「宇宙の創生」の仕組みと宇宙物理学の歴史
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
ノーベル賞を受賞した「ビッグバン宇宙論」確立への発見とは
「宇宙の創生」の仕組みと宇宙物理学の歴史(7)ビックバン宇宙論
岡朋治(慶應義塾大学理工学部物理学科教授)
ルメートルの提唱した宇宙膨張は実際に観測されることになった。それでは、彼が同じく提唱していた「宇宙は小さな『宇宙の卵』から生まれた」という説について、その理論はどのように発展し、それがどのように観測されるに至ったのか。ビックバン宇宙論が誕生し、信じられるようになるまでの過程を探る。(全12話中第7話)
時間:5分32秒
収録日:2020年8月25日
追加日:2021年1月23日
カテゴリー:
≪全文≫

●「ビッグバン」は膨張宇宙論に反対する学者から揶揄された言葉だった


 (前回お伝えしましたが)、「ハッブル=ルメートルの法則」によって、膨張宇宙論が発達していきます。ルメートルの提唱した「宇宙は小さな『宇宙の卵』から生まれた」ということですね。そして、実際に宇宙膨張が発見されました。

 さらに、宇宙の卵についての議論が進みます。宇宙が膨張しているとすると、それは過去において、とても小さな領域に物質が集中していたということになります。それは突き詰めれば、初期の宇宙は「とても高密度で、とても高温な小さな火の玉だった」と言い換えることもできます。そういうことを言ったのはジョージ・ガモフです。ロシア出身のアメリカの物理学者ですが、彼は1948年に論文を発表し、その説を提唱しました。

 当時は、定常宇宙論を唱える学者が勢力を張っていて、けっこう反対は強かったらしいのですが、高密度高温の火の玉を「じゃあなにかね、宇宙はドッカンと生まれたのかね」と揶揄されたのが、「ビッグバン」という言葉の語源になったらしいのです。つまりこれは、膨張宇宙論に反対する立場の学者からつけられた名前のようですね。ビッグバン宇宙論というと、今では悪い意味ではなく、よい意味で使われていますけれども、これはそういうものの先駆けとなるものでした。


●ノーベル賞を受賞することにもなった「宇宙背景放射の発見」


 ビッグバン宇宙論が提唱されて、その証拠が探されたわけです。証拠とは、「熱い火の玉だった時代」を観測的に見ることができるかどうかということです。実際にいくつかのグループが、それを観測する試みを準備していました。

 宇宙初期ですから、遠くを見れば宇宙の初期を見ることができるということです。ただ、(遠方の)宇宙はとても速く後退していますから、周波数が長いほうに伸びているわけです。なので、そうしたとても熱い宇宙というものは、われわれからとても速く遠ざかっているので、非常に微妙な熱さ(温度)で観測されるはずです。そのことが全天からくまなく観測されるだろうという予測があったわけです。

 そして、それは全くの偶然に発見されます。それが宇宙背景放射で、「宇宙マイクロ波背景放射」とも呼ばれます。マイクロ波とは電波の領域...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「科学と技術」でまず見るべき講義シリーズ
社会はAIでいかに読み解けるのか(1)経済学理論の役割
AIやディープラーニングによって社会分析の方法が変わる
柳川範之
「宇宙の創生」の仕組みと宇宙物理学の歴史(1)宇宙の階層構造
「宇宙の階層構造」誕生の謎に迫るのが宇宙物理学のテーマ
岡朋治
本当によくわかる「量子コンピュータ入門」(1)量子コンピュータとは何か
「量子コンピュータ」はどういうもので、何に使えるのか
武田俊太郎
航空機事故ゼロをめざして(1)フラッター現象とは何か
零戦の開発段階で起きたフラッター現象…事故の教訓とは
鈴木真二
海底の仕組みと地球のメカニズム(1)海底の生まれるところ
地球上の火山活動の8割を占める「中央海嶺」とは何か
沖野郷子
ブラックホールとは何か(1)私たちが住む銀河系
太陽系は銀河系の中で塵のように小さな存在でしかない
岡朋治

人気の講義ランキングTOP10
内側から見たアメリカと日本(1)ラストベルトをつくったのは誰か
日本でも中国でもない…ラストベルトをつくった張本人は?
島田晴雄
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(3)認知バイアスとの正しい向き合い方
知ってるつもり、過大評価…バイアス解決の鍵は「謙虚さ」
今井むつみ
「宇宙の創生」の仕組みと宇宙物理学の歴史(1)宇宙の階層構造
「宇宙の階層構造」誕生の謎に迫るのが宇宙物理学のテーマ
岡朋治
歴史の探り方、活かし方(1)歴史小説と史料探索の基本
日本は素晴らしい歴史史料の宝庫…よい史料の見つけ方とは
中村彰彦
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二
AIとデジタル時代の経営論(6)暗黙知と判断力
AIは「暗黙知・常識に基づく高度な判断」が不得意
一條和生
編集部ラジオ2025(27)なぜ何回説明しても伝わらない?
なぜ伝わらない?理解の壁の正体を今井むつみ先生に学ぶ
テンミニッツ・アカデミー編集部
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(1)数が理解できない子どもたち
なぜ算数が苦手な子どもが多いのか?学力喪失の真相に迫る
今井むつみ
徳と仏教の人生論(1)経営者の条件と50年間悩み続けた命題
宇宙の理法――松下幸之助からの命題が50年後に解けた理由
田口佳史
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦