海底の仕組みと地球のメカニズム
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
中央海嶺が経済的価値のある「熱水鉱床」になりにくい理由
海底の仕組みと地球のメカニズム(4)熱水鉱床と中央海嶺の場所
沖野郷子(東京大学大気海洋研究所教授/理学博士)
海嶺には温泉が湧いている場所もある。海底をつくっている玄武岩に含まれる重金属類が海底下で高温の海水に溶けて循環し,再び海底に噴きだして沈殿する。それが「熱水鉱床」といわれているもので、資源のもとになっているが、中央海嶺では経済的な価値という意味では非常に資源になりにくいという。それはなぜか。(全8話中第4話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:5分37秒
収録日:2020年10月22日
追加日:2021年5月23日
≪全文≫

●中央海嶺では経済的価値のある「熱水鉱床」になりにくい


沖野 (中央海嶺は)地震もあるし、火山もあるし、実際にスライドのように温泉が湧いている場所もたくさんあります。これも非常に面白いことで、断層の割れ目とか新しい岩石の隙間に海水が入っていくのですが、火山なので地下にマグマがあり、そこの温度が高いので、入っていった海水が温まり、それが温泉としてまた出てくるということです。

 例えば岩石と海水を水槽に入れても、人間の時間のスケールではいくら待っても何も起こりません。しかし、温度が高くなると、ある種の化学反応は進みやすくなったりします。同じようなことで、海水が岩石に入っていて高温になると、もともと海水中に入っていた組成の一定量は、沈殿物として落ちてしまう。分かりやすい例でいうとマグネシウム、つまりにがりの成分で、そういうものは落ちてしまいます。

 (沈殿物の)代わりに海底をつくっている玄武岩に含まれるいろいろな元素が、高温だと水側に溶けることができる。なので、スライドにあるような黒く上がっている部分はマンガンとか鉄とかの重金属類、つまりもともと岩石に少し入っていたものが溶け出しているところです。こういう元素が出てくるということは、いろいろな重金属類が混じっているということで、出てきたときは400度近くあるのですが、周りの深海の水は2度ぐらいしかないので一瞬にして冷やされるのです。冷えていくと、重金属類は溶けたままではいられないので、一気にたくさん沈殿してしまう。それが「熱水鉱床」といわれているもので、資源のもとになっています。

 ただ、中央海嶺系の場合は、経済的な価値という意味では非常に資源になりにくい。なぜかというと、スライドのように重金属を多く含んだものが出るのですが、また離れていってしまい、また新しい海底をつくっては新しい熱水系ができ、(熱水鉱床のような場所を)ちょっとつくるけれどもまた離れていってしまうからです。つまり、熱水鉱床を形成するような沈殿物はあるけれども、広がってしまうのです。

―― 蓄積しないのですね。

沖野 しないのです。経済的に見合うためには同じ場所で蓄積しないといけない。資源関係で工学系の方にいわせると、「鉱床」といえるのは経済的に見合うものだけなので、これ(スライドのもの)はただの堆積...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「科学と技術」でまず見るべき講義シリーズ
進化生物学から見た「宗教の起源」(1)宗教の起源とトランス状態
私たちにはなぜ宗教が必要だったのか…脳の働きから考える
長谷川眞理子
社会はAIでいかに読み解けるのか(1)経済学理論の役割
AIやディープラーニングによって社会分析の方法が変わる
柳川範之
本当によくわかる「量子コンピュータ入門」(1)量子コンピュータとは何か
「量子コンピュータ」はどういうもので、何に使えるのか
武田俊太郎
培養肉研究の現在地と未来図(1)フェイクミート市場とリアルミート研究
食肉3.0時代に突入、「培養肉」研究の今に迫る
竹内昌治
都市木造の可能性~木造ビルへの挑戦(1)木造建築の歴史と現在
伝統木造建築はいま都市で必要な建物ではない
腰原幹雄
五島列島沖合の海没処分潜水艦群調査(1)目的と潜水艦史
海底に突き刺さる旧日本海軍の潜水艦「伊58」を特定!
浦環

人気の講義ランキングTOP10
習近平―その政治の「核心」とは何か?(1)習近平政権の特徴
習近平への権力集中…習近平思想と中国の夢と強国強軍
小原雅博
熟睡できる環境・習慣とは(1)熟睡のための条件と認知行動療法
熟睡のために――認知行動療法とポジティブ・ルーティーン
西野精治
歴史の探り方、活かし方(4)史実・史料分析:秀吉と秀次編〈上〉
史料読解法…豊臣秀吉による秀次粛清の本当の理由とは?
中村彰彦
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(4)全てをつなぐ密教の世界観
密教の世界観は全宇宙を分割せずに「つないでいく」
鎌田東二
内側から見たアメリカと日本(4)アメリカ労働史とトランプ支持層
ギャングの代わりに弁護士!? 壮絶なアメリカ労働史の変遷
島田晴雄
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(7)不動産暴落と企業倒産の内実
不動産暴落、大企業倒産危機…中国経済の苦境の実態とは?
垂秀夫
徳と仏教の人生論(1)経営者の条件と50年間悩み続けた命題
宇宙の理法――松下幸之助からの命題が50年後に解けた理由
田口佳史
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
人生100年時代の「ライフシフト概論」(3)キャリアの危機〈下〉
40代前半に訪れる「中年の危機」、鍵は「人生の成長戦略」
徳岡晃一郎