AI時代に甦る文芸評論~江藤淳と加藤典洋
この講義は登録不要無料視聴できます!
▶ 無料視聴する
次の動画も登録不要で無料視聴できます!
江藤淳「リアリズムの源流」…正岡子規と高浜虚子の論争
第2話へ進む
江藤淳と加藤典洋――AI時代を生きる鍵は文芸評論家の仕事
AI時代に甦る文芸評論~江藤淳と加藤典洋(1)AIに代わられない仕事とは何か
與那覇潤(評論家)
昨今、生成AIに代表されるようにAIの進化が目覚ましく、「AIに代わられる仕事、代わられない仕事」といったテーマが巷で非常に話題となっている。では、AIに代わられない事とは何であろうか。そこで、『江藤淳と加藤典洋』(文藝春秋)を上梓した與那覇氏が、戦後日本を代表する文芸評論家である両者の紹介とともに「文芸評論」という仕事について語り始める。なぜ今、文芸評論なのか。その理由とは――。(全7話中1話)
時間:11分35秒
収録日:2025年4月10日
追加日:2025年6月25日
≪全文≫

●以前は「文芸評論」が必修科目のようだった


 こんにちは。評論家の與那覇潤です。このたび『江藤淳と加藤典洋』(文藝春秋)という、2人の文芸評論家をタイトルとする本を出版しました。そこであらためて、なぜ文芸評論について論じるのかということをお話しさせていただければと思います。

 江藤淳と加藤典洋と聞いて、「どちらもイメージが浮かぶ」という方、「名前は聞いたことがあるが、よく知らない」という方、どちらもいらっしゃると思います。ともに戦後日本を代表するといってよい文芸評論家、あるいは文芸批評家です。

 江藤さんは、1932年に生まれて1999年に亡くなっている。これは今風に分かりやすくたとえますと、1945年が敗戦の年ですから、戦争に負けたときに現在でいう中学生くらいになります。つまり、思春期の一番ナイーブな時期に、敗戦が直撃した世代を代表する評論家が江藤さんでした。

 一方、加藤典洋さんはといえば1948年生まれの、いわゆる団塊の世代です。戦争が終わった直後くらいに生まれた、「ベビーブーム」と呼ばれた世代の1人です。この人たちは大学生の時期がだいたい1970年前後で、「70年安保」「全共闘運動」という学生運動が一番激しかった頃です。加藤さんの場合は東大文学部で、やはり全共闘のメンバーだったわけです。つまり、戦争直後に生まれ、高度成長期にだんだん大きくなっていき、大学に入ったら「バリケードで大学を封鎖するぞ! おーっ!」とやっていた世代を代表するのが加藤典洋さんです。2019年、元号が令和になった直後くらいに亡くなっておられます。

 世の中に向けて何かオピニオンを発信するという人は、いろいろな学問の方がやっていらっしゃいます。私自身も今、そうであるように、「特にこの学問が専門」というわけではなく、評論家という仕事をしている人もいるわけです。ある時期まで、「世の中に向けて何か意見を言いたい」という人にとって、文芸評論を書いてみることは必修科目のようになっていたところがあるのです。

 文学をよりよく読むことができる人は、文学を通じて「人間とは何なのか」「今、どんな世の中が生まれているのか」「私たちはどんな時代に生きているか」ということを描き出すことができる人である。だから、文学を評論することは非常に重要なのだ、と思われた時代があったわけです。


●最初にAIに代わられる仕事がコンサ...


スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
(会員の方に広告は表示されません)
「芸術と文化」でまず見るべき講義シリーズ
数学と音楽の不思議な関係(1)だれもがみんな数学者で音楽家
世界は音楽と数学であふれている…歴史が物語る密接な関係
中島さち子
印象派の解体と最後の印象派展(1)セザンヌと印象派
印象派の画家に大きな影響を与えたセザンヌの構築的筆触
安井裕雄
『太平記』に学ぶ激動期の生き方(1)なぜ今『太平記』を読むべきなのか
『太平記』は乱世における人間の処し方が学べる古典文学
兵藤裕己
クラシックで学ぶ世界史(1)時代を映す音楽とキリスト教
音楽はなぜ時代を映し出すのか?…音楽と人の歴史の関係
片山杜秀
『ロビンソン・クルーソー』とは何か(1)読み続けられる18世紀の小説
なぜ『ロビンソン・クルーソー』は“最初の近代小説”なのか
武田将明
「ホメロス叙事詩」を読むために(1)ホメロスを読む
2700年前のホメロスの叙事詩が感動を与え続ける理由
納富信留

人気の講義ランキングTOP10
昭和の名将・樋口季一郎…ユダヤ人救出編(1)決断と信念のユダヤ人救出
毅然として人道を貫き、命を救う…樋口季一郎のユダヤ人救出
門田隆将
イラン戦争と終末論(2)終末論とトランプ政権への影響
イラン戦争で反ユダヤ主義が加速!?トランプ政権へのリスク
東秀敏
編集部ラジオ2026(13)心の「柔軟性」を高めるヒント
【10minでわかる】心の「柔軟性」を高めるヒント
テンミニッツ・アカデミー編集部
人の行動の「なぜ」を読み解く行動分析学(1)随伴性
三日坊主、部屋が片付かない…なぜできないか行動分析学で考える
島宗理
教養としての「ユダヤ人の歴史とユダヤ教」(9)ユダヤ人の多様性
ユダヤ人は一枚岩ではない…米国ユダヤ人のイスラエルへの違和感
鶴見太郎
インフレの行方…歴史から将来を予測する(2)明治以降の物価推移とインフレ率
戦後日本のハイパーインフレの真実…その時、何が起きたのか
養田功一郎
AI時代と人間の再定義(1)AIは思考するのか
AIでは「思考の三位一体」が成立しない…考えるとは?
中島隆博
生き抜くためのチカラ~為末メソッドに迫る(4)人生の勝敗を考える
幸せの鍵「なにげなさ」とは何のことか
為末大
こどもと学ぶ戦争と平和(1)私たちに必要な想像力と戦争体験
なぜ戦争が起こるのだろう…大切なのは想像力と生の声
小原雅博
デジタル全体主義を哲学的に考える(6)概念の普遍化に必要なこと
なぜ論語の中の「道」は世界的に役立つ普遍的概念なのか
中島隆博