●新たな知を生むための対話と多様性
では、東京大学総長の、改めまして、藤井輝夫と申します。よろしくお願いいたします。まず、「多様性の海へ:対話が創造する未来」という掛け声についてです。
今、私たちが基本方針としている「UTokyo Compass」というものがありまして、これがその「UTokyo Compass」のタイトルになっています。その心は、ちょうど3年前(2021年)に私が総長に就任した頃の状況としては、まさにCOVID-19の真っ只中でした。
それから、気候変動の問題が叫ばれていて、エネルギー・食料危機、プラスチックごみの問題、日本にあっては、超高齢化が課題として私たちの目の前にあって、そういう中で大学が何をしていけばいいのかを考えたということです。
その後、さらに世界ではいろいろなところで戦争が起きたり、紛争が起きたりということで、ますます状況はひどくなっています。
大学というのは、やはり学知を生み出す場所ですので、対話を大事にして、その学知を皆さんと共有していく、あるいは皆さんと対話をする中で新しい知を生み出していくということが、とても大事な役割だろうということです。
その対話をしていく中では、やはり多様性と包摂性です。多様な声を聞く、あるいは多様なバックグラウンドの人たちと話をしていく中で、そういった新しい知を生み出していく。これが実は学問の高みを目指す上でも非常に大事なことです。同じような考え方の人たちばかりでいろいろ話し合っていても、なかなか新しいことは生まれてこないというのはよくあることです。
それから、社会の中で共感性の高いソリューションを見いだしていこうとする上でも、こういった多様な人たちとの間の対話で新しいことを進めていくというのが大事でしょう。
ということで、大学としては世界の誰もが来たくなるような場所に大学をしていきましょうということを構成員一同で共有して、やっていきましょうというのがこのコンセプトだったわけです。
「対話」ということですが、私たちが言っている対話は、未知なるものを知ろうとする、未知なるもの、分からない問題について一緒に考えるということで、それがまさに...