●機械学習によって加速する宇宙研究
サイエンスの面で面白いのは、うちの東大の「Kavli IPMU」という、数物連携宇宙研究機構というものがあるのですけれど、そこは数学を使って宇宙を研究する、数学と物理がコラボするという研究所です。いわゆる宇宙の発展のシミュレーションをスパコンでやるわけですが、1回1回やるとものすごく時間がかかるわけです。数日はかかります。
ところが、これをいろいろ学習させると0.1秒で1回できるということで、ものすごく早回しで、いろいろなパラメータを、いろいろ条件を変えながら、宇宙の発展のシミュレーションができる。だから、今までの何万倍も、何万回もすぐシミュレーションできてしまう。でも、数日かかるものを何万回もやると大変なことになってしまうわけです。
ということでやっていくと、どうも何か違う値が出てくる。この違う値といっているのは、「すばる」という望遠鏡がハワイのマウナケア(山)の上にありますけれど、そこで測定したのと少しずれた値が出てくるということが分かって、これはフィジックス、つまり宇宙のモデルとして何か新しい発見かもしれないというようなことが、このマシンラーニング(機械学習)を使って分かってきたということが、非常に面白い結果だと思っているのです。
AIも、そういう意味で役に立つところもあるのですけれど、最近は、サイエンスそのもののあり方を加速するという役割にもなってきているという一例です。
●AI時代に必要な「方法知」を養うための大学教育
さて、それで話はまた大学の話に戻ります。ということで、AIが非常に広がっていく中で、大学の教育は何が大事ですかとよく聞かれるわけです。
(左端の写真の左は)ジョセフ・(E・)アウンさんという私の友達ですけれど、ノースイースタン大学の学長さんです。これは、たまたまMITのサリー・コーンブルースという新しい学長さんの就任セレモニーのときに一緒になって撮った写真なのですけれど、彼は『ROBOT-PROOF』という、つまりAIとかロボットの時代に私たちはどういう能力を学生に教えるというか、学生にどういう能力を身につけてもらわなければいけないかということを論じた本を書きました。
結局、いろいろな知識は今の「ググる」でもけっこうなも...