●大西洋と太平洋で大きく異なる海底の顔立ち
沖野 (尾根について)最初にこちらをお見せしましょう。
水色のところが浅いのですが、このようにずーっと山脈が取り巻いているような感じです。
―― 色が違いますね。
沖野 そうですね。色が水色のところは確かにずっと山になっているんですが、太平洋のスケールから考えても、なだらかに上がっていって、なだらかに下がっていっています。場所によっては大西洋のほうがちょっと急な感じです。それでも富士山のスケールがこの地図でいうと点みたいなものだと思えば、非常にゆったりと上がっていくということになります。
ただ、大西洋も太平洋もですが、火山がまさに噴いているところはどういう感じかというと、次の資料で説明します。
これは太平洋の海底地形図を3次元で表したものです。ここ(スライド中央付近)が頂上、尾根筋みたいなものだと思ってもらえればいいのですが、海底も場所によってはだいぶ顔立ちが違います。太平洋は、全般的にしわしわの地形はあるけれども、割合と起伏が緩い。嶺のところですが、尾根筋は一段と高くなっているのが特徴です。
ところが大西洋は、こちらの図も先ほどの図と同じ色合いでつくっていますが、起伏に富んでいます。しかも、ここ(図の中央付近)が一番頂上ですが、なぜか頂上に10キロくらいの幅の谷があります。ということで、(太平洋と大西洋では)かなり顔立ちは違うのです。
―― なぜそんなに違うものなのですか。
沖野 これは、元の図を見ていただくと分かります。
先ほどお見せした(太平洋の)地形図は、おそらくこの辺り(南アメリカの西側付近の太平洋)の図だと思いますが、すごく速くプレートが動いているので、どんどん海底をつくっているところです。
―― 引っ張られてしまうわけですね。
沖野 そうです。速く引っ張られるので、たくさん隙間が開いている。ここは現在、地球上で一番速くて、年間15センチぐらい開く。だから年間15センチぐらい海底をつくらなきゃいけない。
一方、大西洋は上の図では矢印が点のようになっていますが、年間たぶん2センチとか3センチぐらいしか開かない。
―― 全然違うものなんですね。
沖野 そうすると、何が起こるか。先ほどいったようにすごく受け身なシステムなので、開いてしまうのを仕方なく埋めるということで、速くプレートが動いているところだと、どんどん物を供給するのでその周辺一帯はかなり温かいのです。ところが、大西洋のほうは、確かにマグマが上がってきたとき、それは高温のマグマだけれども、すごくゆっくりしか開かないので、少し離れるとすごく冷えているのです。
ですから、例えばこの辺り(南アメリカの西側付近の太平洋)が今0歳の海底だと推定します。そこで、「300万年前の海底はどこにありますか」という問いに対しては、太平洋の場合、結構離れたところにあるけれど、大西洋の場合、それはすぐ横にあるということです。ただ、冷え具合は年齢に比例するわけですから、太平洋のほうが全体的に周辺は温かく、こちら(大西洋)のほうが冷たい。
中央海嶺についてはこの後お見せしますが、火山活動もあるけれど、引っ張りの力は働いているので地震も起こります。よって断層もできる。断層というのはある程度冷えて、バリっと破壊が進むような物性にならないとできないので、大西洋のほうは、断層の動きがかなりパワフルです。太平洋のほうは温かいので、火山活動がものすごく有力なプロセスとなり、断層運動はかなりマイナーです。
―― イメージでいうと、固まるか固まりきっていないか、ということですか。
沖野 そうです。柔らかいか変形しないか、バリッと断層がつくれるかどうかといったイメージが分かりやすいと思います。大西洋のほうは、そのように火山のすぐ近くからもどんどん冷えて断層がつくられるので、先ほどお話ししたように谷のようなものがすごく目立ってしまいます。太平洋のほうは、周りが温かいので大きな谷がなかなかつくれない。というのが大まかなイメージでよいかと思います。
だから(先ほどお見せした大西洋の図の)凸凹が激しいことも、そういう断層運動がかなりよく見えているからと思ってもらうといいと思います。
●枕状溶岩――水中で噴いたときの岩の特徴
―― 海の深さはどのくらいになるのですか。
沖野 (大西洋の)図の下のほうに表示されているのが(平均の)水深で、黄色が2,500メートルぐらい、深いところで4,000メートルにいかないくらいだと思います。
―― 2,000メートル近い差があるということで、結...