●中央海嶺では経済的価値のある「熱水鉱床」になりにくい
沖野 (中央海嶺は)地震もあるし、火山もあるし、実際にスライドのように温泉が湧いている場所もたくさんあります。これも非常に面白いことで、断層の割れ目とか新しい岩石の隙間に海水が入っていくのですが、火山なので地下にマグマがあり、そこの温度が高いので、入っていった海水が温まり、それが温泉としてまた出てくるということです。
例えば岩石と海水を水槽に入れても、人間の時間のスケールではいくら待っても何も起こりません。しかし、温度が高くなると、ある種の化学反応は進みやすくなったりします。同じようなことで、海水が岩石に入っていて高温になると、もともと海水中に入っていた組成の一定量は、沈殿物として落ちてしまう。分かりやすい例でいうとマグネシウム、つまりにがりの成分で、そういうものは落ちてしまいます。
(沈殿物の)代わりに海底をつくっている玄武岩に含まれるいろいろな元素が、高温だと水側に溶けることができる。なので、スライドにあるような黒く上がっている部分はマンガンとか鉄とかの重金属類、つまりもともと岩石に少し入っていたものが溶け出しているところです。こういう元素が出てくるということは、いろいろな重金属類が混じっているということで、出てきたときは400度近くあるのですが、周りの深海の水は2度ぐらいしかないので一瞬にして冷やされるのです。冷えていくと、重金属類は溶けたままではいられないので、一気にたくさん沈殿してしまう。それが「熱水鉱床」といわれているもので、資源のもとになっています。
ただ、中央海嶺系の場合は、経済的な価値という意味では非常に資源になりにくい。なぜかというと、スライドのように重金属を多く含んだものが出るのですが、また離れていってしまい、また新しい海底をつくっては新しい熱水系ができ、(熱水鉱床のような場所を)ちょっとつくるけれどもまた離れていってしまうからです。つまり、熱水鉱床を形成するような沈殿物はあるけれども、広がってしまうのです。
―― 蓄積しないのですね。
沖野 しないのです。経済的に見合うためには同じ場所で蓄積しないといけない。資源関係で工学系の方にいわせると、「鉱床」といえるのは経済的に見合うものだけなので、これ(スライドのもの)はただの堆積物ですといわれてしまいます。
日本の近くの場所では、日本政府が一所懸命に(鉱床の利用について)進めています。沖縄や伊豆などは、先ほどいったように島弧の、沈み込みの火山に付随する温泉で、同じ場所で何度も長いこと噴火が続くし、ずっとマグマがあり、そこでたまっていくので、鉱床としての価値はあり得るのです。残念ながら、私の研究している中央海嶺は、確かに(沈殿物を)つくっているけれども広く振りまいているので、あまり経済的な価値はないということです。
●なぜ中央海嶺はその場所にできたのか
―― それでは、ここでいくつか基礎的な質問をしてもよいですか。1つは、例えば中央海嶺の場所について、先ほど引っ張り込まれる力で動くという話がありましたが、引っ張り込まれてできるものがなぜその場所になったのですか。要するに、どこでもよかったけれども、たまたまそこになってしまったのか。何らかの理由があってそこになったのか。そのあたりについて、お願いいたします。
沖野 太平洋は非常に複雑なので分かりにくい。例えば、大西洋は(中央海嶺が)たまたま真ん中にありますが、ここはもともとアフリカ、ヨーロッパの大陸とアメリカの大陸が超大陸としてくっついていました。
―― それは有名な話ですね。大昔、そこは大きな大陸になっていて、今の状態のものを合わせると形的にそれにはまるということですね。
沖野 そこから引っ張りの力が働いたときに、どこか割れやすいところが割れただけです。そういう意味では、偶然というか、元の構造の不均質に寄っているだけなのです。理由があるといえばありますが、割れやすそうなところが割れているということです。
一方、太平洋はかなり複雑で、1億年ぐらい戻すとパッチワークみたいになってしまうので、そう簡単にはいえません。
―― あとは、非常にSF的な興味で、例えば日本が沈没する可能性はあるのですか。
沖野 私はないと思っています。
―― これはSFの中の話ということですね。ありがとうございます。