“アメリカとは何か”~米国論再考Vol.2
この講義シリーズの第1話
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
2016年トランプ当選につながる孤立主義復興の契機を追う
“アメリカとは何か”~米国論再考Vol.2(2)太平洋を越えて中国へと至る
政治と経済
東秀敏(米国大統領制兼議会制研究所(CSPC)上級フェロー)
アメリカの西漸運動は中西部を開拓し、やがてテキサスやカリフォルニアといった地域まで併合し、太平洋まで到達した。その後、アメリカは奴隷解放後の新たな労働力確保のために、中国市場に進出することを目論む。第一次世界大戦での影響力増加や、第二次世界大戦での日本への勝利を経て、20世紀後半には中国市場への本格進出を果たす。しかし、トランプ政権は中国市場からの撤退と、中西部における新たな産業革命を目指す政策へとシフトしつつあった。(全4話中第2話)
時間:8分10秒
収録日:2020年6月11日
追加日:2020年11月22日
カテゴリー:
≪全文≫

●中西部を越えてカリフォルニアまで至ったアメリカ


 実際の西漸運動の戦略的展開は、大陸国家の完成を目指していました。ジェファソンは、米国の歴史の初期段階で大戦略論を展開しました。彼は非介入主義、同盟関係懐疑論、そして反工業化、農本主義、フロンティア開拓を主張しました。その一環として、米国を一大大陸国家にするために西漸運動を計画し、かつ実践しました。

 その成果が1803年のルイジアナ買収で、戦略拠点ニューオーリンズを獲得しました。欧州戦争で戦費に困っていたナポレオンと交渉し、破格の値段で買収しました。さらに、入植者に土地を与え、フロンティア開拓を進めました。この時に西に向かった入植者は、独立13州にうまく適応できなかったスコットランド、アイルランド、そしてドイツ系といった、非アングロサクソン系の人々です。彼らは、ジェファソンの西漸運動の呼びかけに応じて、西に向かったのです。

 カリブ海をアメリカが戦略的に押さえる理論的正当性を与えた、「モンロー主義」という主張があります。その背景には、19世紀初頭には英仏をはじめ欧州列強がまだ植民地を持っており、影響力を残していたことがあります。これに対して、カリブ海はアメリカの勢力圏だと宣言し、彼らを追放する構えを見せました。その究極的な目的は、ニューオーリンズを守ることでした。ニューオーリンズからカリブ海を抜けて大西洋に至るという貿易ネットワークを守るために、モンロー主義という理論を打ち立てたのです。

 初の西部出身大統領となったアンドリュー・ジャクソンは、ニューオーリンズを新興国、メキシコから守るために、当時独立国であったテキサス共和国の併合を提唱し、後のジョン・タイラーという大統領の時代に謀略を駆使して併合されました。また、アメリカ・メキシコ戦争以降、カリフォルニア割譲によって太平洋進出のチャンスを得ることに成功し、大陸国家として正式に成立したのです。


●太平洋を越えて東アジアへの進出を目指す


 多くの場合、大陸国家としてある程度国内経済の基盤ができると、海洋進出を目指します。アメリカもその例外ではありませんでした。アメリカの海洋進出は、フロンティア開拓の延長線上に位置付けられており、中国市場の開拓を常に視野に入れていま...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
アンチ・グローバリズムの行方を読む(1)世界情勢の転換
強まるアンチ・グローバリズムの動きをどう見ればいいか
岡本行夫
本当によくわかる経済学史(1)経済学史の概観
経済学史の基礎知識…大きな流れをいかに理解すべきか
柿埜真吾
トランプ政権と「一寸先は闇」の国際秩序(1)国際秩序の転換点と既存秩序の崩壊
経済秩序や普遍的価値観を破壊し、軍事力行使も辞さぬ米国
佐橋亮
デジタル全体主義を哲学的に考える(1)デジタル全体主義とは何か
20世紀型の全体主義とは違う現代の「デジタル全体主義」
中島隆博
自民党総裁選~その真の意味と今後の展望
「マスコミ報道」では見えない自民党総裁選の深い意味
曽根泰教
半導体から見る明日の世界(1)世界的な半導体不足と日本の可能性
なぜ世界の半導体不足は起きた?台湾TSMCと日本復活への鍵
島田晴雄

人気の講義ランキングTOP10
ヒトは共同保育~生物学から考える子育て(1)動物の配偶と子育てシステム
ヒトは共同保育の動物――生物学からみた子育ての基礎知識
長谷川眞理子
未来を知るための宇宙開発の歴史(7)米ソとは異なる日本の宇宙開発
日本の弾道ミサイル開発禁止!?米ソとは異なる宇宙開拓の道
川口淳一郎
「集権と分権」から考える日本の核心(3)中央集権と六国史の時代の終焉
天平期の天然痘で国民の3割が死亡?…大仏と崩れる律令制
片山杜秀
数学と音楽の不思議な関係(1)だれもがみんな数学者で音楽家
世界は数学と音楽でできている…歴史が物語る密接な関係
中島さち子
睡眠から考える健康リスクと社会的時差ボケ(5)シフトワークと健康問題
発がんリスク、心身の不調…シフトワークの悪影響に迫る
西多昌規
知識創造戦略論~暗黙知から形式知へ(1)イノベーションと価値創造
価値創造において重要なのは未来から現在を見るという視点
遠山亮子
DEIの重要性と企業経営(4)人口統計的DEIと女性活躍推進の効果
日本的雇用慣行の課題…女性比率を高めても業績向上は難しい
山本勲
トランプ政権と「一寸先は闇」の国際秩序(3)これからの世界と底線思考の重要性
同盟国よもっと働け…急激に進んでいる「負担のシフト」
佐橋亮
モンゴル帝国の世界史(2)チンギス・ハーンのカリスマ性
自由な多民族をモンゴルに統一したチンギス・ハーンの魅力
宮脇淳子
睡眠と健康~その驚きの影響(1)睡眠が担う5つのミッション
寝ないとよく食べる…睡眠不足が生活習慣病を招く理由
西野精治