「宇宙の創生」の仕組みと宇宙物理学の歴史
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
なぜわれわれは宇宙に惹かれるのか
「宇宙の創生」の仕組みと宇宙物理学の歴史(12)今後の展望と宇宙研究の意味
岡朋治(慶應義塾大学理工学部物理学科教授)
現在分かっている「宇宙の運命」についての認識にはいろいろな前提があり、その前提が崩れると、その認識も大きく崩れてしまう恐れがある。特に注意すべきは量子重力理論が未完成であることだ。よって、確認しなければいけないことが多い。シリーズ最終話では、そのことを今後の展望として提起し、最後に宇宙を研究することの意味について論じて締めくくる。(全12話中第12話)
時間:5分51秒
収録日:2020年8月25日
追加日:2021年2月27日
カテゴリー:
≪全文≫

●今後の展望~まだ激しく理解が変化し得る「宇宙」という分野~


 ただ、これ(前回お話した「宇宙の運命」について)はいろんな前提があります。

 今分かっていると思しきことは、いろんな仮定に基づいているので、それのどこかが崩れると、いろいろと崩れてしまう恐れはあります。すべてが正しいと思って導かれた結論だからです。なので、いろいろ確認しなければいけないことがあります。それを最後に、今後の展望として挙げさせていただきます。

 まず、宇宙開闢直後にインフレーションが起きたのかどうかということです。これは、大統一理論との絡みで、早急に証明しなければならないことですが、インフレーション理論の確認は、実は原始重力波の観測で行うことができます。

 そして原始重力波については、宇宙マイクロ波背景放射をもっと丁寧に観測することで確認できるということが分かっています。背景放射の偏り(偏波の空間パターン)を見ることで間接的に確認できるので、今世紀(21世紀)中には分かると思うのですが、この確認が先決です。実際に今、この確認のための観測プロジェクトがいくつか進行中です。

 次に、実はこれが一番重要なのですが、重力の量子論的な取り扱い、つまり量子重力理論で、これはいまだ未完成というところがあります。これがないことには宇宙開闢はまったく語れません。なので、かなり推測の域を出ないところが多いのです。

 理由としては、アインシュタインによる「一般相対性理論」という定式化した天才的な理論と、これまで数々の天才的な物理学者が構築してきた量子力学、この2つがとても相性が悪いということによるものだからです。これを超える理論がどうやってつくられるのかというのは、いまだよく分からないのですが、これが完成をしないことには宇宙の開闢は議論することができないのです。

 他には、これまでに申し上げました通り、われわれは宇宙について95パーセントを知らない、暗黒物質についてはまだ分かっていない、暗黒エネルギーについても知らない、ということです。これらについては、別々にちゃんと証明しなければいけないし、ちゃんと研究しなければいけません。

 暗黒物質については、正体不明で重力相互作用だけを行う粒子だと考えられていますが...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「科学と技術」でまず見るべき講義シリーズ
「宇宙の創生」の仕組みと宇宙物理学の歴史(1)宇宙の階層構造
「宇宙の階層構造」誕生の謎に迫るのが宇宙物理学のテーマ
岡朋治
進化生物学から見た「宗教の起源」(1)宗教の起源とトランス状態
私たちにはなぜ宗教が必要だったのか…脳の働きから考える
長谷川眞理子
知能と進化(1)知性と身体性
AI、ディープラーニングとは…知能と身体性は不可分か?
長谷川眞理子
ヒトの性差とジェンダー論(1)「性」とは何か
MLBのスーパースターも一代限り…生物学から迫る性の実態
長谷川眞理子
航空機事故ゼロをめざして(1)フラッター現象とは何か
零戦の開発段階で起きたフラッター現象…事故の教訓とは
鈴木真二
未来を知るための宇宙開発の歴史(1)宇宙開発の流れを概観する
宇宙開発の歴史、そして未来へ…6枚の写真で概観する
川口淳一郎

人気の講義ランキングTOP10
東大ハチ公物語―人と犬の関係(1)上野英三郎博士とハチ
忠犬ハチ公で哲学する…人と犬の関係から見えてくる道徳論
一ノ瀬正樹
エンタテインメントビジネスと人的資本経営(4)エンタメで一番重要なのは「人」
変人募集中…0から1を生める人、発掘する人、育てる人
水野道訓
徳と仏教の人生論(2)和合の至りと正直
正直とは何か――絶対的存在との信頼関係の根幹にあるもの
田口佳史
産業イニシアティブでつくるプラチナ社会(1)「プラチナ社会」構想と2050年問題
5つの産業で「資源自給・人財成長・住民出資」国家を実現
小宮山宏
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫
クーデターの条件~台湾を事例に考える(1)クーデターとは何か
台湾でクーデターは起きるのか?想定シナリオとその可能性
上杉勇司
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(5)AIに記号接地は可能か
人間とAIの本質的な違いは?記号接地から迫る理解の本質
今井むつみ
大谷翔平の育て方・育ち方(1)花巻東高校までの歩み
大谷翔平の育ち方…「自分を高めてゆく考え方」の秘密とは
桑原晃弥
未来を知るための宇宙開発の歴史(14)宇宙開発は未来をどう変えるか
『2001年宇宙の旅』が現実になる!?カギは宇宙医学
川口淳一郎
危機のデモクラシー…公共哲学から考える(6)政治と経済をつなぐ公共哲学
どのような経済レジームを選ぶか…倫理資本主義の可能性
齋藤純一