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歴代大統領の外交方針とは異なるトランプ的取引主義

“アメリカとは何か”~米国論再考Vol.2(3)アメリカ外交の4パターン

東秀敏
米国安全保障企画研究員
情報・テキスト
アメリカ外交は、歴代大統領の外交方針から4つのパターンに分類することができる。外国に対する姿勢と関心度という2つの軸によって、これまでの大統領の外交がそのいずれかに当てはまるのだが、トランプ政権の外交は、相手国によって変わる、異色のものである。日本が真の日米友好を説くならば、フロンティア開拓時代からのアメリカ特有の外交の考え方を理解し、理解を深めていく必要がある。(全4話中第3話)
時間:11:36
収録日:2020/06/11
追加日:2020/11/28
カテゴリー:
≪全文≫

●アメリカ外交は4パターンに分類できる


 次に、アメリカ外交の4つのベクトルについて説明します。まず縦の軸は、外国に対する姿勢を示しています。上の極は介入で、もう一方の極には孤立があります。横の軸は、外国に対する関心を示しています。左の極は、外国の情勢とかに関して無関心であることを示し、もう一方の極には教化があります。

 この縦横軸で考えると、歴代大統領を4パターンに分類することができます。左上のハミルトン的自由貿易主義は、介入はするものの、相手の文化は変えようとしないという方針です。経済関係を組めるのであれば、相手の文化はそのままにしておくという、どちらかというと重商主義的な思想です。

 左下には、ジャクソン的孤立主義があります。これは、外国のことにまったく関心がなく、孤立主義を唱えるものの、気に食わない相手がいれば、徹底的に攻撃するというものです。西部開拓のカウボーイのようなロジックなのです。

 次に右下には、ジェファソン的非介入主義があります。ジャクソン的孤立主義と似ているように思えますが、非介入と孤立は本質的に異なります。孤立は完全に外国のことはどうでも良いという無知をさらけ出していますが、非介入の場合は、外国のことを気にしながらも、外国の前に米国国内の情勢に対して注意を払うべきだという思想です。そのため、外国の情勢には非常に関心を持っていて、必要なときには教化したいと考えているのです。

 最後に右上には、ウィルソン的グローバル主義があります。これは介入と教化を組み合わせたもので、各国に対して積極的に関わっていく、最も拡張主義の強い思想です。


●アメリカ歴代大統領の外交方針の分類


 この4つの方針を歴代大統領に当てはめると、まずハーディングはかなりジャクソンに近いと思います。外国に対して無関心で、孤立主義を取り、必要な外交は全てディールで済ますというミニマリストです。

 セオドア・ルーズベルトは、どちらかというと相手の文化などをかなり尊重するタイプでした。実際に日本の文化を尊重していました。彼は、柔道に巡りあってから、自分でホワイトハウスに柔道の道場をつくったほど、日本に対する敬意を持っていました。しかし、棍棒外交という言葉が示すように、介入は行った人でした。その意味では、ハーディングとは、少し性質の異なる大統領でした。

 次に、フランクリン・ルーズベルトは、かなりジェファソンに近い人と思います。第二次世界大戦で徹底的に介入しましたが、それ以前は徹底した孤立主義者で、ウィルソンとは本質的に異なります。もちろん、第二次世界大戦が起こってからは、ウィルソン型に近づきましたが、ジェファソン的外交を推進した時期が長いので、今回はジェファソンに近い位置づけとしています。

 次にニクソンを例に取ると、彼もハーディングに近い位置を占めています。しかし、中国を開国させたことからも分かる通り、完全に孤立を目指すわけではありませんでした。リアリズムに基づき、必要な介入はするという姿勢でした。介入でもなければ、孤立でもない、という微妙な位置づけとなっています。

 最近の大統領では、まず民主党の70年代末期の大統領であったジミー・カーターは、ウィルソン的な外交政策を追求しました。また、ロナルド・レーガン、ブッシュ(Jr:ジョージ・W・ブッシュ)、バラク・オバマですが、図を見ていただくと分かる通り、カーター以降の大統領は、ウィルソン型の外交政策を取っています。これは、ネオコンという勢力がレーガン政権期あたりから台頭し、アメリカのグローバル外交が推進されていった時期に重なります。基本的にレーガン、ブッシュ、オバマ外交の本質は変わっていません。


●トランプの外交方針は相手国によって変化する


 それに対して、トランプは独自の外交思想を持っている人物なので、私はトランプ的取引主義(ディール主義)と名付けました。同じディールを用いたハーディングと少し異なるのは、トランプはディールで儲けの可能性があれば関心を持ち、儲けの可能性がなければ無関心という姿勢です。そのため、無関心と教化の横軸に関しては、中ほどに位置しています。しかし、介入と孤立の縦の軸で見ると、孤立のほうにかなり接近しており、介入に対してはかなり消極的です。

 その姿勢が顕著に表れているのが、対ロ政策です。ロシアに対しては徹底して非介入の姿勢を貫いています。オバマ以前には、実際にロシアの近隣国であるウクライナやグルジアで「カラー革命」と呼ばれる政変が起こっていましたが、そうした介入も行わなくなってきているので、ロシアに対しては孤立を貫いています。

 トランプ外交の特徴は、国によって外交の方法を変えていることです。私見...
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