコレクトネスというものを、私は全否定はしないのですが、「とにかく政治的にこういう結論を出すことに決まっている」といった形で、最初から結論を決めて論文を書いてしまう。「こういう言葉はだいたいセットで使いますよね」というものが研究の前から決まっていて、それを適当に組み合わせて、それに合わせて素材も料理する。つまり、ワンセットで使う言葉が決まっていたりするわけです。

 例えば「フェミニズム」という言葉を使ったら、「ジェンダー」という言葉もきっと出てきますね。「マルクス」といったら「資本主義」「ポスト資本主義」という言葉も出てきますね、みたいな感じで、「このキーワードを出したら次はだいたいこのキーワード、このキーワード……と出てくるものが決まっています」というものを組み合わせて、なんとなくそれっぽく文章を書く。そういったタイプの書き方が広まっています。

 これはまさに、ChatGPTなどの生成AIが行っていることを人間がしているだけです。「だいたいこの言葉とこの言葉と組み合わせて使い、だいたいこのあたりのオチに行くのが最大公約数ですよね」という形で既存の概念を組み合わせて、それっぽく文章を書いてしまう。まさに人間がAIのように文章を書く。そうしたあり方が人文学を中心とした文系の学問のあり方でも広がってしまっているわけです。

 あるいは、私は病気を...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
(会員の方に広告は表示されません)
「芸術と文化」でまず見るべき講義シリーズ
バッハで学ぶクラシックの本質(1)リベラルアーツと音楽
中世ヨーロッパの基礎的な学問「7自由学科」の一つが音楽
樋口隆一
ピアノでたどる西洋音楽史(1)ヴィヴァルディとバッハ
ピアノの歴史は江戸時代に始まった
野本由紀夫
「ホメロス叙事詩」を読むために(1)ホメロスを読む
2700年前のホメロスの叙事詩が感動を与え続ける理由
納富信留
深掘りシェイクスピア~謎の生涯と名作秘話(1)シェイクスピアの謎
シェイクスピアの謎…なぜ田舎者の青年が世界的劇作家に?
河合祥一郎
『ロビンソン・クルーソー』とは何か(1)読み続けられる18世紀の小説
なぜ『ロビンソン・クルーソー』は“最初の近代小説”なのか
武田将明
印象派の解体と最後の印象派展(1)セザンヌと印象派
印象派の画家に大きな影響を与えたセザンヌの構築的筆触
安井裕雄

人気の講義ランキングTOP10
編集部ラジオ2026(13)心の「柔軟性」を高めるヒント
【10minでわかる】心の「柔軟性」を高めるヒント
テンミニッツ・アカデミー編集部
昭和の名将・樋口季一郎…ユダヤ人救出編(3)救った人数とゴールデンブックの謎
樋口季一郎のユダヤ難民救出数は?ゴールデンブックの謎は?
門田隆将
「逆・タイムマシン経営論」で磨く経営センス(1)人口問題の本質
「逆・タイムマシン経営論」は本質を見抜くための方法論
楠木建
教養としての「ユダヤ人の歴史とユダヤ教」(9)ユダヤ人の多様性
ユダヤ人は一枚岩ではない…米国ユダヤ人のイスラエルへの違和感
鶴見太郎
デジタル全体主義を哲学的に考える(1)デジタル全体主義とは何か
20世紀型の全体主義とは違う現代の「デジタル全体主義」
中島隆博
生き抜くためのチカラ~為末メソッドに迫る(4)人生の勝敗を考える
幸せの鍵「なにげなさ」とは何のことか
為末大
イラン戦争とトランプ大統領の戦争指導(1)米軍式戦略リーダーシップによる評価
イラン戦争…トランプ大統領の戦争指導のどこが問題なのか?
東秀敏
「重要思考」で考え、伝え、聴き、議論する(1)「重要思考」のエッセンス
重要思考とは?「一瞬で大切なことを伝える技術」を学ぶ
三谷宏治
戦前、陸軍は歴史をどう動かしたか(1)総力戦時代の到来
日英同盟の廃棄、総力戦…世界秩序の激変に翻弄された日本
中西輝政
不便益システムデザインの魅力と可能性(1)「便利・不便」「益・害」の関係
「不便益」とは何か――便利の弊害、不便の安心
川上浩司